これが今「総額100万円未満」で買えるいちばんオシャレな車?
過日、ひとりの若者が拙宅を訪ねてきた。若者といっても20代後半の青年である。「総額100万円未満」という予算にて、何かこうシャレてる車が買えないものだろうか、との相談であった。
わたしは答えた。
「なるほど。ではホンダのN-ONEなどいかがだろうか? 660G Lパッケージというやつの走行1万km台ぐらいの物件が、総額80万円ぐらいから狙える。うむ、ぜひそれにしたまえ」
だが彼は言った。
「軽自動車はイヤなのです。できれば輸入車を、と考えています」
わたしは、カネがないなら四の五の言わずに軽自動車とかに乗るのが若人としての本筋である――と諭したが、彼は首を縦に振らない。二言目には「でも輸入車の方が……」である。
いいかげんうんざりしたわたしは、仕方なくひとつの解を提示した。
「先代というか、初代のミニ クラブマンという輸入車がある。写真はコレだが……」
とスマホの画面を彼に見せ、続けた。
「これの中古車であれば、総額80万円ぐらいから探すことができる。しかも走行距離がさほど延びていない個体を、である。そして見てのとおりかなりのオシャレさんでもある」
「なんと! 総額80万円級の車には絶対に見えません! 僕の目にはおおむね200万円ぐらいに見えます!」
わたしも彼の見方に賛意を示したうえで、「だが意外と安いのだ」と続けた。
以下は、この後わたしが彼に伝えた「総額100万円未満の旧型ミニ クラブマンを買う際に気をつけるべきいくつかのこと」の、ダイジェスト版である。
絶妙な全長と荷室の「スプリットドア」がカッコ良さの源
当然ながら、まずは「旧型ミニ クラブマンとは何ぞや?」ということを知らなければならない。
型式名R55こと旧型ミニ クラブマンは、日本では2008年3月2日(ミニの日)にデビューしたミニの派生モデル。要するにミニのストレッチ版で、ベースとなったのは第2世代のミニ(R56)だ。
寸法的にはハッチバックモデルより全長を240mm、ホイールベースを80mm延長しており、延長分は後席足下スペース80mmの拡大と、荷室スペースの拡大に使われた。
ボディの左サイドは通常の1枚ドアだが、右サイドには観音開きする「クラブドア」という、小さめなドアが備わっている。後席へのアクセス性を高めるための措置だが、ヨーロッパと違って左側通行である日本では、このドア位置は正直微妙だ。
ただし、この「ボディをちょっとだけ延長させました」というフォルムはひたすらオシャレであり、荷室の「スプリットドア」と呼ばれる左右に観音開きするゲートも、これまたスーパーオシャレの源となっている。
基本となるグレードは「クーパー」と「クーパーS」の2つ。
クーパーには最高出力120psの1.6L自然吸気エンジンが搭載され、クーパーSには最高出力175psの1.6Lターボエンジンが搭載される。トランスミッションは両グレードとも6MTと6速ATが選択可能だった。
初期モデルの新車価格はクーパーが274万円(6MT)および287万円(6速AT)で、クーパーSが318万円(6MT)と331万円(6速AT)。
ミニならではのキビキビした走りと、ストレッチ版ゆえの積載性、ならびに「妙にオシャレに見えること」から、旧型ミニ クラブマンはなかなかのヒット作となった。
が、2015年9月には第2世代となる現行F54型へとフルモデルチェンジ。
F54型は、走行性能や剛性感などは旧R55型を大きく上回っているが、同時にボディサイズもかなり大きくなってしまったため、「ワタシは旧型の小ぶりなクラブマンの方が好きです」みたいな意見も、一部に根強く存在している。
「総額130万円」ぐらいまでを視野に入れて探すべし
「……と、以上が旧型ミニ クラブマンという車についての概略である」
わたしは青年にそう言った。
しかし青年は、青年ならではの性急さで答える。
「なるほどわかりました、ありがとうございます。それではさっそく買いに行きますので、本日はこれで失礼します。さようなら」
ちょちょちょ、ちょっと待ちたまえ!
と、わたしは彼を制した。
「今日これから買いに行くのも構わないが、買うにあたってはいくつかの注意点もある。どうせならそれを聞いてからにしたまえ」
そう言ってわたしは、彼に少々の指南をした。主に「予算」についてである。
旧型ミニ クラブマンが総額100万円未満で買えるというのは確かである。しかし「総額100万円未満であること」に固執すべきではない。
たまたま総額100万円未満でコンディションの良いモノが見つかればいいが、見つからない可能性もある。その場合に、「でも100万円以下と決めてたから」みたいな理由で安易に買ってしまうと、その後の修理代で、安く買えた分のお金などすぐに吐き出してしまうこともあり得るからだ。
具体的には「総額130万円ぐらいまで」をいちおう視野に入れたうえで探すことを、わたしとしては貴君に強く推奨したい。
「なるほどわかりました。では最大総額130万円を目安にしてに探します。じゃ、さようなら」
……まだ話は終わってないよ。それとだね、手元にいちおう10万円ぐらいは残しておいた方がいいと思いますよ。
「それは何ゆえですか?」
何かあったとき用の「保険」である。旧型ミニ クラブマンはさほど壊れやすい車というわけでもないが、乗っているうちに冷却系や電装系などの部品交換が必要になる可能性もある。
いざそうなったときにあたふたしないため、10万円ぐらいはポンと出せる状態であることが、安めの中古ガイシャを買う場合は肝要となるのだ。買ううえでの「資格」と言ってもいいい。
「なるほどわかりました。……まだありますか?」
いや、特にはないよ。あとは中古車選びの一般的な基本原則どおりに吟味し、決めるだけだ。
「なるほどわかりました。ありがとうございました。では、さようなら」
はい、さようなら。
……妙にせっかちで変わった青年だったが、彼がステキでオシャレな旧型ミニ クラブマンと出合えることを期待したい。そしてたぶん、大丈夫だと思う。
text/伊達軍曹
photo/BMW、ホンダ
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ミニ クラブマン(初代)×総額130万円以下×修復歴なし
(提供:カーセンサー)