ここ数年、東京都内の中でも大きく様変わりしたエリアのひとつが、虎ノ門ではないだろうか。麻布の台地と愛宕山にはさまれ、ホテルオークラ東京や政府系機関のオフィスが軒をつらねる閑静な高級エリアだった虎ノ門がいま、国際色ある街づくりを目指している。
虎ノ門は江戸時代から続く由緒ある地名
虎ノ門の地名は、江戸城の南端にあった門の名前に由来している。所説あるが、当時は青龍、白虎、朱雀、玄武の四獣神が四方を守るという中国由来の考え方にちなんで「虎ノ門」が置かれたとされる。
2014年には、虎ノ門~新橋間で第2次世界大戦後に米国のマッカーサー元帥が建設を命じたという伝説がある「マッカーサー道路」が完成した。これは計画から実に68年もかかった計算になる。約1.4キロが結ぶこの道路は、江東区有明から千代田区神田佐久間町に至る「環状第2号線」の一部。都心の慢性的な渋滞解消につながるほか、2020年に迫った東京五輪では、選手村と各競技場を繋ぐ大動脈になる。
お手本はシャンゼリゼ、虎ノ門で進む国際色豊かな街づくり
虎ノ門から麻布、六本木といった付近一帯は、各国の大使館や領事館、国際組織、外資系のオフィスや外国人駐在員が多く住む高級レジデンスが立ち並ぶ国際色豊かなエリアだ。
虎ノ門の再開発は、このマッカーサー道路の完成と52階建ての超高層ビル「虎ノ門ヒルズ」の開業が契機になった。虎ノ門ヒルズの開発を手掛けたのは、付近一帯で多くのオフィスビルを所有する森ビル。森ビルは、周辺で所有するビルが古くなってきていることを受けて、東京都から国際戦略特区、特定都市再生緊急整備地域の指定を受け、虎ノ門から麻布台地区までの再開発を進めている。
取り組みのひとつとして、新橋から虎ノ門ヒルズまでの「新虎通り」は、その広い沿道を生かして、オープンカフェが立ち並ぶパリのシャンゼリゼ通りのような景観を目指している。
2020年には、旧郵政省本庁舎跡の日本郵政グループ飯倉ビルを解体し、地上65階、地下6階、塔屋2階建ての「日本一高い超高層ビル」が誕生するほか、地下鉄日比谷線に「虎ノ門ヒルズ駅」が開業する。さらに、ホテルオークラ東京や虎ノ門病院の立て直しも推進されている。外国人住民が多いことから、虎ノ門病院は多言語対応も可能になるという。医療ツーリズムが注目される中で、重要な取り組みだろう。
虎ノ門ヒルズには、2014年にハイアットホテルアンドリゾーツの高級業態「アンダーズ東京」が開業したが、さらにその横で建設される49階建てビルにも外資系の一流ホテルが入居する見通しだ。
一方、日本屈指の老舗ホテルであるホテルオークラ東京も、再開発で磨きをかける。世界のセレブに愛された由緒あるたたずまいは残しつつ、最高級ブランドの「オークラ ヘリテージウイング」とコンテンポラリーラグジュアリーの「オークラ プレステージタワー」の2つのブランドを運営。世界水準を意識した最高級スイートルームを設けたほか、大型の宴会場を併設し、国際会議や展示会の誘致も目指している。
日本が誇る老舗ホテルは、ラグビーワールドカップや東京五輪、新天皇の即位といった世紀のイベントに向けて、世界中から集う賓客をもてなす準備を進めている。
古き伝統と国際色豊かな街並みが並び立つ
一方で、このエリアは江戸時代から続くお屋敷町でもあった。明治5年創業のそば屋「虎ノ門大坂屋砂場」、大正元年創業の和菓子店「岡埜栄泉」、大正7年創業の「松屋珈琲店」といった老舗も立ち並ぶ。また、サラリーマンの「聖地」である新橋にも近いことから、昼夜ともに使い勝手のよい立地である。虎ノ門のオフィスやホテルで商談を進め、昼は老舗の味を楽しみ、夜は六本木のエンターティメントや新橋の喧騒を味わう、そんなプランも考えられるだろう。古き伝統と国際色豊かな街並みが並び立つ魅力は、都内のほかのエリアには見られないものだ。伝統ある国際都市・東京の顔として、虎ノ門エリアの今後の発展にますます期待したい。(提供:百計ONLINE)
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