制度開始から1年で100万口座を突破したつみたてNISA。最長20年という長い非課税期間がメリットの一つだ。投資した年から20年以内の売却益には課税されないが、売却しないまま非課税期間が終了したら、保有商品は課税口座に移されるが、損をするケースがある

つみたてNISAでの投資は2037年まで、非課税での運用は2056年まで

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(画像=Altitude Visual/Shutterstock.com)

つみたてNISAには年間40万円の非課税投資枠がある。新たな投資枠は毎年付与されるが、つみたてNISAを利用して非課税で投資できるのは2037年までだ。その年に非課税期間が終了するのではなく、つみたてNISAで投資信託を購入できる最後の年が2037年という意味だ。最後の年に購入した投資信託は、2056年まで非課税で運用できる。

非課税期間終了後、課税口座に移行すると損することも

20年の非課税期間内に保有商品を売却しなかったらどうなるのだろうか。

非課税期間終了時に保有する投資信託は、課税口座(つみたてNISA以外の一般口座や特定口座)に移されるが、非課税期間終了時の時価で移されるのがポイントだ。移行時点の時価が投資元本より高いか安いか(値上がりしたかどうか)で課税の取扱いが変わる。それぞれのケースを確認したい。

ケース1……投資元本より値上がりした状態で課税口座に移行

<条件>
・つみたてNISAで投資信託Aを40万円分購入した。
・非課税期間終了時は元本が60万円に値上がりしていた。
・課税口座に移行して、値上がりまたは値下がり後に売却。

課税口座には時価で移されるため、投資信託Aの投資元本は60万円に変更される。移行後に60万円から80万円に値上がりした場合、差額の20万円が課税対象だ。60万円から50万円に値下がりしても課税はされない。課税口座に移行した時点で投資元本は60万円に変更されているため、10万円の「損失」となるからだ。

ケース1ではいずれの場合も投資元本より増えているため、損になることはない。注意したいのはケース2だ。

ケース2……投資元本より値下がりした状態で課税口座に移行

<条件>
・つみたてNISAで投資信託Aを40万円分購入した。
・非課税期間終了時は元本が30万円に値下がりしていた。
・課税口座に移行して、値上がりまたは値下がり後に売却。

課税口座に移行後、投資信託Aの投資元本は30万円に変更される。移行後に30万円から40万円に値上がりした場合、差額の10万円に課税されてしまう。元々の投資元本は40万円であり本来なら課税されない。課税口座に移行した時の時価30万円が基準となるため、「利益」扱いになってしまうのだ。30万円から20万円に値下がりした場合には、当然課税されない。

つみたてNISAから課税口座に移す際の対処法

ケース1は最終的に投資元本が増えているため、移行後に課税されても問題ないだろう。問題はケース2だ。投資元本から値下がりしているにも関わらず、課税口座に移行させたことによって課税されることもある。これを回避するには非課税期間終了前に売却(損失確定)するか、投資元本を上回るまで運用を続けるかだ。

売却して損失を確定させるのは勇気がいるかもしれないが、その資金が必要なら売却するべきだろう。見送ればさらに値下がりする可能性もある。

使う予定のないお金なら、課税口座に移して運用を続けるのもいいだろう。長期で運用するほうがリターンは安定しやすい。投資にはアップダウンがあるため、一時の評価損と割り切ることも大切だ。

つみたてNISAは非課税期間終了後のことも意識しよう

つみたてNISAは一般NISAと違い、新たな投資枠に保有商品を移す「ロールオーバー」はできない。非課税期間終了時は、期間内に売却するか課税口座へ移行するのが現在のルールだ(2019年3月現在)。どちらが得かはその時になってみないとわからない。制度が変更される可能性もあるが、非課税期間終了時の出口戦略についても考えておく必要があるだろう。

文・國村功志(資産形成専門ファイナンシャルプランナー)/MONEY TIMES

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