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今、飲食店の大きなライバルとなっているのが「コンビニ」だ。最近はコンビニ店頭でのコーヒー販売が定着し、大手各社が揃って「コンビニカフェ」を展開している。わずか100円台で提供されるコーヒーは、周囲のカフェや喫茶店の脅威となった。また、ここ最近は、中止になってしまったものの、セブンイレブンの「100円生ビール」が話題になったなど、コンビニの「居酒屋化」も注目を集めつつある。果たしてコンビニは、今後も飲食店の脅威になっていくのだろうか?

進むコンビニの「飲食店化」

コンビニカフェがヒットした後、「イートインスペース」併設のコンビニが急速に増加した。イートインスペースにはテーブルや椅子が設置されており、購入した弁当や飲み物、スイーツを食べることができる。飲食店に入って寛ぐ時間がない場合や、節約をしたい場合などはかなり重宝されるだろう。特に都心ではランチをイートインスペースで済ませるサラリーマンやOLが多く見られるようになった。同時に「ちょい飲み」というキーワードが流行し、牛丼店やラーメン店で軽くお酒を飲む文化が定着。この文化はコンビニにまで広がり、今や「ちょい飲み」用の業態を開発するコンビニまで登場している。

ミニストップ株式会社が展開する「cisca(シスカ)」は、カフェとグロッサリー、デリカテッセンが融合したような新業態のイートイン型コンビニだ。現在、都内に4店舗展開しており、女性受けする外観や内装が印象的。50席以上を有する大型店舗も存在する。

従来のイートインスペースのように、電源やWi-Fiの完備、店内で購入した酒や料理を食べられるのはもちろん、料理の盛り付けなどの独自のサービスも導入している。例えば、缶詰をお皿に盛り付けたり、ソーセージなどを加熱して提供してくれたりするのだ。また、缶ビール用の冷えたグラスや、水割り用の氷なども用意されているなど、「cisca」は限りなく飲食店に近づいたコンビニと言えるだろう。

ちなみに、従来のコンビニのイートインスペースでは、長時間の滞在や居眠り客などによって店の雰囲気が悪くなるといった問題もある。未成年が深夜に利用するなどの問題も多く、利用時のルールを設けなければならないなど、まだまだ課題は多そうである。

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飲食店がコンビニに勝つには何が必要か?

今後、より飲食店に近い業態のコンビニが増えていく可能性は十分にある。セブンイレブンの生ビール販売も中止にはなったが、見直しをして再開することも考えられる。大手コンビニの居酒屋化が本格的に進んで、利便性やコスパの高い商品やサービスが提供されれば、飲食店から多くの客が流れてしまうこともあり得るだろう。

それでは今後、飲食店はどのような対策を取るべきだろうか。コンビニのメリットは、その名の通り、安さや利便性、気軽に利用できることだ。仮に居酒屋化しても、その方向性は変わらないはず。飲食店としては、コンビニと比較されないように、品質の高さや寛ぎを重要視すべきだ。

例えば、肉を目の前で焼いたり、炎が出たりといったシズル感、フルサービスの細やかな接客などは飲食店だからこそできること。利便性を打ち出す飲食店も増えてはいるが、顧客ニーズをしっかり分析し、コンビニでは不可能なサービスや、オリジナル商品、そして感動を提供できるような店づくりをしていくべきだと言えるだろう。

今は当たり前となったコンビニカフェも、各社が何度も挑戦を繰り返し、現在の形に行き着いて定着した。生ビールの店頭販売もいつかは再開され、「居酒屋コンビニ」が現実となる日も近いかもしれない。飲食店とはどうあるべきなのか、何を提供すべきなのか……。コンビニの飲食店化、居酒屋化は、飲食店の根っこの部分を掘り起こして、大切なものとは何かを改めて考える機会になりそうだ。(提供:Foodist Media

執筆者:大槻洋次郎