海外ではスマートフォンを利用した「QRコード決済」が広く普及している。一方、日本では、キャッシュレス社会の実現につながり得る新たな決済手段として期待されているものの、普及はなかなか進んでいない。
そんな中、新しい決済サービスが登場して話題を呼んでいる。株式会社メタップスが手掛けるウォレットアプリ「pring」だ。その魅力はずばり「決済手数料」の安さ。
これまで飲食店が決済サービスを取り入れようとしても、その高い手数料が導入の足かせになってきた。飲食業は利益率があまり高くなく、決済のたびに高い手数料を取られていては利益を圧迫してしまうのだ。そこにきて「pring」が登場。決済手数料は0.95%と、これまでの決済サービスにはない安さ。飲食店でも導入しやすいサービスとして大きな注目が集まっている。
なぜ、日本でQRコード決済の普及が遅れたのか?
そもそもQRコード決済とは、決済情報が登録されたQRコードをお客がスマートフォンを用いて読み取り、そのままオンライン決済できる仕組みのこと。利用するには、お客のスマートフォンにあらかじめ銀行口座やクレジットカードなどの決済手段が紐付いている必要があるが、とても手軽な決済方法と言える。
店舗側は、スマホやタブレットなどを1台用意できれば導入できる。初期費用はほとんど必要ない。クレジットカード支払いで必要な「サインをもらう」「暗証番号を入力してもらう」といった手間を省くことができるし、お客のクレジットカードに一切触れずに決済できるため、あらぬ問題が起きてしまうこともない。店の混雑時にも役立つだろう。
こうした特長から、海外ではすでに広く使われており、特に中国での普及率は高い。中国では偽札の横行が問題になっており、第3者決済であるクレジットカード決済やモバイル決済が好まれる傾向がもともと強かった。そこに、QRコード決済の利便性と中国ネット通販最大手のアリババによるQRコード決済サービスの提供、そして、店舗が負担する決済手数料を多くの事業者がほぼ無料に設定したことが追い風となり、瞬く間に浸透していった。
では、日本はなぜQRコード決済後進国になってしまったのだろうか? 消費者側にある原因として言われているのが、日本人の国民性だ。治安が良く、現金を持ち歩いても問題が起きない日本では、キャッシュレス化の必要性は低いと考える人がまだまだ多い。さらに、クレジットカードを持っていても、現金を使う日本人が多いことに象徴されるように、お金を目で見て支払うことに安心感を覚える習性が、決済サービスの普及にブレーキをかけているのだろう。
そして、導入者側にとっては、事業者に支払わなければならない決済手数料が高いという問題がある。事業者の多くは手数料を3%台前半に設定しており、この負担が導入拡大の妨げになっている。メタップスが提供する「pring」は、相場の1/3程度の手数料であるため、これが大きな武器になっていくことは間違いない。
「決済手数料0円」のサービスも
今、ゆっくりではあるが、キャッシュレス社会に移行していく流れが起きている。この流れに乗って、飲食業界では今後、QRコード決済対策をぜひ進めていきたいところだ。スマホ世代の取り込みにつながるだろうし、オンライン決済に慣れている訪日客の受け入れにも直結するはずだ。「4割の訪日客が個人経営の飲食店で現金しか使えないことに不満を感じた」という経済産業省による調査結果もあり、訪日客対策は急務でもある。また、訪日客の訪問先は大都市だけでなく地方圏にも広がっているため、地方に店舗を構える飲食店にとってもQRコード決済はインバウンド消費を取り込むための大切な取り組みになると考えられる。
さらにここにきて、事業者のサービス合戦もはじまった。LINE株式会社はつい先日、提供する決済サービス「LINEペイ」のQRコード決済の加盟店手数料を3年間0円にすると発表した。さらに、店舗向けに決済用アプリを無償で配布し、スマホ1台あれば対応できる体制を整えるという。
ヤフー株式会社は、今秋を目途に決済手数料0円、導入手数料0円、入金手数料0円の「ヤフースマホ決済」を開始することを明らかにした。ヤフースマホ決済は、店頭に掲示したQRコードをお客にスマホアプリで読み込んでもらい、支払う金額を入力してもらうと決済が完了する仕組みだ。つまり店舗側は紙に出力したQRコードを店頭に貼っておくだけでいい。店舗側の負担はかなり抑えられそうだ。
そして政府も動き出している。2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げ時に、飲食店に対してキャッシュレス決済の導入を支援するという。必要な端末の配布、買い物代金の一部をポイントで還元するための補助なども検討しているようだ。この動きにも注目し、積極的に制度を活用していきたい。
(提供:Foodist Media)
執筆者:岩﨑美帆