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飲食店経営に関わる数値として最も大切なもののひとつ「FLコスト」。今回はこのFLコストについて改めて説明するとともに、FLコストの改善方法について紹介していく。

そもそもFLコストとは?

FLコストは飲食店における食材原価(food cost)と人件費(labor cost)の合計である。飲食店でかかるコストの大部分を占めるとともに、店舗にて管理可能な項目ということもあり、飲食店経営において特に重要視されるコストである。賃料はあらかじめ決まっている固定費であり、水道光熱費は管理したとしても利益に与える影響は大きくない。しかし食材原価や人件費は飲食店経営において占める割合が大きく、日々の営業の管理の積み重ねで利益が変わってくる。

一般的な飲食店では、食材原価も人件費もそれぞれ売上の30%程度が一つの基準となっており、FL合計で売上の60%以下に抑えることができると黒字になる可能性が高い。一方、65%を超えると赤字店舗になる可能性が高いと言われている。

食材原価に関しては、業態によっても違いがある。例えば、ラーメン店は30%程度と言われているが、カフェは25%程度だと言われている。一般的に飲み物は原価率が低いものが多く、ドリンク比率が高いカフェであれば原価率は低くなる。居酒屋は生ビールや刺身などの原価率は30~40%になる一方、サワーなどは10~15%程度となり、トータルでみて30〜35%程度という店舗が多い。

とはいえ、原価率を40%程度に設定して客数と回転率を重視して利益を獲得する業態や、原価率を20%程度に抑えて人的サービスに力を入れる業態などもある。業態を立ち上げる際に、どこを強みとするのかしっかり決める必要がある。

では、実際に飲食店の経営を始めてFLコストが計画より高いとなった場合に、どうすれば下げることができるのだろうか? まずは原価率のコントロール方法から見てみよう。

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F(食材原価)のコントロール

原価率が高い場合、まず確認すべきはロスを確認して減らすことである。ロスと一言でいっても、オーダーミスや調理ミスなどによるオペレーションロス、食材の賞味期限切れなどによる廃棄ロスなどがある。前者であれば、オーダーのとり方や厨房への伝え方、レシピなどの確認や見直しが必要となり、後者であれば発注方法や保管方法の見直しやメニューのABC分析を行い、よく出る食材・出ない食材の分類をして管理方法を変える必要があるだろう。

また、原価率の低いメニューとその出数を増やす施策も有効である。先ほどの居酒屋の例もあるが、ドリンクメニューなど原価率の低いアイテムを増やす、その原価率の低いアイテムをおすすめメニューとしてメニューブックや店内の目立つところで紹介して、出数を増やすなどで全体の原価率を下げる取組みも有効である。

仕入れコストを下げる方法としては、仕入れ先や食材の見直しなども有効ではある。ただし、仕入れ先の変更などは相手もあることであり交渉次第となることや、食材も原価率を意識しすぎて質の悪い食材に変えるだけでは、品質に影響するので注意したほうがいいだろう。

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L(人件費)のコントロール

人件費のコントロールに関しては、まず基準シフトを作成することが必要になる。仮に売上に対して人件費の基準を30%と設定したとしても、全ての時間帯で30%となるわけではない。開店前や閉店後など売上が発生しない時間帯や、売上の少ないアイドルタイムは30%を超える比率となり、売上が多くなるピークタイムは30%より大幅に少なくなるだろう。まずは、売上予測と基準シフトを作成して、人件費が基準通りになっているか確認してみよう。

基準シフトに沿って実際のシフトを作成し運用しても、予測通りの売上を達成するのが難しい場合が出てくる。その場合はスタッフに早上がりを依頼したり、休憩時間を長くするなどして人件費をコントロールする必要がある。

また、労働時間を管理するとともに、労働時間あたりの生産性を上げる取り組みも必要である。作業効率のしやすいレイアウトや配置を考える、発注作業や売上分析などはIT活用で作業時間短縮を図る、複数ポジションの仕事をこなすことができるような教育を行うことなどが有効である。

FL両方下げることができる策

原価率と人件費率を同時に下げる方法として「値上げ」という選択肢がある。値上げにより売上が増える一方で、原価・人件費ともに変わらないのでFL比率は下がることになる。しかも今年は消費税増税も予定されており、値上げを検討している飲食店も多いため、値上げをしやすい状況と言えるだろう。ただし、値上げしても客数が減らないことが前提条件となるため、客数に影響がない範囲での値上げが必要となる。慎重に検討することが大切だ。

今回はFLコストの説明とその改善方法を紹介した。繰り返すがFLコストは飲食店経営において、店舗で管理可能な重要な指標である。管理方法をしっかり身に着けて利益が出る店舗運営につなげてほしい。(提供:Foodist Media

執筆者:若林和哉