要旨
欠勤にはいたっておらず、勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態(1)を「プレゼンティーズム」と言う。労働者の生産性は、従来「休職」や「離職」を中心に考えられてきたが、近年、プレゼンティーズムによる生産性の損失が、これらを上回るといった研究が多数報告されており、企業においても関心は高い。
しかし、どういった症状がどの程度、仕事のパフォーマンスを下げているのか調査した例は多くはない。そこで、本稿では、被用者を対象に行ったアンケート調査を使って、どのような症状が仕事に影響を与えているのか、また、その症状がある時のパフォーマンスについて紹介する。
一般に、特に事務系の労働においては、仕事のパフォーマンスを客観的に測定することは難しいため、アンケート方式による自己申告で測定することが多い。主観的質問項目であるため、測定結果に幅があることや、低下割合への換算手法について充分に合意が得られていないといった指摘がある(2)が、ここでは、経済産業省資料等でも使われている手法(QQmethod)(3)を使った。
使用したデータはニッセイ基礎研究所が実施した「2018年度 被用者の働き方と健康に関する調査(4)」である。
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(1)経済産業省「健康経営 オフィス レポート」より。
(2)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業(ヘルスケアビジネス創出支援等)実施支援調査報告書」(2016年3月)
(3)QQmethod:何らかの症状(健康問題)の有無を確認したうえで、「有り」の場合に、その症状があった日数と、症状がある時の仕事の量や質を10段階で尋ねるもの。何も症状がない場合は、プレゼンティーズムはないと考える。
(4)ニッセイ基礎研究所「2018年度 被用者の働き方と健康に関する調査」全国18~64歳の男女被用者を対象とするインターネット調査。2019年3月実施。サンプル数5309。