飲食店を初めて開業し、その1店舗目を軌道に乗せるだけでも大変な努力が必要だが、無事に安定経営ができるようになると、多くの人が2店舗目の出店を一度は検討するのではないだろうか。「もっと収入を得たい」「スタッフの活躍の場を広げたい」「ほかの業態にチャレンジしたい」……。こうした思いを形にするためには、何をポイントにして2店舗目の出店を検討すればいいのだろうか? 詳しく考えていく。
多店舗展開のメリット
そもそも多店舗展開をするメリットは何だろうか? まず挙げられるのは経済的メリットである。1店舗目と同じ利益を2店舗目でも出すことができれば、収入が倍になる。自分や家族、従業員がより充実した人生を送るために、見逃すことのできないポイントである。
経営上のリスクを分散する点や、規模のメリットを生かす点でも多店舗展開は有効である。1店舗のみでは、その店に何かがあって営業ができない状態になると収入が途絶えてしまう。しかし多店舗展開をしていれば、他の店の営業である程度カバーすることが可能となる。また、近隣で複数店舗を運営していれば、片方の店舗でスタッフが足りないときに、もう片方の店舗からヘルプに行くこともできる。
また、店舗が増えて店長というポジションが増えることで、従業員にも役職が上がるチャンスが生まれる。新店のオープンに関わることが自分の成長につながると考える従業員もいるだろう。このように多店舗展開は従業員のやりがい、従業員満足の向上にもつながる。
2店舗目を出す際のポイント
2店舗目を出す際、一番重要なのはタイミングである。1店舗目の運営もうまくいってないのに2店舗目を出店してしまうと両方ともうまくいかなくなる可能性が高い。かといって、タイミングを逃してしまうと物件が出てこなかったり、競合店が増えてしまったりして、いつまでも出店ができない可能性もある。
まず、最初に考えるべきは、1店舗目の収支や借入金の返済が計画通りに進み、手元にも次の出店に充てられる資金ができているかどうか。2店舗目の出店も、多くの場合は金融機関から借入をすることになるので、金融機関の担当に1号店の運営状況や出店に必要な資金を伝えておいて、借入ができそうな返事であれば検討してよいタイミングと言えるだろう。
そして資金も重要であるが、一番重要なのは人材がいることではないだろうか。今まで1店舗だけを見ていたオーナーも、2号店の開店準備や開店後の運営にかかる時間が長くなる。そのため、1号店をある程度任せることができる人材が育っていることが重要である。先を見据えて、店の運営を任せられる人材を育てておこう。
もう1つ、2号店出店において検討するべきことは、1号店と似たような店舗を出店するのか異なる店舗を出店するのかということである。1号店と同じコンセプトの店舗のほうが、運営を軌道にのせることに要する時間は短くてすむ。しかし、1号店とコンセプトも距離も近いと共食いする可能性があり、距離的に離れすぎるとマーケットが違いすぎる可能性や、管理がしにくくなるデメリットがある。逆に1号店と違う業態で2号店を出店すると、軌道にのせるまでの時間がかかってしまうことになるため、慎重に判断すべきであろう。
企業として、経営者としての将来設計を
多店舗展開のメリットやポイントについてまとめたが、重要なことは企業として経営者として、どのようなビジョンを持っているかということである。1号店がうまくいったから2号店を出店するという考えではなく、将来的に何店舗を目標にして、そのためにいつ2号店を出店するか、そのために何をするかという計画に基づいて行動を考えることが、経営者としての仕事となってくる。目標を決めて達成のための計画を設計するという思考パターンを身に付けよう。
そして、繰り返すが、多店舗展開に関して最も重要なのは人材である。特に店舗を任すことができる人材は数日で育つわけではない。既存店あるいは新店を任すことができるように、計画的に育成していくべきである。
今回は多店舗展開のポイントについて説明した。ぜひ参考にして、多店舗展開を目指してほしい。(提供:Foodist Media)
執筆者:若林和哉