証券会社などに資産運用を一任する「ラップ口座」の人気が上昇中です。契約残高は10兆円を目前に控え、ロボアドの登場も利用増に寄与しています。一方で年間コストが高いなどの指摘もあります。果たしてラップ口座は利用するべきなのでしょうか。

ラップ口座とは?

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(画像=TZIDO SUN/Shutterstock.com)

ラップ口座は「投資一任口座」や「ファンドラップ」などとも呼ばれ、投資資金を顧客が証券会社や信託銀行、ラップ会社などに託し、運用方針などを示した上で資金運用を一任することが可能な口座のことです。ラップ口座を扱うことができるのは、金融商品取引法における「投資一任業者」の登録を受けた事業者だけです。

具体的には、ラップ口座を扱う事業者が投資家にヒアリングを行った上で、両者の間で「投資一任契約」が結ばれ、証券会社側が投資信託(ファンド)を購入します。証券会社側は基本的に3ヵ月ごとに運用経過を顧客に報告し、定期的に面談などを通じて資産配分の変更なども実施します。

ラップ口座は元々1970年代にアメリカのある証券会社が開発した金融サービスで、日本よりも早くアメリカ国内で個人投資家向けの資産運用サービスとして定着していました。日本では1998年12月に施行された金融システム改革法によって開設が解禁され、2004年に施行された改正証券取引法では規制緩和も進みました。

契約残高の推移と利用増加の理由

日本におけるラップ口座の運用資産額は2013年ごろを境に一気に拡大基調に転じました。

日本投資顧問業協会が2019年3月に発表した統計資料によれば、2018年12月時点で契約残高は8兆3,421億円となっており、契約件数は83万9,636件となっています。ちょうど10年前の2008年末時点では、それぞれ5,057億円、4万895件だったことから、大きくマーケットサイズを拡大させたことが分かります。

ラップ口座の普及は認知度が高まったことなども理由として考えられますが、運用を全て任せられるという手軽さを利点と考える人も多くいることが、一番の要因だと考えられています。退職金をラップ口座に入金して資産運用を始める高齢者も多いほか、親から金融資産を相続したことタイミングで乗り出す人もいます。

近年では資産配分を独自アルゴリズムによって自動で提案してくれる「ロボットアドバイザー」(ロボアド)が登場し、ラップサービスにおける資産運用でも活用されるようになっています。ロボアドはAI(人工知能)の活用も進んでいることなどから注目が集まっており、こうした背景もラップサービスの利用拡大に結びついていると言えます。

手数料は高め、元本割れの可能性も

このように契約が増加基調にあるラップ口座ですが、いくつか留意点もあります。

例えばデメリットとしても指摘される点が多いのは、手数料が高いことです。ラップ口座を利用する場合には、事業者に支払う「投資顧問料」、投資信託の「信託報酬」の両方を投資家側が負担しなければなりません。

また購入している投資信託が値下がりした場合には、運用資産が元本割れを起こす可能性もあります。結果として損失が出た場合は本人がその損害を受け止めなければなりません。

専門家に運用を一任することによって、本人に投資のノウハウが貯まりにくいことを指摘する声もあります。ラップ口座は忙しくて資産運用のことを考える暇がない人に適していると言われていますが、中には運用の知識を学ぶため、あえてラップ口座で資産運用をしない人もいます。

最近は投資金額が低めのものも

ラップ口座は一般的に最低投資額が300万円から500万円ほどとなっており、一定の資産を保有している人向けのサービスであると言えますが、最近では10万円程度から可能なものもあります。証券会社ごとに相談会なども行っていますので、まずウェブサイトから詳細を調べてみてはいかがでしょうか。(提供:JPRIME

文・J PRIME編集部


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