株価が好調なときにはNISAのメリットにスポットが当たりやすいですが、株価の上値が重く、さらに金融危機が警戒される局面ではNISAのデメリットに着目する必要があります。NISAの特徴を整理した上で、デメリットをわかりやすく解説します。
NISA口座の97.5 %が上場株式と投資信託に使われている
はじめにNISAがどれくらい利用されているか、どのような投資商品の買い付けに利用されているかを金融庁のデータをもとにざっと確認していきましょう。
もともとNISAはイギリスのISA(個人貯蓄口座)を参考にしたものです。2014年1月にスタートした制度で、2019年1月時点で5年がたちました。現在のNISAの総口座数(一般NISA・ジュニアNISA)の口座数は約1247万(※)。内訳は一般NISAが約1143万口座、つみたてNISAが約104万口座となっています。スタート時の勢いはないものの、着実に利用者数を伸ばしている人気のある制度です。 ※1 2018年12月末の速報値
ちなみに、一般NISA・つみたてNISAの口座を通しての買付額(※)は15兆360億円。このうち投資信託の買付額は8兆8,116億円(全体の58.6%)、上場株式の買付額は5兆8,445億円(同38.9%)。この2品目で全体の97.5 %を占めます。残り数パーセントはETFやREITの買い付けに利用されています。これらのデータから投資信託と上場株式へ投資する方々から、NISAは圧倒的な支持を得ていることがわかります。 ※2 2018年9月末の確定値
上場株式などで得た利益が最大600万円非課税に
なぜ、これほどNISAが積極的に利用されているかというと、上場株式や投資信託などの売買益、配当金、分配金で得られた利益が非課税になるからです。通常の特定口座・一般口座を介して買い付けた場合は、利益の20.315%の税金がかかります。これが非課税になるのは大きな魅力です。ただし、あくまでも小規模投資に対する優遇措置なので年間120万円までの上限があり、最大5年間で600万円となります(2016年以降、開設の口座)。
特にNISAがスタートした2014年から2018年にかけては、国内外の株価が上昇傾向だったので恩恵を受けた方も多いでしょう。2014年1月時点の日経平均は1万6000円前後でしたが、2018年10月時点には2万4,000円超と約8,000円以上も値上がりしました。
要注意 NISA口座を使うと損益通算ができない
NISAのデメリットを一口で言えば「損失が発生したときにカバーできない」となります。だからこそ、損失が発生しやすい局面ではNISAを慎重に選択する必要があるのです。たとえば、証券会社の「特定口座・一般口座」と「NISA口座」の両方で株や投資信託を買い付けていた場合、両者を損益通算することはできません。損益通算とは、その年度の利益と損失を相殺することです。もし両者で損益通算ができれば、「NISA口座の損失」と「特定口座・一般口座の利益」を相殺して税金を圧縮することも可能ですが、これができないのです。
NISAでは、損失の繰り越しができないのも辛いところです。特定口座・一般口座の場合、上場株式の売却で発生した損失は翌年以降3年に渡って繰り越せます。例えば、今年度100万円の損失が発生し、来年度200万円の利益が出た場合、両者を相殺して残った100万円分の税金を支払えば済みます。しかし、NISA口座を利用して買い付けるとこれができなくなり、その年度の損失がそのまま確定してしまうのです。
NISAはどのタイミングで使いはじめるかが大事
本稿はNISA口座を否定するものではありませんが、利益が出にくい局面のときは、NISA口座をあえて使わないという選択も必要でしょう。NISA口座で利益が発生しなかった場合、使わなかった年120万円の非課税枠は繰り越すことができません。結果的に、使いもしない非課税枠のために、損益通算できなくなる選択をしたことになります。
そうはいっても上限額があるとはいえ、非課税で上場株式などの利益を獲得できるのは大きいメリットです。損益通算できないというデメリットと比べながら慎重に判断してください。(提供:JPRIME)
文・J PRIME編集部
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