さまざまな飲食店で導入されるようになってきた「ネット予約」。グルメサイト等から直接予約を受けられる利便性に加え、台帳への記入が不要になることから作業効率化を図る意味でも注目を集めている。一方で、「管理が難しそう」「ノーショーのリスクが高まる」などの声もあり、ネット予約導入に消極的な店舗も少なくないようだ。今回の「飲食店リサーチ」では、飲食店におけるネット予約の導入状況を調査。そのメリットとデメリットとともに、飲食店の本音を紹介する。
調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:221名
調査期間: 2018年3月12日~3月18日
調査方法:インターネット調査
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回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち67.9%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は58.4%(首都圏の飲食店の割合は72.9%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
ネット予約を受け付けている飲食店は6割超え
まず、ネット予約の受け付け状況について聞いたところ、「受け付けている」62.4%、「受け付けていない(電話予約のみ)」32.6%、「予約自体受け付けていない」5.0%という結果に。従来の電話予約に加えて、ネット予約を実施する店舗が増えつつあるようだ。
またネット予約の場合、予約が入った時点で席の確保が確定する「即予約」と、ネットでは予約の希望のみを受け付け、折り返しの連絡で予約が確定する「リクエスト予約」がある。ネット予約を受け付けている飲食店に、「即予約」「リクエスト予約」どちらを導入しているか尋ねると、「即予約」は59.4%、「リクエスト予約」は40.6%だった。
では、ネット予約を受け付けている飲食店は、実際にどんな媒体を利用しているのだろうか。アンケートによると、最も多いのは「食べログ」で50.0%、続いて「ぐるなび」42.8%、「ホットペッパーグルメ」42.8%と大手グルメサイトが並ぶ中、「自社ホームページ」も34.1%という結果に。また、自社ホームページを含めると、約65%の飲食店は2つ以上のメディアを併用しており、積極的にネット予約を活用している状況が読み取れた。
管理や予約キャンセルなどの問題も
ネット予約の普及により消費者の予約に対するハードルが低くなった一方で、飲食店サイドでは課題と感じる点も少なくはない。よく耳にするネット予約の代表的な課題に対して、飲食店はどのような感想を持っているのかを調べたところ、「管理が面倒」66.0%、「空席の在庫管理が難しい」63.7%、「キャンセルやノーショーが多い」55.8%という結果に。多くの飲食店がネット予約に対して課題を感じていることがわかった。
なかでも近年、大きく話題となることが多いのが「予約キャンセル問題」。「ネット予約は気軽に予約を入れられるため、連絡もなしにキャンセルされることがある。キャンセル料などを回収できないのが課題」(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗) という声もあるように、“気軽さ”が仇となっているケースもあるようだ。
一方で、「キャンセルやノーショーは確かに多い。しかし、キャンセルのリスクを上回るほど、ネットからの予約件数は多くあり、当店の場合ネット予約だけで満席になる営業日も少なくない。そのため、ある程度のキャンセルは仕方ないし、人気店のバロメーターだと思っている」(東京都/イタリア料理/3~5店舗) という声も。「予約キャンセル」が一定数あることを見越しても、ネット予約からの恩恵は大きいと感じる飲食店もあるようだ。
急な予約キャンセルを減らすためには、その対策も必要となってくる。例えば、ネット予約を受け付けたあとに電話で確認を取り、しっかりとキャンセルポリシーを説明するだけでも結果は大きく違ってくる。また、客に対して予約前日にリマインドメールを送れる「予約お知らせくん」といった無料サービスもある。こうしたツールを積極的に活用して急な予約キャンセルを防いでいきたいものだ。
ネット予約のメリットは?
課題もみられる中、ネット予約ならではのメリットも数多くある。最も大きなメリットは、従来の電話予約に比べ、ネット予約はリアルタイムでの対応を必要としないことだ。「営業時間中に予約電話の対応をするのが困難なため、お客様自ら必要な情報を記入して申し込んでくださるのはとても助かっている 」(愛知県/イタリア料理/1店舗)というように、混雑時でもスムーズに予約を受けることができる点は大きなメリットだ。
また、「店舗に不在の時でもネット予約は受けられる。返信の電話もかけたい時にかけ直せるので、ネット予約の方が良い」(東京都/イタリア料理/1店舗)という声もあり、予約の取りこぼしを避けることができるのはうれしい点といえるだろう。
さらに、ネット予約の場合は必要な情報を客自らが入力することがほとんど。そのため「メールでのやり取りなので、聞き間違えがない」(和歌山県/イタリア料理/1店舗)、「要望などが書かれている場合は電話より的確に伝わる(お祝いプレートの文字など)」(東京都/カフェ/1店舗)という声も。
一方で、「本来なら話し合いたいような内容でも、一方的に備考欄に書かれて申し込まれてしまうこともあるのが厄介」(愛知県/イタリア料理/1店舗)というケースもあり、予約受け付け後に電話などでフォローすることが大切となってきそうだ。
ネット予約は飲食店にとって、そして客にとってもなくてはならない存在になりつつある。まだ解決すべき課題もあるが、今後ますますその存在感は増していくことだろう。「集客」のみならず「業務効率化」といった側面でも活用できるため、導入を検討している店舗は、自店舗にとってのメリットと想定されるであろう課題を洗い出しながら検討を進めてみるといいだろう。(提供:Foodist Media)
執筆者:戸田千文