前日については、米国側から中国側に、本日金曜日の米国東部時間の午前0時1分(日本時間10日午後1時1分)に、2,000億ドルの輸入品に対して対中制裁関税を10%から25%に引き上げるとの警告があったこともあり、ドル円の上値の重さが意識されていましたが、トランプ大統領が記者団に対して「習近平・中国国家主席と電話会談を実施する可能性がある」「米中合意について素晴らしい代替案がある」「今週中の中国との合意は依然として可能」などと述べると、NYダウは一時450ドル超まで下落していたものの、80ドル安程度まで値を戻し、中国との合意へ含みを持たせる形となりました。
対中制裁関税への注目が高まっていますが、トランプ政権が今月中には発表すると思われる外国為替報告書で、監視対象に指定する国の数が引き上げられる見通しだと報じられています。ベトナムが為替操作国に認定される可能性があるなど、昨年10月公表の前回報告書の12ヵ国から約20ヵ国に拡大する見通しとのことであり、状況如何では、外国為替報告書もリスクオフの材料となる可能性がありそうです。
本日早朝に発表された、8日実施の南アフリカ総選挙の暫定結果については、開票率70%超の時点で、与党アフリカ民族会議(ANC)の得票率が約57%になっていることが一部通信社から報道されました。一部では過半数割れが危惧されていたこともありましたが、過半数維持はほぼ手中に収めたを考えられそうです。2014年の前回選挙で獲得した249議席からは減少したとしても、既にマーケットは織り込んでいると考えられるため、11日には選挙管理委員会から正式な報告がありそうですが、南アフリカランドについては、一旦上昇基調が強まりつつあると考えられそうです。
今後の見通し
本日の対中制裁関税については、大きく分けて4つのシナリオが考えられます。まずは、トランプ大統領が楽観論を述べているように、合意に達することです。これは、言わずもがなですが、リスクオンの動きになるでしょう。値動きが限定的になりそうなのが、制裁関税は引き上げるが、通商協議は継続するパターンと、関税引き上げを延期して、通商協議は継続するパターンです。
焦点としては、中国側が知的財産などの分野で法律を改正するとの約束を撤回していることです。実際に撤回しているのであれば、法律改正を受け入れるには、中国政府内での協議の時間が必要だと考えられるため、とりあえず制裁関税を行うというのは筋が通っていることになります。また、後者のパターンだと、中国側に法律改正の意図が無ければ、劉鶴中国副首相がワシントンへ出向くはずがないことで、合意文書案の修正を撤回し、法律改正に同意するものと考えられます。この両パターンについては、既に対中制裁関税について言明していることもあり、値動きは限定的になりそうです。
最後に、リスクオフとなる展開としては交渉決裂で米中貿易戦争が再度勃発することでしょうか。ただ、トランプ大統領の楽観論に加え、劉鶴中国副首相がワシントンへ誠意をもって訪米しているなどの報道を踏まえると、可能性としては高くはないものと考えられます。制裁関税は引き上げるが、通商協議は継続するパターン、関税引き上げを延期して、通商協議は継続するパターン、このどちらかで決着がつくのではないでしょうか。
ポンド円143.30円が明確なレジスタンスラインとなるか
ポンド円はテクニカル的には143.30円付近がレジスタンスラインとして意識されていますが、前日は143.20円付近までは戻りがあったものの、143.30円の戻り売り水準には届きませんでした。ファンダメンタルズ的にも、与野党協議に不安のあるポンドは上値が意識されそうですし、引き続き、ポンド円が143.30円付近が目先レジスタンスになっているため、この水準まで引き付けての戻り売り、利食いは142.30円台、損切りは143.80円上抜けとします。
海外時間からの流れ
トルコリラについては、イスタンブールの再選挙報道により民主政治への先行き不透明感が強まっており、トルコリラ円は一時17.50円付近まで下落する場面がありました。ただ、トルコ中銀が「金融市場の動きを考慮する」との緊急声明を出したことにより、一旦反発基調を強めています。トルコ中銀は、1週間物レポ金利を使った市中銀行への資金供給を当面停止すると発表したことも、リラ買いに繋がっている模様です。
今日の予定
本日は、独・3月貿易収支/3月経常収支、英・3月貿易収支、米・4月消費者物価指数、加・雇用統計、加・3月住宅建設許可などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ラウテンシュレーガー・ECB専務理事、ビスコ・伊中銀総裁、ブレイナード・FRB理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁、クーレ・ECB専務理事の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。