最近何かと話題の「仮想通貨」。昨年高騰したかと思えば年明けに急落したりして、なんだか訝しく感じている方も多いのでは? しかし昨年、仮想通貨を用いて資金を調達したベルギービール専門『サンタルヌー』が赤坂にオープン。仮想通貨は飲食店にとっても身近なものになりつつある。

そこで今回は、飲食店としては世界初となる仮想通貨を用いた資金調達、いわゆる「ICO」により開業した『サンタルヌー』に取材し、その実情について伺ったので紹介したい。

そもそも「ICO」って?

ICOとは「イニシャル・コイン・オファリング」の略で、仮想通貨を用いた資金調達のことを指す。似たような仕組みにインターネット上でお金を集める「クラウドファンディング」もあるが、その仕組みは異なる。

企業は「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行し、そのトークンを個人に購入してもらうことで資金を調達する。出資者はトークンを手にすることができ、それ自体を売買することも可能だ。

仕組みはなんとなく分かるが、飲食業界で実際に利用するとどうなのか。『サンタルヌー』の店主・佐藤庸介さんに話を聞いた。

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(画像=『サンタルヌー』の店内の様子)

なぜICOによる資金調達を考えたのか?

佐藤さんが仮想通貨の世界を知ったのは2年ほど前。仮想通貨に詳しい人のブログを読んでいて、「面白そうだな」と感じたのがきっかけだそう。『サンタルヌー』は元々名古屋にあった店で、佐藤さんが仮想通貨に理解があったことから、仮想通貨での決済を受け付けていた。そのため、“仮想通貨好き”がよく集まる店となり、東京から訪れる人もいたほど、その業界では知られた存在になっていた。

「東京にも出店して欲しいという声をいただいたので、1週間の期間限定で出店してみようと思い調べてみたんですが、レンタルカフェを利用するにしても費用が合わなくて。そこで、『資金をICOで募って集まったら東京に行く』と言ってみたんです」

ICOを行う上での事前準備

Twitterで知り合った人にトークンを発行するプログラムを教えてもらい準備し、資金の使い道や取引ルールなどを出資者に説明するICO用のサイトも制作。法律に抵触しないかなど、仮想通貨の法律なども調べたりした。

「最悪、返金すれば良いと思っていたから、リスクはほぼ無いと感じていました。ただ、コインチェックの事件があってからは規制が厳しくなったため、これからはより注意が必要になるかもしれません」

資金調達は2,000万円以上を目標にし、1,300万円に満たなかったら返金する予定だった。しかし結果的に集まったのは850万円。目標金額には届かなかった。

「本当は1,300万円に満たなければ返金するはずだったんですが、東京に店を出してみたいと思い、出資者全員に確認しました。そして、返金を希望する2名には返金し、集まった資金を元手に東京へ店を移転させたんです」

2017年11月に、『サンタルヌー』は晴れて東京・赤坂にオープンし、最初の3日間はICO参加者だけのレセプションパーティーを開催した。

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(画像=「牛のカルボナード」と「トルバドゥール・インペリアル・スタウト樽生」)

ICOによるメリット・デメリット

「やはりICO参加者が来てくれるのはメリットですね。名古屋で9年やっていたのでビール好きの方がよく来てくれましたが、東京にはコネがほとんど無いですから。あとはICOによる世界初の飲食店ということで、こうしてメディアの方も取材に来てくれますし」

ICO自体は知識があれば少人数でも行えるほど仕組みも簡単で、準備資金もほとんどかからないという。

「デメリットはほぼないです。資金が目標に達しなかったら、希望者に返金すればいいだけですから」

150種以上ものベルギービールが揃う専門店

最後にお店の紹介を。『サンタルヌー』は世界初のICOによる飲食店であることについ注目しがちだが、150種以上ものベルギービールを扱う専門店としても話題を集めている。しかも、店主の佐藤さんは「ベルギービールガイドブック」を出版するほどのベルギービール通だ。

ビールは生で飲めるものが常時6種類、その6種類も日替わりで変えるこだわりよう。また料理も、牛の肩ロースをベルギーの黒ビールでほろほろになるまで煮込んだ「牛肉のカルボナード」や、じつはベルギー発祥だという「フリッツ(フライドポテト)」など、ベルギービールに合う本格ベルギー料理が満載。ビール好きにとってはたまらない店といえそうだ。

『ベルギービール&チーズ サンタルヌー』
住所/東京都港区赤坂2-13-8 赤坂ロイヤルプラザ2F
電話番号/03-6435-5572
営業時間/18:00~24:00
定休日/日曜

(提供:Foodist Media

執筆者:西尾悠希