会社員は、給料から引かれる厚生年金保険料とともに「国民年金」を自動的に払っています。しかし、転職のタイミングや個人事業主として働いている場合(第1号被保険者)は、自分で納めないといけません。ついうっかり年金を未納にしてしまった、経済的に苦しくて未納にしてしまったという人もいるのではないでしょうか。

今回は、年金保険料を払わないとどうなるのか、また、経済的に年金が払えない状況のときにはどうしたらよいのか、その対策について解説します。

国民年金の未納率が問題に

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(画像=liza54500/Shutterstock.com)

平成29年度末、公的年金加入者は6,731万人のうち年金保険料を24ヵ月以上払っていない未納者は157万人でした。未加入者9万人を加えると166万人にものぼります。

公的年金は世代間扶養で、納付された年金保険料と国庫負担で成り立っています。国庫負担とは税金による負担のこと。年金保険料の負担が重くならないように配慮されていて、現在、国庫負担の割合は2分の1です。国民年金の未納率が高まると税金の負担が重くなり、結果的には国民生活全体にしわ寄せが起こる可能性があります。

年金を払わないと何が起こるの?

将来もらえる年金が減る

年をとったときに受け取れる老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上である場合、65歳から受け取れます。

このとき、それまで支払った額に応じて受給額が決定するため、年金の未納期間がある人はその分受け取れる年金も少なくなってしまうのです。

障害年金が受け取れない可能性がある

年金には、65歳から受け取れる基礎年金のほかに、病気やケガで働けなくなったときに受け取れる「障害基礎年金」があります。これは、年金加入期間の2/3以上の年金保険料の納付または免除、もしくは1年間保険料の未納がないことといった条件があります(ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は納付要件はありません)。

つまり、年金保険料を払わない未納の状態でいると、もしも病気やケガで働けなくなったときに障害基礎年金を受け取れない可能性があるのです。

病気やケガはいつ起こるかわかりません。年金保険料を払っておけばよかった、と後悔することがないようにしたいものです。

最終的には財産の差し押さえも……

年金保険料の未納率が高まると、世代みんなで支えようという年金の仕組みが破綻する恐れもあります。 そのため、日本年金機構は平成26年度から強制徴収の取り組みを強化し始めました。

年金保険料を払っていない未納状態だと督促状が送付され、それでも支払わなければ最終的には財産の差し押さえがされます。平成29年度の財産差し押さえは、なんと1万4,344件もありました。

未納の年金を支払うには?

国民年金保険料は、納付期限から2年以内であれば支払うことができます。納付書が手元にある場合は、その納付書で支払います。手元にない場合は、お住まいの近くの年金事務所に問い合わせをしましょう。納付期限から2年を過ぎると、時効となり支払うことができなくなってしまいます。

年金の免除・猶予申請とは?

収入が少なく年金保険料が払えない場合は、年金保険料の免除、年金保険料の納付猶予制度を活用しましょう。免除や猶予には本人からの申請が必要です。

年金保険料の免除や納付猶予が承認された期間は、年金の受給資格期間に算入されます。病気やケガで働けなくなったとき、免除や納付猶予を受けていれば障害年金を受け取れます。しかし、年金未納では、受け取れません。

納付猶予では年金額への反映がありませんが、免除は年金額への反映もあります。例えば、全額免除になると、納める保険料は0円ですが、将来もらえる年金は全額納付したときの年金の半額を受け取れることになります。しかし、全額保険料を納付したときと比べると受け取れる年金は少なくなりますので、長い老後のことを考えると、可能なら年金保険料は全額支払いたいものです。

年金未納の人は年金事務所に相談を

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人に、国民年金への加入が法律で義務付けられています。そのため、手続きなく年金保険料を納付しない年金未納者は厳しく追徴されてしまうのです。

経済的に年金保険料を支払うことができない人のためには、納付猶予や免除といった救済措置も用意されています。納付が困難な場合は手続きをしないで黙って未納にせず、早めにお住まいの地域の役所の国民年金窓口や年金事務所に相談に行きましょう。

人生100年時代といわれています。65歳で仕事をリタイアしたとしても100歳までは35年もあります。国民年金は、生きている限り受け取れる終身年金です。年金は老後の収入の柱になりますから、それがないとあるとでは大違いですね。長い老後生活を豊かで安心して過ごすために、国民年金がその一助を担っていることを再認識しましょう。

正田きよ子(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle

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