「学生だった」「収入が少なかった」などの理由で、年金保険料を支払っていない時期があった方もいらっしゃいますよね。そのとき支払えなかった年金保険料を、あとから納付することができる「追納(ついのう)」という制度があります。追納した方がお得なのか、解説します。

年金の追納とは?……払えなかった分を後日支払える!

年金,追納
(画像=PIXTA)

年金は、収入が少ないなどの理由で年金保険料を支払えない場合、手続きをすることで「免除」や「猶予」といった保険料負担を軽減する措置が受けられます。経済的に厳しい場合だけではなく、20歳以降でも在学中なら保険料を猶予される「学生納付特例」や、地震や火災等で被災したときの免除、配偶者からのDV被害で逃げているときの免除などもあります。

猶予や免除を受けている間は、年金を支払った期間とみなされますし、いったん保険料負担は減らすことができます。ただし、その分、満額の保険料を支払ったときよりも、将来受け取れる年金額が少なくなってしまいます。そこで、そのとき払えなかった分を、生活に余裕が出て支払えるようになったときに後から追加で納められる制度があります。これが「追納」です。

追納できるのは、過去10年以内の年金保険料です。免除や猶予を受けた期間から3年以上経っていると、当時の保険料に加えて経過期間に応じた「加算額」も必要になる可能性があります。追納するならできるだけ早めの方がいいでしょう。

ちなみに、免除や猶予の手続きをせずに年金保険料を払っていない「未納」状態の場合は、後から支払うことを「追納」ではなく「後納」といい、過去2年分までしかさかのぼれません。当たり前ですが、未納期間は年金を支払った期間とはみなされません。

納付した期間が10年未満だと将来年金をまったく受け取れない「無年金」状態になってしまいますし、たとえ10年以上あっても未納期間が長いほど受給できる年金額が少なくなります。障害年金や遺族年金も受け取れない可能性もありますので、たとえお金がなくても「未納」は避け、「免除」や「猶予」を活用したいところです。

追納した方がお得なの?

追納とそのまま納めない場合では、追納する方がおすすめです。

追納すると、将来の年金額が増える

追納すると将来の年金額が増えます。自分に追納できる期間があるのか、いくら払えばいいのか、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で調べることができます。もちろん最寄りの年金事務所でも教えてもらえますよ。

仮に、学生納付特例などの「猶予」を2年間受けていた場合、追納できる保険料は約40万円で、それを支払うと将来の年金は約4万円増えます(2019年時点)。この「毎年4万円追加」は生きている間ずっと続くので、65歳から年金を受け取ったとして10年後の75歳まで長生きすれば、支払った額より受け取る額の方が大きくなります。

2年間「全額免除」を受けていた場合は、追納保険料は同じ約40万円で、年金額は約2万円増加します。この場合は、85歳まで生きればプラスになりますね。ちなみに、2017年の厚生労働省の調査によると日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳となっています。

追納すると、税金が返ってくるかも

追納した保険料は、社会保険料控除の対象になります。つまり、税金が安くなる可能性があるのです。会社の年末調整や確定申告のとき、忘れずに記入するようにしましょう。

いくら安くなるのかは、年収やほかの控除の有無などによっても違うので一概には言えません。仮に課税所得金額300万円の方が2年分の保険料40万円を追納した場合、住民税と所得税を合わせて最大8万円まで安くなる可能性があります。

追納するにはどうすればいい?

年金の追納をするときは、最寄りの年金事務所に申請します。窓口まで行かなくても「ねんきんネット」で年金番号などが記入済みの申請書類がダウンロードできるので、追納できる金額を確認したついでに印刷して郵送、という方法でも手続きできます。

追納保険料は全部一括で支払うこともできますし、1ヵ月分ずつ、半年分ずつなどの分割もできます。申請書類に自分で選んで記入する欄があるので、自分の今の生活を圧迫しない程度で設定しましょう。

申請が受理されたら、年金事務所から納付書が届きます。それを使って金融機関の窓口やコンビニのレジなどで追納保険料を支払います。口座振替やクレジットカード払いは利用できませんが、セブンイレブンなら電子マネー「nanaco」払いができます。nanacoはうまく使えばポイントが貯まる分、現金で払うよりもお得ですよ。

余裕ができたら追納を検討しよう

追納は「今後来る老後に備えて、少しでも年金を上乗せしておきたい」という方の助けになる制度です。元が取れるかどうかは何歳まで長生きするかにもよりますが、今は「人生100年」とも言われる時代ですし、一度検討してみる価値はあります。まずは自分の年金の支払い状況を確認してみるところから始めましょう。

文・馬場愛梨(「貧困女子」脱出アドバイザー/ばばえりFP事務所 代表)/fuelle

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