前週末については、金曜日の米国東部時間の午前0時1分(日本時間10日午後1時1分)に、米国が2,000億ドルの輸入品に対して対中制裁関税を10%から25%に引き上げる措置を行ったこともあり、ドル円は一時軟調推移となりました。ただ、既に報道されていたこともありマーケットが織り込んでいたこと、さらに、対中制裁関税を行った後も、通商協議自体は継続されるとのことで下値は限定的になりました。
ただ、トランプ大統領はNY時間10日朝方に、「残りの3,250億ドル分にも25%の追加関税を課す作業が始まった」「中国との交渉を急ぐ必要はない」などとツイートしたことにより、米中通商協議の先行き不透明感が強まったこともあり、ドル円は一時109.478円まで下値を拡大しています。ただ、「米国と中国は北京で通商協議を継続することで合意した」との報道、トランプ大統領が「米中協議は建設的。協議は今後も継続」との見解を述べたことにより、下値は限定的となりましたが、ムニューシン米財務長官が「現時点では中国との貿易協議の予定はない」と発言したことにより、ドル円は110円台を維持することはできませんでした。
注目されていた南アフリカの総選挙については、ラマポーザ大統領率いるANCが得票率57.51%で過半数を確保し、勝利しています。前回の選挙(2014年)からは、約5%減の内容になりましたが、事前報道で得票率が下がることは予想されていたので、既に織り込んでいる内容だったこともあり、ランド円は7.70円台で月曜のオープニングを迎えています。
今後の見通し
米中通商協議については、合意には至りませんでしたが、交渉決裂の最悪の事態は回避されました。しかし、「残りの3,250億ドル分にも25%の追加関税を課す作業が始まった」とトランプ大統領がツイートしているように、今回の米中通商協議については、当初の楽観論からは大きく乖離した内容になりました。中国は報復措置を講じると警告しており、対米輸入1,100億ドルに関税率を25%への引き上げる可能性、そして、最悪のケースとして保有米国債の売却の可能性が考えられるため、この点には注意が必要でしょう。
米中通商協議が不調に終わったことで、一層注目されるのが日米通商協議です。本格的な交渉は7月の参議院選挙後に先送りされたことで、時間的猶予こそありますが、事前報道で楽観論が織り込まれていた米中通商協議が不調に終わったことは、大きなネガティブインパクトを与えそうです。本格的な交渉が延期されたことで、自動車関税の適用判断も7月の参議院選挙後になる可能性がありますが、パーデュー米農務長官が対日貿易赤字への懸念を表明しているように、日米貿易協議においても不調に終わる可能性が出てきています。
Brexit問題に揺れる英国ポンドは、メイ英首相が英議会が夏季休会に入る7月後半までの離脱問題の解決を目指すとの見解を示したものの、統一地方選でメイ首相の与党・保守党は惨敗を喫し、最大野党の労働党でさえも約100議席を失っています。当初は解散・総選挙も選択肢の一つではありましたが、選挙となれば苦戦の危機感が労働党にも飛び火する可能性が高く、可能性は一気に低下したと考えられます。欧州議会選前に、再度ヘッドライン相場になる可能性がありそうなため、この点に注目する必要がありそうです。
ポンド円143.30円はやはり上値が重かった
ポンド円については、9日の高値が143.238円、10日の高値が143.234円と143.30円が上値目途として意識されています。連日143.30円に届かなかったこともあり、143.20円でのショートメイク。利食い、損切り水準に変更はなく、利食いは142.30円台、損切りは143.80円上抜けとします。
海外時間からの流れ
トルコリラについては、1週間物レポ金利を使った市中銀行への資金供給を当面停止すると発表したことでリラの下値が底堅く推移していますが、ドイツのBILD紙が「S400購入中止」との報道をしたことにより、リラの買い戻しに寄与しています。トルコ政府の報道官が、この報道を否定しているものの、「S400購入中止」の可能性はまだまだ残されているとの見方も、リラをサポートしている一因だと考えられます。
今日の予定
本日は、トルコ・3月経常収支などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、デベル・RBA総裁補佐、ローゼングレン・ボストン連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。