前日については、米国が2,000億ドルの輸入品に対して対中制裁関税を10%から25%に引き上げる措置を行った報復として、中国政府は、米国からの輸入品600億ドル・約5,200品目の関税率を6/1日から引き上げる事を明らかにしました。約半数の2,500品目の関税が25%に引き上げられる見通しです。一方、米国は中国からの輸入品3,000億ドル相当への関税引き上げに関する詳細は6/17に公聴会を開く見通しであり、実際に関税が引き上げられるまで、しばらく時間を要するとのことです。この中国の報復措置公表後は、ドル円は109.60円台から急落し、一時109.024円を示現するなど、109円割れ目前までドル売りが強まりました。

ただ、トランプ大統領が6/28-29日に大阪で開催されるG20首脳会合で習近平国家主席と会談する予定である事を明らかにし、また、ムニューシン財務長官は米中協議は引き続き継続している事を強調したことにより、協議が決裂したわけではないことを示唆したため、ドル円は一旦109.30円台まで反発しています。ただ、明確な解決への進展も見られず、貿易戦争の長期化が予想される状況に変化はありません。楽観論がマーケットのコンセンサスであった頃とは、局面が大きく変化しています。

本日の東京時間に、トランプ大統領がホワイトハウスでのイベントにて、「中国との協議が成功かどうかは3-4週間以内にわかる」「中国との協議が成功すると感じている」などと発言したことから、株価が短期的に反発、そしてドル円も再び反発基調を強めています。中国側からリスクオフの材料が提供され、米国側からリスクオンの材料が提供されており、ドル円は109円台で動きづらい状況が一旦継続しそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

中国の報復措置公表を受け、リスク一辺倒のマーケットに傾斜していましたが、本日の東京時間のトランプ大統領の発言を受け、リスク回避の巻き戻しとまではいきませんが、目先のリスクオフのマーケットを一旦様子見へと変貌させた可能性があります。前日はドル円109割れ目前での反発、110円では上値の重さが意識されており、直近のドル円については、この1円スパンがコアレンジとして意識されてきそうです。

米通商代表部(USTR)が第4弾となる対中追加関税のリストを公表したことを受けて、米中貿易戦争への警戒感から売りが先行しましたが、本日のトランプ大統領の発言をそのまま受け取ると、「中国との協議が成功かどうかは3-4週間以内にわかる」とあります。米通商代表部(USTR)によると、来月17日に公聴会を開催し、公聴会後7日間で関税に関する意見を求めると公表しています。6/17までに中国との協議が成功かどうかが分かると言われている以上、過度なリスクオフの動きはこれで軽減されるのではないでしょうか。

トルコ地方選、南アフリカ総選挙とエマージング通貨の選挙が続きましたが、今度は豪州の総選挙が5/18に投票となります。現時点では、モリソン豪首相率いる自由党を中心とした与党・保守連合は苦戦を強いられているもようであり、最近の世論調査によれば与党への支持率は50%割れとなり、51%程度を獲得している野党・労働党が政権を獲得する勢いになっています。どちらに転んでも不思議でない状況であるため、結果次第では豪ドルの動きが活発化することが想定されます。

ドル円109円割れ阻止に意味がありそうだ

143.20円でのポンド円ショートポジションは、想定利食い目途の142.30円で手仕舞いです。次の戦略としては、前日109円割れを阻止したドル円の押し目買いに妙味がありそうです。明確な109円割れ水準である108.90円下抜けを撤退目途とし、109.30円台での押し目買い戦略。利食いについては、滞空時間こそ短そうですが、ワンタッチ期待の110円にまずは設定します。

海外時間からの流れ

トルコリラについては、欧州勢参入後に3月トルコ経常収支が発表され、予想9.8億ドルの赤字に対して5.9億ドルの赤字となり、数字自体は改善したものの、トルコリラ売りが強まり、トルコリラ円では18円付近まで下値を拡大し、中国の報復措置公表後に18円を割り込んでいます。ただ、トルコ経済当局筋から「中銀の法定準備金を利用し、財務改善や強化へ」などの見解が述べられたことから、下値も限定的になっています。

今日の予定

本日は、独・4月消費者物価指数(確報値)、英・4月失業率、独・5月ZEW景況感調査、米・4月輸入物価指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。