前日の海外時間については、サルビーニ伊副首相が雇用促進のため「EU財政規律違反である財政赤字の対GDP比3%超えの可能性」を示唆すると、伊財政問題の懸念が改めて意識され、ユーロ売りが強まりました。ユーロドルについては、一時1.12042ドルまで下値を拡大し、本日の東京時間においても、引き続き上値の重い展開になっています。ユーロ軟調の伏線として、5月独ZEW景況感指数が市場コンセンサス+5.0に対して、結果が-2.1になったことも意識されたものと思われます。ドイツ経済の見通し悪化の主な要因としては、米中貿易戦争が再熱しており、ドイツ経済の柱である輸出の先行き不透明感が強まったことが考えられます。

注目の米中通商協議については、トランプ大統領が6/28-29日に大阪で開催されるG20首脳会合で習近平国家主席と会談する予定である事を明らかにし、また、ムニューシン財務長官は、近く訪中の可能性があり、通商交渉の継続を望んでいるとの見解を述べています。米中貿易摩擦激化への過度な懸念は後退していますが、依然としてリスクイベントであることには違いなさそうです。ただ、トランプ大統領が引き続き楽観論を述べている以上は、下値は限定的になるものと思われます。

前日のポンドの売りの要因としては、英タイムズ紙に掲載された調査会社ユーガブによる欧州議会選の世論調査にて、メイ英首相率いる英与党・保守党の支持率は5位に転落し、保守党では支持率低下を受けて、メイ英首相に今週にも退任日を決めるよう求める圧力が強まったことが挙げられます。英国政府は、EU離脱協定案を議会が夏季休暇入りする前に批准することが必要不可欠との認識で合意しています。メイ英首相は、EU離脱案の承認を受けて辞任するとしているため、辞任の日程が従来より明白に示された格好になっています。英国議会は毎年7月後半に夏季休暇入りしますが、具体的な日程はまだ決まっていない模様です。また、メイ英首相は、EU離脱案の議会採決を6月3日の週に行うことを明らかにしています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

上値の重さが際立つユーロですが、前日の下落要因はサルビーニ伊副首相の「雇用促進のためであればEU財政規律の違反も容認」との発言ですが、ディマイオ伊副首相は同じ副首相の立場ながら、サルビーニ伊副首相の発言を無責任だと言及し、まずは無用な支出の削減や巨額な脱税を摘発することなどが政府がやるべきことであるとの見解を述べています。今月下旬の欧州議会選では同盟(サルビーニ伊副首相)と五つ星運動(ディマイオ伊副首相)は議席を争う立場になるため、今後は足並みそろえる発言が控えられそうなことから、サルビーニ伊副首相はユーロ売りの象徴、ディマイオ伊副首相がユーロ買い戻しの象徴として認識されるかもしれません。

本日の中国の経済指標も重要視されそうですが、マーケットの注目は明日の豪・雇用統計に向けられていると考えられます。結果次第では、次回会合が予定されている6月4日での利下げ観測が一段と高まることになりそうです。既に、対ドルでは1/3以来の安値を更新しており、マーケットのバイアスとしては、下落方向に舵をとっているものと思われます。ただ、雇用統計の数字が市場コンセンサスよりも大幅に改善しているようであれば、利上げ観測は後退し、大きく豪ドルが買い戻される動きになりそうです。

ドル円109円割れ阻止に意味がありそうだ

109円割れを阻止したドル円の押し目買いに妙味がありそうですが、109円半ばで膠着しており、上下に動きづらい地合いになっています。ただ、戦略に変更はなく、明確な109円割れ水準である108.90円下抜けを撤退目途とし、109.30円台での押し目買い戦略。利食いについては、滞空時間こそ短そうですが、ワンタッチ期待の110円にまずは設定します。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に発表された注目の中国指標では、中国・4月小売売上高(前年比)が市場予想+8.6%に対して結果は+7.2%、中国・4月鉱工業生産(前年比)が市場予想+6.5%に対して結果は+5.4%になりました。豪州単体の経済悪化による利下げリスクが懸念されている中、米中貿易戦争が不安視されている中国経済の指標がここまで悪化してくると、豪ドル売りに拍車がかかる可能性がありそうです。

今日の予定

本日は、独・第1四半期GDP(速報値)、トルコ・2月失業率、ユーロ圏・第1四半期GDP(改定値)、米・4月小売売上高、加・4月消費者物価指数、米・5月NY連銀製造業景気指数、米・4月鉱工業生産などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、クオールズ・FRB副議長、バーキン・リッチモンド連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。