前日の東京時間の豪・雇用統計の内容については、失業率が大幅に悪化し5.0%予想が5.2%、雇用者数変化については、1.5万人増が2.84万人増となり改善したものの、正規雇用者数変化が前回の4.92万人増から0.63万人減と大幅に減少ししており、RBAがこれまで示してきた利下げシナリオに綺麗に合致する内容になりました。雇用成長率は伸びているものの、失業率は徐々に上昇していることから、広義の未活用労働率はさらに上昇すると考えられます。RBAとしては、労働市場が本当に悪化しているのかを判断するのにもう少し様子を見たいとのことで、利下げを7月と8月に実施する可能性がありますが、中国経済の悪化状況を加味すると、6月利下げシナリオの可能性が高いと考えられます。

海外時間に入ると、総じて米国の経済指標が強く、米・5月フィラデルフィア連銀景況指数は市場予想9.0に対して16.6、住宅関連の住宅着工件数、建設許可件数も市場予想を上回り、新規失業保険申請件数については市場予想22.0万件に対して21.2万件と非常に強い内容になりました。この発表を受けて、ドル円は109.965円まで上値を拡大しました。しかし、本日の東京時間に110円をタッチしたものの、110円を明確に上抜ける動きにならないと、110円レジスタンスが意識されてくるかもしれません。

サルビーニ伊副首相の発言をきっかけに上値の重くなっているユーロですが、前日も引き続きユーロ軟調の動きとなりました。前日も「イタリアもトランプ大統領のように規律を無視する行動が必要」などつ発言しており、「EU財政規律違反である財政赤字の対GDP比3%超えの可能性」を示唆していることもあり、引き続きユーロを買い支える材料は乏しいと考えられます。米中貿易戦争が懸念されているものの、マーケットはドルの買い戻しの動きを見せていることから、ユーロについては、引き続き下落基調が継続する見通しです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週末には、豪州で総選挙が行われます。最新の世論調査では、与党・保守連合の支持率48.5%、野党・労働党への支持率が51.5%と前週末と比較すると、若干リードが広がっています。投票目前でも野党・労働党がリードしている現状を踏まえると、6年ぶりの政権交代が現実味を帯びてきました。ただ、豪州では外交・安全保障政策に与野党の共通認識があり、政権交代でも大きな影響はないものと思われます。ただ、いざ政権交代となると豪ドルの動きが神経質になることが想定されるため、翌週の豪ドルの動きには注意が必要でしょうか。

ポンドについては、英国の与党・保守党の議員で構成する1922委員会(1922 Committee)のブレイディ委員長が、メイ首相が6月上旬に退任時期を示すことを明らかにしました。ポンドについては、2月中旬以来の水準に下落しており、当初の離脱期限であった3/29に向かうような動きにはならない公算ですが、依然として先行き不透明感が強いこともあり、ポンド軟調自体は継続しそうです。

ドル円は110円で利食い、次の戦略は豪ドル円の戻り売り

前日は110円ワンタッチには至りませんでしたが、本日の東京時間に110円にタッチしたことで、109.30円のドル円ロングについては、110.00円にて利食い、手仕舞です。次の戦略としては、利下げ懸念が意識されてくるであろう豪ドルの戻り売りがターゲットになりそうです。76.30円付近が戻り売り目途になりそうなため、76.20円付近での豪ドル円の戻り売りを戦略とします。利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。

海外時間からの流れ

ドル円を中心にクロス円全般は買い戻しの動きが強まりましたが、トルコリラ円については蚊帳の外という動きになりました。トランプ政権がトルコに対する鉄鋼関税を、50%から25%への引き下げを発表しました。関税引き下げであり、本来であればリラ買いが強まってもおかしくはないのですが、それ以上にチャウショール・トルコ外務相が、露製ミサイルシステムの購入延期を否定し、NATO同盟国とトルコの関係悪化が懸念されていることが意識されています。また、米国のトルコに対する経済制裁も十分考えられるため、円安基調が強まってはいましたが、リラ買いには繋がらなかった模様です。

今日の予定

本日は、ユーロ圏・4月消費者物価指数・確報値、米・4月景気先行指数(前月比)、米・5月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ウィリアムズ・NY連銀総裁、クラリダ・FRB副議長の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。