週末に行われた豪州総選挙については、事前予想では劣勢だと伝えられていた与党・保守連合(自由党・国民党)が勝利しました。ABC予測では、与党・保守連合が買い半数を確保するだとうと伝えらえており、豪ドルにとってはポジティブサプライズとなりました。豪ドル円については、75.934円でオープニングを迎えており、前週末の終値から約50銭ほど上窓を開けてのスタートになりました。その後は76.30円台まで上値をさらに拡大しており、もう一段高が期待されそうです。2007-2013年の労働党政権時代は親中姿勢が指摘されており、労働党が政権復帰した場合、近年厳しかった豪州の対中政策が変化するかも注目されていましたが、政権交代がコンセンサスになっていたこともあり、与党の勝利は豪ドルにとってはプラスに働きそうです。
米中通商協議から日米通商協議へ注目が移行するなか、トランプ大統領が「対日本・EUの自動車関税措置を少なくとも180日間延期する」との見解を示すと、日米の貿易摩擦に対する懸念が後退しドル円が上値を拡大しました。米・5月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が市場予想97.2を大きく上回る102.4になったことも、ドル買いをサポートしたものと思われます。ただ、トランプ大統領が「もしイランが戦いを望むなら、イランの正式な終焉となるだろう」と発言しているように、新たな地政学的リスクが勃発しています。当然リスク回避要因であるため、今後のヘッドラインが重要になりそうです。
トルコリラについては、エルドアン・トルコ大統領が「ロシア製ミサイル防衛システム『S400』を調達後、さらに強力なS500をロシアと共同開発する」と18日の講演で発言したため、週明けのトルコリラについてはリラ売りが加速するかと思われましたが、以外にも落ち着いた動きになっており、トルコリラ円で18.10円台の推移になっています。ただ、エルドアン大統領自らが再びリラ売り材料を提供していることもあり、イスタンブールの再選挙前で神経質な動きのなか、リラ売りに結び付くかもしれないので、注意が必要です。
今後の見通し
米政府高官筋からリークがあったため、それ程の驚きはありませんでしたが、「対日本・EUの自動車関税措置を少なくとも180日間延期する」との見解をトランプ大統領が示したことは、リスク回避の巻き戻し要因になりそうです。また、「トランプ政権はカナダ、メキシコに課す鉄鋼とアルミニウムの追加関税を撤廃することで両国と合意した」との報道もあり、カナダドル、メキシコペソが堅調に推移していることも特徴的です。これまで追加関税絡みで上値が抑えられていた通貨ペアであるため、目先は反発基調を強めるかもしれません。
週末の中国からの報道では、王毅中国外相がポンペオ米国務長官との電話会談で「通商問題で米国は行き過ぎた行為を自制するべきだ」と発言したと報道されています。中国は妥協する姿勢がないこともあり、米中貿易戦争の解決の糸口が見えないことで、こちらはリスク回避要因イベントとして認識されています。米中通商協議については、本来リスクオンのイベントでありましたが、ここにきて真逆の捉え方になっています。ただ、ようやくマーケットがこの急転直下の状況を織り込んできたと考えられそうです。
選挙でサプライズも、戦略は豪ドル円の戻り売り継続
週末の豪州総選挙の結果は、まさにサプライズの一言でしたが、与党が勝利したことで、一旦戻りを試しそうなため、76円台でのショートのチャンスが生まれました。76.30円付近が戻り売り目途になりそうなため、76.30円付近での豪ドル円の戻り売りを戦略とします。利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。
海外時間からの流れ
本日の東京時間に発表された日・第1四半期GDP(速報値)(前期比/前期比年率)については、市場予想-0.1%/-0.2%に対して、結果は+0.5%/+2.1%と大幅に改善したため、ドル円は110.20円台まで上昇しています。今回の経済指標が大幅に悪化するようなことがあれば、消費税の引き上げ延期などの話題がテーブルに載る可能性があったため、円売をサポートするには絶好の材料が出てきたと考えられます。
今日の予定
本日は、独・4月生産者物価指数、ユーロ圏・3月経常収支などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ブロードベンド・英中銀副総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。