前日については、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置に続き、HIKVISION(ハイクビジョン)社をブラックリストに加えるとの報道が、米中通商協議の先行き不透明感を強めるのではないかとの見方が強まっていましたが、他にも同業のダーファ・テクノロジーなど数社に対する禁輸措置を検討中との報道により、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置の一時的な緩和の影響が一気に崩れる展開となりました。ドル円については、111円レジスタンスが意識されている中で上値が抑制され、110.20円付近まで下値を拡大しています。
注目されていたFOMC議事要旨では、FRBメンバーは現在の忍耐強い姿勢が当面は維持できるとの見方で一致していたと公表されました。また、政策金利の変更も当面は不要という認識だったことも明らかになっており、トランプ政権から利下げ圧力がかけられたとしても、市場が利下げを織り込む動きにはならない公算です。マーケットが動意づく材料としては、年内の利下げを検討などのネガティブサプライズがあるとすればという所でしたが、内容に特段サプライズはなく、値動きも限定的になりました。
混迷を極めているのは、EU離脱問題を抱えている英国ポンドでしょうか。メイ英首相が6月上旬に新たなEU離脱案を議会採決に諮ろうとしているものの、野党の労働党や、保守党の強硬離脱派からの反対意見が根強く、メイ首相の足元は大きく揺らいでいます。保守党のレッドソム下院院内総務が辞任したことが象徴されるように、求心力の低下により、メイ英首相が数日中にも辞任表明する可能性がでてきています。市場はメイ英首相の早期辞任、保守党党首がハード・ブレグジット寄りの人物に代わる可能性、総選挙の実施、総選挙後の労働党政権の誕生などといった、ネガティブ要因が実現する可能性が一段と高まったと考え、織り込む動きを見せそうです。
今後の見通し
当面は、トランプ大統領を中心とした米中通商協議に関するヘッドライン、そして袋小路に立たされた英国のEU離脱案が市場の中心になりそうです。米国の禁輸措置報道以外にも、「米国は中国の労働者の採用に関して、米国の利益を損なう可能性もあるため、ビザの発行を遅らせている」との報道も流れており、当初の楽観論は遠い昔になってしまいました。日米通商協議については、21日にワシントンで日米通商交渉が事務レベルで行われ、本日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と日本側の高官との会談も予定されているものの、早くても参議院選挙が終了した後になりそうなことで、目先は米中通商協議のヘッドラインが中心になりそうです。
英国議会が混迷を深めるなかで、本日より欧州議会選挙が始まります。初日に、英国とオランダの選挙が行われることで注目が集まっています。ただ、最終結果は月曜の早朝にならないとわからないため、欧州議会選挙関連でユーロが動き出すのは来週以降でしょうか。ただ、今回の選挙では、2024年の次期選挙に向けて、欧州が崩壊の道を歩む可能性が危惧されていると報じられているように、非常に重要な選挙として位置づけられています。状況によっては、ユーロ、そしてポンドが乱高下する可能性があるため、この点には注意が必要でしょうか。
リスク資産が買われる地合いではないだろう
豪ドル円については、再び時75円台半ばまで下値を拡大してます。テクニカル的には76.30円の上値目途で抑えられ、ファンダメンタルズ的にはこれから6月の利下げを織り込む動きを見せるとの思惑もあり、引き続いショート戦略継続です。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。
海外時間からの流れ
エマージング通貨では、トルコリラの下落が目立っています。トルコのロシア製ミサイルシステム購入を巡り、トルコと米国の関係悪化懸念が日に日に強まっており、米国がトルコに対して制裁を加えるような展開になれば、急速にリラ売りが強まるかもしれません。また、トルコ中銀の外貨準備高の減少に伴い、トルコ株式相場の下落が強まっており、リラ単体の基調が弱まっていることから、ドル円が110円を割り込むような場面があれば、連れ安となり、トルコリラ円で17円半ば付近まで下落する可能性がありそうです。
今日の予定
本日は、独・5月製造業/サービス業PMI、ユーロ圏・5月製造業/サービス業PMI、独・5月IFO景況指数、米・新規失業保険申請件数、南ア中銀政策金利発表、米・5月マークイット製造業/サービス業PMIなどの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ノボトニー・オーストリア中銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。