前週末については、大方の予想通りメイ英首相が6月7日での退陣表明を行いました。直後の動きとしては、ポンド買いが優勢になったものの、次期首相候補のボリス・ジョンソン前外相の「合意なき離脱を辞さない」との発言を受けて、ポンドは失速しました。ポンドドルは1.2710ドル付近から1.2650ドル付近まで下落しましたが、米国の経済指標(米・4月耐久財受注)が悪化したこともあり、その後はドル売りが強まったことで、1.2720ドル付近まで値を戻しています。ただ、この一連の流れを受けて「合意なき離脱」の可能性が格段に上がったことは事実であり、ボリス・ジョンソン前外相の首相就任が確実視されれば、ポンドは再び急落する可能性がありそうです。

英国の政局は、メイ英首相の早期退陣表明を受けて、一層混迷の度を増しています。現時点では、8名が保守党の党首に立候補するつもりであると報じられていますが、その中でもボリス・ジョンソン前外相はひと際異彩を放っています。既に「合意なき離脱」に備えるよう注意喚起をするなど、ハード・ブレグジットを全面的に押し出す構えを見せています。EU離脱を巡り、強硬離脱派などの反対意見が噴出したことを背景に、メイ英首相が退陣に追い込まれた経緯を考えると、新しい党首は離脱強硬派で、そのもとでの総選挙が現実的でしょうか。そうなると、自ずとポンドは下落基調を強めるものと考えられます。

本日は、日米首脳会談が開催され、貿易問題や北朝鮮問題が議論される模様ですが、共同声明が予定されていないことで、為替の値動きに直結するイベントにはならない公算です。既にトランプ大統領は、日米通商交渉が7月の参議院選挙後に先送りすること、自動車関税の発動が最長6カ月延期されることを表明しています。ただ、5月月例経済報告で景気判断が下方修正されたことで、今年10月の消費増税が先送りされる可能性が出てきており、黒田日銀総裁を筆頭とした本邦の高官発言が今後は重要視されそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

注目されていた欧州議会選挙については、各国の開票結果によると、事前の予想通り、ポピュリズム的な政策を掲げる極右政党などの反EU勢力が躍進しており、主流の中道右派・左派は初めて合計で過半数を割り込む見通しになっています。その他では、ギリシャのチプラス首相は、欧州議会選で与党・急進左派連合が野党に敗北したことを受け、議会を解散し、秋に予定されていた総選挙を前倒しで実施すると表明しました。予定日は、6/30までに行われる公算です。

また、サルビーニ伊副首相の「同盟」が勝利し、「五つ星運動」は後退しました。「五つ星運動」は第3勢力に後退する見通しであり、一層、サルビーニ伊副首相の「同盟」の力が強くなる公算です。同氏は、前週、雇用創出のためならEUの財政規律を破り公的債務を増やす可能性があると発言したことによりユーロ売りを牽引しましたが、この欧州議会選挙の結果を受け、ポンド同様にユーロも売られやすい状況になったと考えてよさそうです。

また、フランスではマクロン大統領率いる与党・共和国前進が、マリーヌ・ルペン氏の極右政党・国民連合に敗北を喫するもようで、ドイツではメルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)が首位となったものの、前回より議席を減らしています。これらは、決してプラスに作用する結果ではありませんが、悪い内容ながらも想定の範囲内という考えにより、ユーロ売りに歯止めがかかっています。寧ろ、リベラル派と緑の党が躍進しており、有権者がポピュリストの脅威に反応した結果になったことで、出口調査後は、ユーロが若干買われています。

欧州議会選挙が一段落すれば、再び豪ドル売りが加速か

豪ドル円については、引き続き、テクニカル的には76.30円の上値目途で抑えられ、ファンダメンタルズ的にはこれから6月の利下げを織り込む動きを見せるとの思惑もあり、引き続いショート戦略継続です。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。

海外時間からの流れ

本日は、英国、米国が祝日で休場となるため、海外時間の参加者は大幅に減少する見通しです。欧州議会選挙では、ブレグジット党が29議席獲得する見通しであり、労働党は10議席、そして与党保守党は4議席獲得に留まる公算です。本日は英国が休場となるため、影響自体は限定的なものになりそうですが、EU離脱に向けた動きが加速している中で、「合意なき離脱」が再び意識されてくると、明日以降、ポンド売りが強まる可能性がありそうです。

今日の予定

本日は、主要な経済指標は予定されていません。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。