前日については、英国がスプリング・バンク・ホリデー、米国がメモリアルデーだったこともあり、大半の海外市場が休場だったこともあり、非常に商いの薄いマーケットになりました。トランプ大統領が、日米会談で日米貿易不均衡の解消を目指す考えを強調し、「8月中に何らかの合意に至る」と述べたものの、西村官房副長官は「8月発表」について「合意したわけでは全くない」と否定したことで、為替への影響は限定的となりました。ドル円については、109円半ば付近での推移に終始し、総じて値動きの小さな日となりました。

週末に発表された欧州議会選挙では、イタリアのサルビーニ伊副首相の「同盟」が勝利し、「五つ星運動」は後退しました。「五つ星運動」は第3勢力に後退し、一層、サルビーニ伊副首相の「同盟」の力が強くなる公算です。同氏は、前週、雇用創出のためならEUの財政規律を破り公的債務を増やす可能性があると発言したことでユーロ売りを演出したように、今後のイタリアは、移民排斥や財政悪化懸念などを含め、「同盟」の台頭には国内外で様々な危うさが浮上する可能性がありそうです。

ユーロについては、「同盟」の躍進の他に、イタリアの財政赤字問題が再びクローズアップされています。一部報道では、「欧州委員会はイタリアの過剰財政赤字を巡って報告書を作成し、財務相理事会に勧告を出すことを検討。約40億ドルの課徴金につながる可能性がある」と指摘しており、この報道を受け、独10年債利回りが約2年8カ月ぶりの低水準となったことも、昨日のユーロ売りを牽引しました。ユーロドルは、一時1.11873ドルまで下値を拡大しており、イタリアが今後のユーロを占う意味でも非常に重要な立ち位置になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

トランプ大統領が「8月に日本との貿易に関して何か発表する」と発言したことにより、7月の参議院選挙までは、日米通商協議は開催されず、8月に通商協議が再開される見通しです。ただ、2020年11月の米大統領選挙でのトランプ米大統領の再選に向けて、何かしらのリクエストが出てくることはほぼ確実視されており、米国への自動車輸出のみならず、農産物や牛肉の輸入などにも言及するようなことがあれば、ドル売り円買いの動きへと発展する見通しです。

未だ発表されていない米財務省の為替報告書ですが、本日麻生財務相が「為替条項などの話が出たということはない」と発言しており、通商協議に合わせて発表される見通しの為替報告書への警戒感が後退しています。ただ、上述しているようにイタリアがユーロ売りの震源地となりそうなことや、英国のEU離脱問題など、日米以外でのイベントが今後はマーケットの中心になりそうです。

イタリアのサルビーニ伊副首相は、欧州議会選で勝利したことについて、減税推進やEUの財政規律修正に向け負託を受けたとの認識を示し、EUの書簡に不安と失業の時代は終わったと答えると発言するなど、財政悪化懸念のある状況からは乖離する内容がクローズアップされています。実際に課徴金(制裁金)が課されるようになれば、ユーロドルなどは、1.11ドル後半でサポートされているものの、1.11ドル前半まではユーロ売りに繋がりそうです。

そろそろRBAの利下げを織り込む動きへ

豪ドル円については、引き続き、テクニカル的には76.30円の上値目途で抑えられ、ファンダメンタルズ的にはこれから6月の利下げを織り込む動きを見せるとの思惑もあり、引き続いショート戦略継続です。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。

海外時間からの流れ

本日の東京時間では、麻生財務相から「2年前からトランプ米大統領から為替の話が出たことはない」「為替条項などの話が出たということはない」との発言により、ドル買い円売りの動きが出ています。日米通商協議のメイントピックスである為替条項の話題を、麻生財務相自ら日米通商協議の不安材料を払拭したことから、市場にはリスクテイクへの安心感が出ています。同財務相の発言への否定的なコメントが出てこない限りは、目先リスク選好の動きが強まりそうです。

今日の予定

本日は、米・5月CB消費者信頼感指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。