前日については、イタリアの財政赤字を巡り、EUの欧州委員会が課徴金を命じる可能性があるとの報道がきっかけとなり、ユーロ安が主導しました。モスコビシ欧州委員が「イタリアに対する制裁を支持しない」と発言することで一時ユーロドルが1.11981ドルまで回復する場面もありましたが、同盟党首であるサルビーニ伊副首相が「EUが30億ユーロの課徴金をイタリアに課すのならば、その古びた財政規律に全力で戦う」と再びユーロ安を牽引する発言を行うなど、イタリアがEUの火種となっています。問題が長期化する恐れもあるため、ユーロについては、当面上値の重い地合いが継続しそうです。
米財務省が、ようやく為替報告書を発表しました。内容としては為替操作国の認定はなし、監視リストとして中国や日本、ドイツ、韓国、シンガポールなどを挙げています。公表直後はドル安に傾きましたが、ほぼ想定の範囲内の内容であることもあり、その後は買い戻しが入り、結果的にはリスクイベントには発展しませんでした。ただ、訪日中のトランプ大統領は米中通商協議に関し、「我々は合意を受け入れる準備があるものの、中国にはそうした準備が整っていないようだ。しかし、将来的には中国とのディールを期待している」と発言しており、米中貿易戦争の長期化が想定されるため、引き続きリスク選好の動きにはなりづらい状況になりそうです。
欧州議会選挙では、EU懐疑派の政党は議席を伸ばしたものの、三分の一程度の議席数におさまり、EUの政治的システムを壊すほどの支持は得られませんでした。それでもユーロ売りが加速している要因としては、発言するたびにユーロが売られるサルビーニ伊副首相と、議会がクルツ内閣に対する不信任案を可決したオーストリアが要因として考えられそうです。EUの二大政党である中道右派の欧州人民党と中道左派の欧州社会・進歩同盟が過半数を割り込んだこともあり、新たな連携が必至となっていることから、今後の人事次第ではさらにユーロ売りが強まる可能性があります。
今後の見通し
中国の環球時報が、「中国はレアアースの対米輸出制限を真剣に検討している」との報道をしたことにより、米国と中国の関係悪化が懸念されています。レアアースについては、米国は中国に約80%依存しており、禁輸措置となれば、米国のハイテク産業には大ダメージとなります。中国国民が米国が中国のレアアースで作った製品を中国の抑制に使うことを許さないだろうとの論調で指摘しており、米中通商協議の合意がまた遠のく形になっており、株売り主導でドル円を筆頭としたクロス円などは、下値を模索する展開になりそうです。
日米通商協議については、トランプ大統領が7月の参議院選挙後、8月に農産物・牛肉に関する合意の可能性を示唆しました。この発言により、8月の日米通商協議では、日本側が大幅譲歩をするのではないかとの憶測が流れており、こちらもリスク回避の動きを助長しそうです。また、トランプ大統領は、消費増税は、消費税輸出戻し税による輸出企業への補助金と見なしていることもあり、延期される可能性も指摘されており、こちらの報道にも気を付けたいところです。
豪10年債利回りがRBAの現行政策金利1.50%を下回ってきた
豪10年債利回りがRBAの現行政策金利1.50%を下回ってきており、早々の利下げがほぼコンセンサスになってきています。また、ここにきて米中貿易戦争の長期化も現実味を帯びてきており、豪ドルについては、上値の重い地合いが当面継続する見通しです。テクニカル的には76.30円の上値目途で抑えられていることもあり、引き続いショート戦略継続です。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。
海外時間からの流れ
第2次ラマポーザ政権の組閣の遅れ、巨額負債を抱えている国営電力会社エスコムのCEO辞任が、南アランド売りに拍車をかけています。国営電力会社エスコムの問題解決が、これで一層遅れるだろうとの思惑がランド売りを強めているものと考えられます。南アランド円については、前日7.436円まで値を崩しています。
今日の予定
本日は、独・雇用統計、加中銀(BOC)政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、レーン・フィンランド中銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。