決算シーズンの締めくくりとして小売業の第1四半期決算が報告されたが、結果は明るくなかった。デパートメントストア大手のノードストローム (NYSE:JWN)、 コールズ (NYSE:KSS)、そしてJ.C.ペニー (NYSE:JCP) らの決算は惨憺たる結果となり、米国消費者の趣向・消費行動の変化に対応できていないことが露呈した。

とはいえ、全ての小売業が壊滅的な結果となったわけではない。オンラインでアマゾン(NASDAQ:AMZN)に対抗できていることを示した勝者も少ないながら存在した。一方でそうした小売業の勝者達も、実店舗とオンライン販売の絶妙なバランスを見出すのに苦慮している。

全ての数字が出揃った今、セクター全体が不調にも関わらず好調な3社を以下で詳しく見ていく。

1. ターゲット:改革の効果あり

ターゲット(NYSE:TGT)は驚異的な2-4月期四半期決算を5月22日に発表した。28日の終値が80.77ドルであった同社株は、決算報告後に7.8%高となっている。

Target Daily Chart
(画像=Investing.com)

同社の2019年度第1四半期EPSは1.53ドルで、売上高は176億ドルとなり、共に予想を超える結果となった。

しかし最も市場を躍らせたKPIは既存店売上高の四半期成長で、予想の4.2%を上回り4.8%となった。8四半期連続で既存店売上高は増加しており、同社の店舗により多くの顧客が訪れ、より多くの買い物をしていることを確実に示している。

もう一つ期待が持てる指標として、同社Eコマース売上高が前四半期比42%の成長を見せていることである。同社のオンライン売上高は昨年全体の5.2%を占めるのみだったが、7.1%に増加しており、同社のデジタル成長戦略は功を奏している事が分かる。

CEOのブライアン・コーネル氏は「ターゲットの第1四半期パフォーマンスと市場シェアの獲得は、モデルが有効であることを示している」と述べ、「2019年とそれ以降において好調な財務数値を生み出せる状態にある」と付け加えた。

既に年初来22%高となっているものの、店舗・ウェブサイト・サプライチェーンの改革が功を奏しつつあることから更なる値上がりが期待できる。

2. ウォルマート:目覚ましいEコマースの成長

Eコマースの売上高の成長に大きく支えられ、ウォルマート (NYSE:WMT)は5月16日に報告した2-4月期四半期決算において、予想利益を上回った。同社のEコマース売上高は競合よりも速いペースで成長している。

Target Daily Chart
(画像=Investing.com)

ファッション小物と家庭用品の売上高の伸びと、生鮮食品の急激な伸びにより、同社の第1四半期のEコマース売上高は37%成長した。

Eコマースの目覚ましい成長により、同社のアマゾンとEコマース領域で戦うための戦略が実を結んでいることが分かる。

CEOのダグ・マクミロン氏は「我々はデジタル企業へと生まれ変わるべく変革を続けている」と述べた。

同社の米国の既存店売上高は3.4%増加し、過去9年間の第1四半期で最大の成長となっている。また、既存店売上高は4四半期連続で3%を上回る成長を見せている。

ウォルマートは今後も成長が期待されている。イノベーションとEコマースへの投資により、同社はオンライン市場で最も高い成長率を持つ小売業の老舗となっている。

以上を前提として、2019年に残る最大の脅威は更なる貿易関税で、アパレルと靴製品が最も打撃を受けるとされている。CFOのブレット・ビッグズ氏は「追加関税により、消費者が負担する価格が増す」と述べている。

同社株の29日終値は102.42ドルで、年初来10%高となっている。

3. TJXカンパニー: 市場シェア獲得により増益

T.J.マックス(T.J. Maxx)、マーシャルズ(Marshalls)、ホームグッズ(Home Goods)を運営しているオフプライスストアのTJXカンパニー(NYSE:TJX)は、5月21日に2-4月期決算を発表し、市場予測を上回る結果となった。同社は小売業の難局を他社よりも巧みに切り抜けている。

Walmart Daily Chart
(画像=Investing.com)

予想EPSが0.55ドル、予想売上高は92億2000万ドルのところ、EPSが0.57ドル、売上高は92億8000万ドルとわずかに上回った。既存店売上高は5%増で、予想の3.6%を優に超える結果となった。同社は競合他社から市場シェアを奪い続けている。

CEOのアーニー・ハーマン氏は「品質の高いブランド品などを買い求める市場の需要は高く、魅力的な商品を実店舗・オンライン店舗共に取り揃えている弊社は非常に有利な立ち位置にある」と述べ、「売上高とカスタマートラフィックを引き続き成長させる施策が数多くあり、今後も世界中で市場シェアを獲得していく自信がある」と付け加えた。

また同社は年間見通しを上方修正し、2020年2月1日までの年間希薄化EPSは、昨年の2.45ドルから成長し、2.56ドル~2.61ドルのレンジに収まると発表している。

それに応じ、第1四半期の18%増配を発表した。これにより、同社は23年連続で四半期配当を増配させることになる。同社は2019年1-3月期において、3億5000万ドルの自社株買いを実施している。また、同社株の配当利回りは1.78%となっている。

これら全てを勘案し、TJXカンパニーは力強いビジネスモデルを有していることから、高い競争力を引き続き有していると言える。

29日の同社株の終値は50.07ドルで、年初来12%高となっている。(提供:Investing.comより)

著者:ジェシー コーエン