祭祀財産と他の財産との違い

通常の遺産相続では財産の放棄が認められています。財産放棄をしたものでも、祭祀の承継者になる事は出来ます。また、他の財産と違い分配が妥当ではないと考えられ、1人の人が承継することが望ましいとされています。

その為、より慎重に承継者を選択する必要があるのです。ただし、承継したからと言って祭祀を行う事は義務ではないので、放置や処分をしても法的に処罰される事はありません。


祭祀財産にかかる税金について

祭祀財産は相続財産と違い、相続税の対象から除外となり課税対象から外されています。

損得の勘定なしの伝承財産なので、金銭面でメリット・デメリットがなく、祭祀を承継する事を理由に遺産の分割を多くしようとしても認められませんのでご注意下さい。

「りっぱな仏具や祭殿をやるから、土地をよこせ」という理屈は、通らない事になります。

「祭祀の主催には今後なにかとお金がかかるから」と相続財産分を増やす事もできません。

相続財産の中で、祭祀を除く財産に対して課税されます。


相続人との関係と義務

祭祀承継者の決定方法はどんなものがあるのでしょうか。

・被相続人から指定された人が祭祀を承継しますが、指定方法は「遺言」でなく「口頭」でも有効です。しかし、遺された家族の事を考えると遺言で明らかにされている方がトラブル回避になる事でしょう。

・相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りではありません。

・系譜や祭具、墳墓の所有権は習慣に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継しますが、被相続人の指定に従って祭祀を主宰すべき者がいる時は、その者に承継されます。

・被相続人の指定も観衆も不明な場合は、相続人間の合意で承継人を決める事や家庭裁判所の調停・審判で決められます。

家庭裁判所の審判で決める場合は、被相続人との身分関係や過去の生活関係や感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力・利害関係者の意見を総合して判断されることとされています。

ただし、承継したからと言って祭祀を行わなければ違法というわけではありません。

土地や建物を長男、祭祀財産を次男が承継してももちろん良いのですが、通常は家屋に備え付けられているような仏具やその土地にある先祖の墓などは土地や家屋の相続をするものが引き継ぐ事が、まだまだ日本の風潮としては一般的です。被相続人との関係では必ずしも法的相続人には限らず、親族関係がなくても、名字が違っていても構わない事になっています。場合によっては、嫁に行った娘が名義変更の手続き等をして祭祀承継をしてもいいのです。

また、祭祀を承継した人が離婚によって名字が変わった場合でも届け出による「定め直し」によって祭祀承継の継続をする事が出来ます。なかなかデリケートな問題ですが、やっぱり最後には引き継ぎたいと思っている者の「意思」によるところが大きいのです。承継するもしないも、主宰するも放置するもその承継した人の意思次第なのです。


祭祀財産の価値

祭祀財産の後継には相続の承認や放棄の規定がなく、承継の「辞退」は出来ないとされています。しかし祭祀承継者が受け継いだ後、その祭祀を営むかどうかは自由であり、義務とはされていません。

処分する事も可能ですが、先祖から受け継いだものなので引き続き営むのが好ましいですね。他の相続財産のように複数の相続人が分割してしまうと、あと後、法要などの祭祀を催す際に支障が出てくる恐れがあるので、1人の人が相続することが望ましいのです。

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