自分らしい人生の生き方、終わり方を考える人にとって「遺贈」は今後のキーワードとなりそうだ。特定非営利活動法人 国境なき医師団日本が2018年8月14日に発表した「『遺贈』に関する意識調査2018」によれば、70代の8割以上が「遺贈」を認知しており、全体の約5割に遺贈の意向があるとのことだ (調査対象は全国の20代~70代の男女1200名) 。
早めに遺言書の準備をすることの必要性を感じている人の割合は7割を超えており、高年齢層ほど遺言書の準備を自分ごとと捉えている傾向が強い。寄付には様々なタイプがあるが、NGO・NPO法人などの団体に、遺産の一部または全部を遺言で寄付をする「遺贈寄付」の注目度が高まっている。これは、いったいどのような寄付なのか ?
「遺贈寄付」とは ? 3つの手段を通じて遺産を寄付
そもそも「遺贈」とは、個人の死後に残した財産を、遺言によって特定の個人や団体に与える (寄付する) ことを指している。そして、①財産を遺す人が自らの意思を示して行う寄付、②相続する人の意思で行う相続財産 (遺産) の寄付、③生前に交わした信託契約に基づく寄付−−の3つを総称して「遺贈寄付」と呼ぶ。
①は財産を遺す人が存命中に自分の希望を遺言書に記しておき、他界後にその内容に基づいて指定のNPO法人や公益法人、学校法人といった非営利団体、国や地方公共団体などに寄付が行われるというものだ。これに対し、②は遺産を受け継ぐ側の意思によるものだが、手紙やエンディングノート、あるいは口頭といったように、遺言の効力を発揮しないかたちで託された故人の遺思を尊重して、相続人が遺産を寄付するというパターン。
残る③は、遺産のすべてか、その一部を公益法人等に寄付するという契約を交わし、存命中からそれらを信託財産として管理するものだ。契約の受託者として信託銀行などが管理を担い、寄付についても代行することになる。
寄付には税制上のメリットもある
これら3つのいずれかの手段を通じて「遺贈寄付」を行うと、税制上の恩恵も受けられる。国や地方公共団体、特定の公益法人、特定の公益信託に遺産を寄付した場合、それについては相続税の対象とならないという特例が設けられているのだ。
また、遺贈寄付以外でも、寄付をすることで所得税に関して控除が受けられる。認定NPO法人、特定公益増進法人 (公益社団・財団法人、社会福祉法人、学校法人、 更生保護法人など) に寄付を行うと、所得税の確定申告時に「寄付金控除」を利用できる。
寄付に充てた金額を自分の所得から差し引くことができるので、その分だけ所得税が減額されるのだ。また、それに伴って地方公共体に納める住民税も軽減される。
ただし、あくまでこの控除は所得税の納税者 (一定以上の収入がある人) を対象としたものだ。専業主婦、学生など、所得税の納税者とならないケースではこの控除を利用できない。
少子高齢化で税収が細る行政を「遺贈寄付」で後押し
日本総研の推測によれば、日本で1年間に相続される資産は37兆~63兆円に上るという (2012年8月20日「『政策観測』」レポートより) 。2017年度の国の税収総額は前期年度比6.0%増の58兆7,875億円だったが、それに近い、あるいはそれを凌ぐ規模の資産が相続により世代間で移転しているわけだ。
自らが築いた財はもちろん、先祖代々受け継いできた資産についても、子孫に託していくのは極めて真っ当な行為である。とはいえ、日本は先進国の中でも特に少子高齢化が進んでおり、働き手 (税金を納める人たち) が人口に占める割合が減ってきている。
社会的な課題が散在しているにもかかわらず、国や地方の財政事情で打てる手段が限られてくれば、それらの解決が進まない。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏をはじめとする資産家たちが慈善活動に熱心なのも、もはや行政だけに任せておくのでは、社会をよりよい状態に変えることに限界が生じていると考えているからかもしれない。
冒頭で紹介したように、国内でも遺贈の認知や意向を持つ人は年々増加傾向にあるようだ。国内ではまだまだ寄付文化をはじめとした慈善活動が根付いているとは言い難いが、今後広がっていく可能性は十分にあるだろう。(提供:大和ネクスト銀行)
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