iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)のメリットは所得税を節約しながら老後資金を貯められることだ。初心者でも扱いやすい商品がそろっているので、仕事で忙しいビジネスパーソンにこそ向いている。税金を払いすぎていると感じる高収入の人にもうってつけだ。
iDeCo(イデコ)最大のメリットは掛金が全額所得控除になること
iDeCoでは運用益や配当が非課税になるが、特に節税効果として大きいのは掛金が全額所得控除になることだ。所得税や住民税を計算する際に、個人の儲けである所得から差し引ける所得控除が大きいほど税金が安くなる。つみたてNISAも同じような税制優遇のある投資制度であり、運用益や配当はiDeCoと同じく非課税になるが、掛金は所得控除の対象にならない。
日本は累進課税を採用しているので、納税額全体に占める高所得者の負担が大きくなっている。一方で、年収が高くなるほど所得制限によって公的な支援制度を受けられないことが多く、不公平に感じている人もいるだろう。特に年収800万円~1,000万円あたりは所得制限による影響を受けるボーダーラインだ。たとえば児童手当は833万円、高校無償化は910万円から制限対象になる。
今後も税制の仕組みはそう簡単に変わらないと考えると、現在ある制度をうまく使って節税につなげるのが賢明だろう。iDeCoを活用すれば、所得税・住民税が軽減される上に公的年金プラスアルファの老後資金を形成するのにも役立つ。
iDeCo(イデコ)の節税メリットはどれくらいか
iDeCoは所得税を多く納めている人ほど大きな節税効果を発揮する。実際にどのくらいの節税額になるのか、拠出額を月額2万円と仮定して年収別にシミュレーションしてみよう。拠出期間は40歳から60歳までとする。(※iDeCo公式サイトでシミュレーション)
年収600万円の人がiDeCo(イデコ)を活用した場合
<1年間の節税額>
・所得税……2万4,000円
・住民税……2万4,000円
・節税額合計……4万8,000円
<20年間の節税額>
・所得税……48万円
・住民税……48万円
・節税額合計……96万円
・積立総額……480万円
年収1,000万円の人がiDeCo(イデコ)を活用した場合
<1年間の節税額>
・所得税……4万8,000円
・住民税……2万4,000円
・節税額合計……7万2,000円
<20年間の節税額>
・所得税……96万円
・住民税……48万円
・節税額合計……144万円
・積立総額……480万円
iDeCo(イデコ)は節税メリットを最大化できる高所得者ほど活用すべき
年収が600万円でも1,000万円でも、2万円を20年間貯めれば480万円になるのは同じだ。しかし節税額には大きな違いが出る。年収600万円なら年間で4万8,000円、60歳までに96万円の節税、年収1,000万円になると年間7万2,000円、60歳までに144万円の節税だ。その差は約50万円にもなる。
ふるさと納税でも同じことが言えるが、税制優遇は基本的に収入が多い人ほどお得になる。給料明細を見て所得税・住民税の負担が大きいと感じる人にはiDeCoの活用は意義があるだろう。
iDeCo(イデコ)の節税メリットを受けにくい人とは
誰にでも大きなメリットがありそうなiDeCoだが、基本的に所得税を納めていない人は節税効果の恩恵を十分に受けることができない。専業主婦や無職で所得税が非課税の場合は、iDeCoに加入はできるが所得税控除のメリットがないからだ。もちろん運用益に対する非課税効果はあり、受け取りの際に「公的年金等控除」または「退職所得控除」の対象にはなる。
住宅ローン控除で所得税が実質ゼロになっている場合も注意したい。住宅ローン控除は所得控除後の税額から直接差し引く税額控除である。住宅ローン控除額が所得税額よりも大きい場合は、iDeCoの所得控除によって逆に税金が高くなってしまうこともあるのだ。この場合は、住宅ローン控除の適用が終わるまでは無理をして加入しなくてもいいだろう。
気を付けたいiDeCo(イデコ)の3つの注意点
iDeCoにはメリットばかりではなく、以下のような制度上の注意点も存在する。
拠出額が限られる
公的保険の加入区分によって拠出できる掛金には上限が設けられている。会社員や公務員である第2号被保険者なら、月額1万2,000円(年額14万4,000円)、月額2万円(年額24万円)、月額2万3,000円(年額27万6,000円)のいずれかである。
企業年金が充実しているほど拠出可能額が小さくなる点に注意しよう。所得控除の対象となる掛金をできるだけ多くしたいと考えている人には物足りないかもしれない。
運用指示を出さないと勝手に商品を買われる
iDeCoでは原則として自分でどの商品をどの配分で運用するかを決める。運用方針を決めないまま最初の掛け金を入金して3ヵ月以上経つと金融機関から特定期間を過ぎたことの通知が来る。ここからさらに2週間以上の猶予期間を過ぎた場合、金融機関があらかじめ決めた「指定運用方法」の商品を勝手に買い付けられてしまう仕組みになっている。
指定運用方法の商品は元本確保型の定期預金の場合もあれば、値下がりリスクのある投資信託の場合もある。この制度は2018年5月1日に施行されたため、まだあまり周知されていないので覚えておきたい。
拠出期間が10年に満たない場合は受け取り開始が後ろ倒しになる
50代後半の人も注意が必要だ。iDeCoへの拠出は60歳までで、引き出しが可能になるのも60歳からだが、拠出期間が10年に満たない場合は受け取り開始が後ろ倒しになる。55歳から始めると63歳、57歳から始めると64歳になるまでおあずけだ。その間も口座管理手数料は発生してしまう。
iDeCo(イデコ)のメリットは高収入のビジネスパーソンほど実感できる
iDeCoは、金融機関が加入者に提示できる商品の本数が35本以内と定められているため、初心者にとっても難しい銘柄選びの負担が軽い。仕事で忙しいなど投資にそれほど手間をかけるつもりがなく、年収がそれなりに高いビジネスパーソンにこそ向いているのだ。
40代前後は教育費の捻出など何かにつけて支出の機会も多いが、iDeCoを活用して節税しながら私的年金の準備もしておきたい。ただしiDeCoはあくまでも投資であり、貯蓄ではないことは覚えておこう。
文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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