1989年に消費税が導入され、税率は当初の3%から5%、8%とこれまで順調に(?)増えてきました。2019年10月には10%になり、ついに2ケタに達します。2%の増税は、金額の大きい不動産の取引では、数百万円のコスト増になることもあります。しかし中にはあまり影響を受けない人、むしろ得する人もいます。

消費増税で影響を受ける取引

消費増税,人
(画像=Morakod1977/Shutterstock.com)

消費税は「広く公平に課税される」--。国税庁のパンフレットに、こう記載されています。日本で生産された商品のみならず、輸入したものにまでかかります。しかし実際のところ、全ての取引に消費税が課されるわけではありません。消費税法が「非課税」として挙げていたり、「課税対象」に該当しなかったりするものについては課税されないのです。

消費税法上、非課税取引とされているものの中に、「土地の譲渡、貸付け」「住宅の貸付」があります。

不動産取引において、特に複雑なのは土地付き建物の売買です。土地の譲渡は非課税取引ですが、建物は課税されます。

ただ、建物に課税されるのは不動産会社から購入したときだけです。個人間売買は課税対象ではありません。

同じ中古物件でも、不動産会社が仲介して個人から購入するか、不動産会社が所有する物件を買うかで消費税の扱いが異なるのです。基本的に物件概要書に記載されている取引態様が「売主」となっている場合には課税され、「仲介」「媒介」となっている場合には課税されません。ただ、仲介手数料には消費税がかかります。

中古物件を仲介で買う場合、物件価格自体には増税の影響がありません。しかし消費税込みの手数料が少し増えることになります。

賃貸物件を所有するオーナーの立場としてはどうでしょうか。住宅の貸付は非課税なので、基本的に受け取る家賃は変わりません。ただし管理手数料や、修繕費の施工代金などは増税の影響を受けます。収益が圧迫される可能性があるため、できれば家賃の値上げをしたいところです。

「便乗値上げ」は考えものですが、増税の影響で家賃相場が上がれば、結果オーライということになるかもしれません。

税制優遇が受けられるのは消費増税のおかげ

消費税率10%への増税に伴い、住宅を買う一部の人は、8%の時代よりも多くの税制優遇を受けることができます。ただし、ほとんどが自分で住むための家を対象にしており、賃貸物件に適用できるものは限られています。

目玉は住宅ローン減税です。控除できる期間が最大で10年間だったものが、3年延長して13年になります。ただし減税幅は最大で建物価格の2%です。

これだけでは得するとまではいえないのですが、メリットがあるのはこれだけではありません。次世代住宅ポイント制度では、一定の基準を満たした新築住宅の購入やリフォームなどをしたときにポイントが発行されます。手に入れたポイントは家電や食品などさまざまな商品と交換できます。リフォームは賃貸住宅にも適用でき、その場合の発行可能な最大のポイントは30万円分です。

他にも、すまい給付金が最大30万円から50万円に増額されたり、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠が1,200万円から3,000万円に拡大されたりと、住宅購入に関する優遇策があります。

住宅購入やリフォームについては、優遇策を活用することで、増税分をカバーすることができそうです。

消費税の還付は受けられるのか?

不動産投資では一時期、消費税の還付を受けるテクニックが流行しました。ある「仕掛け」をすることで、不動産会社に支払った建物代金の一部を、国から払い戻させようとするものです。

もし還付を受けることができるなら、消費増税後に活用すれば、大幅なメリットがありそうです。

しかし結論から述べると、還付を受けること年々、難しくなってきています。

理由は消費税法の度重なる改正により、よく使われていた「自動販売機スキーム」「金売買」などの手法をとることが難しくなったからです。

一昔前の書籍などで還付のスキームを知り、増税時に利用しようと考えた人もいるかもしれませんが、再考することをおすすめします。

優遇制度をうまく活用しよう

今回は、消費増税が不動産の取引に与える、前向きな影響にスポットを当てました。増税によって使える優遇策がいくつかあり、例えば次世代住宅ポイント制度では、所有する賃貸物件のリフォームでポイントがたまります。個人を売主とする不動産の売買では、仲介手数料に対する消費税が増えるものの、本体価格には影響がありません。制度の仕組みをよく知り、実生活や投資に活かしましょう。(提供:YANUSY

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