キャッシュレス先進国の中国では、2大モバイル決済サービス、アリペイとWeChat Pay(微信支付)が、壮絶な顧客争奪戦を展開しています。中国eコマースの巨匠、アリババと、メッセンジャー・アプリ・プロバイダー、テンセントが火付け役のキャッシュレス戦争は、今後もさらに過熱していくでしょう。中国のスマホペイ市場に刺激を受けたのか、日本のスマホペイ市場も急速に拡大基調にあります。

中国のサードパーティ・モバイル決済市場が472億元規模に

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(写真=J.Score Style編集部)

中国の電子決済市場は長年にわたり、Union Pay(中国銀聯)が独占していました。発行元の中国銀聯は2002年、中国政府が電子決済の促進を意図に、中国人民銀行を中心に設立した銀行間決済ネットワークです。2016年には、世界総売上高でVISAやマスターカードなど並み居る国際ブランドを抑え、「世界一のクレジットカード・ブランド」の座に輝きました。

しかし、こうしたUnion Payの独走も、モバイルデバイスの普及とともに大きく変貌を遂げています。インターネット・データ分析プロバイダー、Analysys(易观)の調査によると、中国における2018年第4四半期のサードパーティ決済モバイル決済市場の取引規模は、472億元を突破しました。そのうち92.65%を占める2大モバイル決済サービスが、アリペイと WeChat Payです。

中国でモバイル決済の需要が劇的に伸びた背景には、「ネットショッピング市場の拡大」に加え、「消費者の現金に対する不信感」や「クレジットカードの普及率の低さ」などがあります。

アリペイVS WeChatPay の歴史

アリペイ(支付宝)

アリペイのユーザー数は2019年1月時点で約10億人。国内「モバイル決済市場シェアの53.78%を占めている」というのも納得です。アリペイのサービスは2004年、アリババ(阿里巴巴集団)傘下のショッピングサイト、タオバオ(淘宝網)の決済法としてスタートしました。

当時は欧米最大のネットオークションサイト、eBayが、「中国版eBay」といわれたEachnet.comを買収した直後だったことから、タオバオにとって大きな脅威と見なしたものといわれています。当時のタオバオは、「セーラー(販売者)とバイヤー(購入者)間の信頼関係の構築」という課題を抱えていました。そこで、購入者が支払ったお金を、一時的に保持するためのサードパーティー(第三者)として、アリペイを導入したのです。

アリペイのシステムは、購入者が製品を受けとり、問題がないことを確認するまで、代金は販売者の手にわたらないという仕組みになります。アリペイは、タオバオのプラットフォームで飛躍的な成長を遂げ、アリババのエコシステム以外のプラットフォームでも使用されるようになりました。

WeChatPay

「強力なライバル」とされるWeChatPayは、中国最大のチャットサービス、WeChatの決済法です。WeChat は、インスタントメッセンジャー「QQ」を開発したテンセント(騰訊公司)が、2010年にサービスを開始した、スマホ特化型のメッセンジャー・アプリです。今日では、単なるメッセンジャーから、10億人を超えるユーザー数を誇る(Statista2018年第4四半期データ)、巨大SNSプラットフォームへと進化を遂げました。

バージョン5.0 へのアップデートとともに、WeChatPayが登場したのは2013年のことです。当初は決済の対象が、P2P転送とアプリ内の購入のみに限定されていましたが、その後市場の需要に見合った機能を拡張し、さまざまな分野でアリペイとの競合が始まりました。アリペイから、ほぼ10年遅れで登場したにも関わらず、WeChatPayの市場シェアは国内モバイル決済市場2位です。また、2018年第4四半期の時点でのシェア率は38.87%と、アリペイを着実に追い上げています。

アリペイがショッピングサイトのユーザーを取り込んで市場シェアを拡大したのに対し、WeChatPayはSNSプラットフォームのユーザーをターゲットにし、史上空前の大成功を収めたというわけです。

日本のモバイルキャッシュレス市場はどうなるか?

近隣国である日本は、モバイル決済で世界に出遅れた感が否めませんでした。しかし、ApplePayやGooglePay、LINEPay、PayPalといった海外モバイル決済から、PayPay、楽天ペイ、d払いなど国内のモバイル決済まで、スマホを利用したQR決済やバーコード決済などが急速に拡大しています。ICT総研は、2019年1月に「モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」を発表しました。

その内容によると、2017年度末には893万人だったスマホアプリの電子マネー利用者が、2018年度末に1,157万人に増え、2021年度末には1,953万人に達すると予想しています。またQRコードの利用者は、2017年度末の187万人から2019年度には960万人に、2021年度末には1,880万人に急増するとの見込みです。

特にQRコード決済は導入コストを低く抑えられ、中国人観光客に対応しやすいとのメリットもあるため、国内の取り扱い店舗が急増しています。スマホペイの拡大により、日本でも国内・国外のモバイル決済企業間で、顧客争奪戦が激化することが予想されます。

日本でも活性化してきたキャッシュレス市場について、今後も注目です。(提供:J.Score Style

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