シンガポールの19年5月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比17.9%減(前月:同12.7%減)とマイナス幅が拡大した。輸出の伸び率は、昨年から主力の電子製品の低迷が続き、昨年末頃からは石油化学製品の減少が顕著になるなど全体的な輸出不振が続いている。なお、総輸出額は前年同月比5.6%減(前月:同3.5%減)と減少幅が拡大、総輸入額は同2.8%減(前月:同4.4%増)と再びマイナスとなった。結果として、貿易収支は29.5億ドルの黒字となり、前月から7.8億ドル黒字が拡大した(図表11)。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同32.9%減(前月:同18.8%減)と、6ヵ月連続のマイナスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同41.1%減)をはじめ、PC部品(同8.1%減)、ダイオード・トランジスタ(同10.7%減)が低迷したほか、PC(同15.3%減)も二ヵ月ぶりのマイナスとなった。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同5.1%増(前月:同23.8%減)とプラスに転じた。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同16.7%減(前月:同16.1%減)が低迷したものの、医薬品が同25.5%増(前月:同48.1%減)と3ヵ月ぶりのプラスとなった。
フィリピンの19年5月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.0%増と、前月(同1.0%増)から横ばいとなった。輸出の伸び率は昨年主力の電子製品を中心に緩やかな増加傾向が続いた後、12月から電子製品が鈍化して4カ月連続で減少していたが、4-5月は電子機器と農産品の出荷が増加して小幅のプラスとなった。一方、輸入額は前年同月比5.4%減(前月:同1.9%減)と低下した。結果として、貿易収支は32.7億ドルの赤字となり、前月から1.9億ドル赤字が縮小した(図表13)。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同6.2%増(前月:同2.9%増)と上昇し、2ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同3.6%増)が鈍化したものの、主力の半導体デバイス(同6.7%増)が拡大したほか、家電製品(同29.8%増)が2ヵ月ぶりのプラスとなった。その他9品目は総じて増加した品目が多かった。銅精鉱(同192.1%増)とイグニッション・ワイヤーセット(同31.7%増)、生鮮バナナ(同28.6%増)、化学(同20.1%増)、金属部品(同14.0%増)、金(同8.3%増)、その他鉱産物(同7.0%増)が増加する一方、機械・輸送用機器(同59.2%減)とその他製造品(同5.4%減)が減少した。
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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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