人間に残される仕事は「この5つ」だ
人間がAIや機械よりも優位を保てる仕事について、トーマス・ダベンポートらは著書の中で、5つの分類を提唱しています。
1.ステップ・アップ
機械(コンピュータ)がどれだけ発達しようとも、それらは基本的に高性能の計算機にすぎず、やはり人間が命令を下したり、その前提となる課題設定を行う必要があります。ステップ・アップは、このように機械によって構成されるシステムをより高次の視点から見て、その評価をしたり、応用・拡大などの意思決定を行う仕事です。
大局観が必要とされ、また自分自身がプログラマーでなくとも、コンピュータシステム全般に関心があり、また改革志向であることが望ましいとされます。必ずしも求められる人数は多くはありませんが、これからの時代に非常に重要な位置づけの仕事と言えます。
2.ステップ・アサイド
機械が苦手としている「人間らしい」仕事です。その代表としては、相手の微妙な感情を読み取る仕事や、非常に細かな気配りや手作業での微調整などが必要な仕事、クリエイティブな創作が求められる仕事などがあります。たとえば看護師や介護師などは相手の感情を読み取って気を配ることに加え、状況に応じた細かな作業を必要とするため、機械がこれを置き替えることは難しいでしょう。
また、小説やドラマの脚本、オーケストラの音楽や絵画などは、ビッグデータがあれば機械でも学習により「それらしいレベルのもの」は作れるかもしれませんが、真に多くの人の共感を呼ぶものを機械が生み出すのは容易ではありません。この仕事はニーズも大きく、機械化が進んでも数多く残るものと考えられます。
3.ステップ・イン
新しい技術とビジネスをつなぐ仕事です。いつの時代にも、新しい技術が生まれれば、それをビジネスにつなぎ、価値に転換する人間が必要になります。たとえば新しいコミュニケーション・テクノロジーが生まれれば、それをどのように活用すべきかを考える人間が必要になります。これがステップ・インの仕事です。
最初に紹介したステップ・アップが、管理職がメインで担う仕事であるのに対し、ステップ・インは現場の人間や起業家などが担うことが多いとされます。特に、テクノロジーの活用に積極的な企業では、このタイプの人間が必須です。単に自分で機械の活用方法を考えるだけではなく、それを周りの人に説明できる能力も必要とされます。
4.ステップ・ナロウリー
機械に任せるにはコストが見合わない仕事です。典型的な事例としては、少数の人間しか知らない専門的な仕事(科学者や、ある種の料理人、希少動物の飼育係など)、形式知化・体系化されたデータがあまりない仕事(職人、香水の調合師など)、ニッチビジネスの個人事業主などが当てはまります。
長年その仕事を追求してきた「匠」的な仕事とも言えます。機械がパワーを発揮するには過去のデータの蓄積が多い方が有利なのですが、それが構造的に増えにくい仕事とも言えます。
5.ステップ・フォワード
新しいシステムを生み出す仕事です。具体的には、IT専門家、データ・サイエンティスト、研究者、マーケター、ITコンサルタントなどが該当します。これらの仕事は専門知識を必要とするため容易になれるわけではありませんが、これからのIT時代においては非常にニーズの高い仕事です。
こうした仕事に就くためには、大学での勉強や実務を通して、STEM(科学、技術、エンジニアリング、数学)の知識を備えたり、アルゴリズムやプログラミングに精通することが必要となります。
これら5つの分類はあくまで予測ですので、実際にこの通りに世の中が変化するかどうかは分かりませんし、それぞれの仕事が残っていく比率や、変化が起きるタイミングなども異なるでしょう。しかし、これらを理解しておくことが、今後良きキャリアを構築していく上で、非常に重要なのは間違いなさそうです。
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