イタリアのルネサンスを語る上で、メディチ家の存在は欠かせません。古代ギリシャやローマの文化を復興しようとして西暦1400~1500年ごろにイタリア・フィレンツェで起こったルネサンス。芸術分野において大きな功績を残したこの文化運動の中心にいたのがメディチ家でした。

ルネサンスの礎を築いた「メディチ家」

アイディアは交差点から生まれる,イノベーションプラットフォーム
(写真=J.Score Style編集部)

1434年にフィレンツェの実権を握り、数多くの芸術家のパトロンとなったコジモ・デ・メディチ氏。

別荘を改装して「プラトン・アカデミー」を設立し、古代ギリシャの哲学者プラトンが作ったアカデメイアの再興を目指して日々哲学について議論を交わしたと言われています。

また、メディチ・リッカルディ宮殿やサン・ロレンツォ教会など今なお残る歴史的建造物も多く残しています。古代ギリシャの文化を復興させるべく芸術や文化の保護を行うメディチ家には、芸術家をはじめ建築家や科学者、金融業者など、さまざまな文化人が集まり、ルネサンスの礎を築いたとされています。

メディチ・エフェクトとは

フランス・ヨハンソン著「アイデアは交差点から生まれる」では、メディチ家が起こしたイノベーションをメディチ・エフェクトと呼び、メディチ家が生み出した情報が交差する場を交差点と称しています。

さまざまな業種の人々が集まるこの交差点では、業種の垣根を越え、固定概念を覆す新たなアイディアが続々と生まれていきました。これこそが新たなイノベーションを起こす原点になると著者は語ります。

また、このメディチ・エフェクトでは、イノベーションはこれから自分たちの手でも起こすことができると説明しています。メディチ・エフェクトは異なる分野の情報をかけ合わせることによって生まれるアイディアを重要視します。

もし、あなたがこれから新たな事業を生み出したい、これまでにないアイディアを出して世の中のために実現したいと考えるのなら、自分の取り組む方向性とは別の分野の人との交流を深めるのも一案です。新たな切り口や考え方を得られる可能性があります。

イノベーションを起こす方法

メディチ家がルネサンスを起こしたのは今から500年以上も前のことです。時代が大きく様変わりした今、メディチ・エフェクト同様のイノベーションを起こすためには当時と異なるアプローチをする必要があります。

多種多様な人々が集まるメディチ家の状態を想像してみると、現代のインターネットの中に通ずるものがあります。現代では、ルネサンス時代とは異なり、あらゆる国境や垣根を越えてインターネット上で容易に「交差点(プラットフォーム)」を作ることができるのです。

現代アートの分野で動画サイトのYouTubeというプラットフォーム上で自分の作品を配信し、多くの人の共感を得て、現代アーティストとしての道筋を掴んだ人もいれば、音楽サブスクリプションサービスSpotifyで自分たちの楽曲を配信し、国内より先に海外で人気を博すアーティストもたくさんいます。それだけではなく、芸術家とビジネスパーソン、芸能人とビジネスパーソンが一緒に事業を興す場面も見受けられます。

SNS、コミュニティ、ネットサロンなどを活用し、新たなイノベーションを巻き起こす種や切り口を持つようにしましょう。ここで作った場は、リアルな社会とつながることでさらなる効果を発揮します。インターネット上では薄かったつながりも、オフラインでの付き合いをすることで深い関わりができるようになります。

大切なのは自分の凝り固まった意識を壊すことです。インターネットによって利用できる情報が増えても、それを取捨選択しているのは自分自身ですから、固定概念があればつい同じような情報ばかりを取りがちです。ネットとリアルを行き来しながら、異なる情報が集まる場に出かけて新しい考え方と触れ合い、取り入れることが大切だといえます。

振り返ればメディチ家のルネサンスの時代は、インターネットが存在せず、情報は伝聞や対面で手に入れるものでした。そのため、ひとつひとつの情報伝達が遅く、調べるのにも時間がかかり、新たなイノベーションが起きるのにもその分時間がかかりました。

ただ、リアルで会い、対話を重ねた結果のイノベーションです。時代を超えて今もなお、人々から愛される要因は、そういった交流と互いの考えを認め、刺激しあい、新たな切り口を思考し実行したパワーなのかもしれません。インターネットが存在しなかった時代でもそういったイノベーションを起こせるのですから、現代はさらなるものが創造できるはずなのです。

イノベーションを起こし続けるために必要なのは共感力

例えば「牛肉を調理して食べよう」と考えたとき、自分と異なる文化で育ち、食生活にも共通性がない人がいたとします。その人は「牛肉にチョコレートをかけるとおいしくなる」といい、チョコレートをかけてしまいました。ここで、あなたの中の思考バリアが働くと「これは食べられない」と判断し拒否するでしょう。

これは心理学でいう連想の連鎖が働いた結果として起きる事象です。牛肉は焼いて塩をかけるとおいしい、しかしチョコレートは甘い、チョコレートをかけると牛肉は甘くなる、甘い牛肉はおいしくない、といったように、得た情報から連想したに過ぎない、知りもしない結果にたどり着いてしまいます。

連想の連鎖から起こる思考のバリアを外すことによって、新しいアイディアを生んで形にできるだけでなく、生き方すらも変わってきます。多様性を受け入れ、共感することで、これまで自分が想像できなかったところに着地できるようになるでしょう。

今の生活やビジネス、人間関係に行き詰まりを感じているなら、情報の交差点に立ち多様な意見を受け入れて、自分を中心としたメディチ・エフェクトを起こしてみてはいかがでしょうか。(提供:J.Score Style

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