多くの資産を持つ富裕層にとって大切なのが、「ノブレス・オブリージュ」という考え方です。欧米諸国では昔から浸透している概念ですが、日本ではまだまだ知らない人も多く、なじみの薄い言葉です。今回は、世界のトップ富裕層に備わっているノブレス・オブリージュという概念について解説していきます。

ノブレス・オブリージュとは

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(画像=Jirsak/Shutterstock.com)

「ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige)」は、フランス語の「貴族(Noblesse)」と「義務を負わせる(Obliger)」から誕生した言葉です。この言葉には、財産や権力など社会的地位を有する者は、それ相応の社会的または道義的義務を負わなければならない、という意味があります。多くの富を持つ者から貧困層への富の分配、貴族や富裕層による社会貢献活動が、果たすべき義務ということです。

欧米では一般的な道徳観で、ノブレス・オブリージュ自体に法的責任はありません。しかし、ノブレス・オブリージュに則って行動しない富裕層は、社会的な批判にさらされる、あるいは倫理観や人格を問われることもあります。自己だけではなく他人のために行動できること、社会的模範としてふるまうことが、社会的地位のある人に求められる人物像といえるでしょう。

ノブレス・オブリージュの歴史

ノブレス・オブリージュという言葉は、1808年、イギリスとの紛争下でフランスの政治家ガストン・ピエール・マルクがつくった言葉とされています。

19世紀に誕生したノブレス・オブリージュという概念が欧米に浸透するきっかけはイギリスにあります。貴族制度が古くから根付いていたイギリスにおいて、上流階級に位置する者には、さまざまな特権が付与されていました。しかし、それと引き換えに彼らには、戦争が勃発した際、最前線で身体を張って戦う義務も負わされていたのです。事実、1914年に開戦した第一次世界大戦において、貴族の子息らは自ら戦地へと赴き、先頭に立って敵国と戦いました。

有名人たちの社会貢献

ノブレス・オブリージュという概念が生まれてから現代まで、多くの著名人がこの考えを行動に移してきました。

なかでも高く評価されているのは、アメリカ合衆国第35代大統領である故ジョン・F・ケネディの太平洋戦争での行動です。当時、ケネディが艇長として指揮を執っていた魚雷艇が攻撃を受けて撃沈した際、自ら部下たちの救助にあたったとされています。

マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏は、2010年6月、アメリカの投資家ウォーレン・バフェット氏とともに慈善プロジェクト「The Giving Pledge」を設立しています。教育や保健など、現代社会の問題解決のために財産の半分以上を慈善団体へと寄付するよう、アメリカの資産家に対して直接訴えかけました。このプロジェクトには、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏、映画監督のジョージ・ルーカス氏、Facebook創始者のマーク・ザッカーバーグ氏など多くの著名人が参加しています。

カンボジア、エチオピア、ベトナムから1人ずつ養子を迎えて育てているのは、「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)」の親善大使であるアンジェリーナ・ジョリー氏です。難民支援のための基金を立ち上げ、また子どもたちへの教育、医療、法律などの支援も行っています。

富裕層と社会貢献は切っても切り離せない関係に

資産家は、莫大な富を自らのために使うのではなく、他者に分配して社会に貢献する。そのノブレス・オブリージュの概念を実践することで、社会がより良い方向に向かうことはもちろん、その人自身の社会的価値が高まるといっても過言ではないでしょう。ノブレス・オブリージュを示すため、富裕層はさらに社会に目を向けていく必要がありそうです。(提供:JPRIME


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