事業承継後の会社の成長に大きく影響する後継者育成にどう取り組めばよいか、と悩んでいる中小企業のオーナーは少なくないはずです。この記事では「社内教育」と「社外教育」という2つの視点から、跡継ぎを育てるために効果的な取り組みを解説していきます。

社内教育で有効な3つのパターン

中小企業,後継者育成
(写真=PIXTA)

後継者候補への社内教育は、次の3つの段階を踏んで行われることが一般的です。

各部門のローテーション

後継者が勤務する部署を一定期間ごとに変えることで、会社で取り組まれていることの細部について広範な知識と経験を得ることが可能です。また、多くの社員との信頼関係や一体感などを築いていくことにもつながります。経営者になればマクロ的な視点で業務に当たる時間が増えていき、現場部門との接点が少なくなることも考えられます。そのためにも、事業承継前にこうした期間を設けることは非常に重要です。

責任ある地位につける

後継者を各部署の責任者や役員にすることで、「決断力」や「リーダーシップ」、「判断力」などを養うことが可能です。会社の中枢を担う立場になれば、事業全体に関する理解も深まっていき、自らの決定により責任感を持てるようにもなっていくでしょう。一方で、責任ある地位につくことから高い業務遂行能力なども求められていくため、適切なケアも必要とされます。

現経営者による直接指導

企業のトップは基本的にはたった1人で、事業の全ての責任を負っています。こうした立場から経営者としての心構えや経営術を伝えられるのは現オーナーだけです。自社の財務状況や中長期的な事業計画、業界や市場の動向などの情報を細かく伝えるよう努めることが、会社の旗振り役として耐えうる知識やノウハウを後継者に持たせることにつながります。

社外教育は他社勤務とセミナーなどを活用する

後継者の社外教育は次の2つの方法で取り組むことが一般的です。

他社での勤務経験

経営者は事業環境や市場の変化に柔軟に対応していく必要があるため、より幅広い経験や見識が求められることは言うまでもありません。こうした能力を育てるためには、自らが引き継ぐ会社以外で多様な経験を積み、さまざまな企業文化や考え方に触れておくことが重要です。他社で働くことで自社を客観視することも可能になってきます。

セミナーなどへの参加

後継者に対する社内教育などに取り組みながら、経営ノウハウや市場動向について学ぶセミナーや研修などに参加させることも有益です。こうしたセミナーは商工会や商工会議所、金融機関、業界団体、同業組合などが主催しており、参加者や講師などとの交流を通じて人脈を広げることにもつながります。業種領域によっては海外の視察ツアーなどに参加させることもより広く、そして最先端の知識をつけさせる上で良い取り組みとなるでしょう。

場当たり的な対応は厳禁

事業承継は狭義では後継者に事業を引き継ぐことを意味していますが、会社の将来性や後継者のことを考えるのであれば、現オーナーが引退したあとのことまでを見据えて取り組むべきです。そのための肝となるのが後継者育成です。場当たり的な対応は避けて然るべきです。

また後継者教育を始める前、そして取り組んでいる最中にも後継者候補との対話を疎かにしないようにしましょう。後継者が会社を引き継ぐことについてどう思っているのかなどを把握し、場合によっては育成計画を修正する必要も出てくるでしょう。

後継者の育成には早期から取り組んでおくことも重要です。中小企業の後継者育成では、5〜10年程度掛かるのが一般的だと言われています。専門的な技術の継承なども必要とされる場合には10年以上を後継者育成に費やす必要があるケースもあるでしょう。そのため、現オーナーの引退時期などを含めた事業承継の計画書をきちんと作成して取り組む必要があります。(提供:企業オーナーonline

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