2019年7月に2019年度の年次経済財政報告(経済財政白書:以下白書)を内閣府が公表しました。人手不足が45年ぶりの高水準であるとし、女性や高齢者、外国人材の活用の必要性を指摘しています。経営者の舵取りに少なからず影響を及ぼす内容です。
人材不足の傾向
白書では、第2次安倍政権が誕生した2012年12月以降、景気回復とともに企業収益が高水準で推移し、雇用環境が改善してきたことを振り返っています。有効求人倍率は2012年12月には0.82倍でしたが、2019年5月には1.62倍まで上昇し、45年ぶりの高水準となりました。生産年齢人口も減少する中、企業では人手不足感が高まっています。
こうした中で生産性を向上し、経済成長を維持するうえで女性や高齢者、外国人材を含めて多様な人材を確保および活用することが必要です。
日本的雇用慣行の見直しが必要
白書は、多様な人材の活躍、イノベーションや生産性向上が求められる現在、長期雇用や年功序列に基づく賃金体系を特徴とする「日本的雇用慣行」を見直す必要性があると訴えています。この慣行が女性や外国人などの活躍に向けて弊害となっている可能性が高いとのことです。例えば女性正社員が30%以上を占める企業は、日本的雇用慣行が弱い企業で約4割に達しています。
一方慣行の強い企業では約14%にとどまりました。内部の人材登用や年功的な評価を重視する慣行が残るほど、出産や育児などで女性に不利に働く可能性があるほか、専門性の高い外国人材などの外部の優秀な人材が活躍できないといった問題がみられます。さらに日本的雇用慣行の問題点として、企業内のみの訓練や職業経験でキャリアを積んだ従業員は創造的な仕事を苦手とする傾向です。
画期的なアイデアやイノベーションが必要とされる業務に適さないことが挙げられています。また年功序列制度は、現在のように技術進歩が速くスキルが陳腐化しやすい環境下では合理的ではないとしています。
性別や国籍などの多様性は生産性の向上につながる
性別や国籍など人材の多様性を高めることが企業にとってメリットになることも明らかになりました。多様性が増加した企業では、そうでない企業に比べて、生産性が高まる傾向があるとのことです。新たなアイデアの創出や技術革新につながり、少ない人材で成果を上げられるようになる可能性もあると説明しています。
一方、人材の多様性が増加しただけで多様な人材の活躍に向けた取り組みを行っていない企業では、多様性の増加が生産性に対してマイナスの影響を与えている可能性が高いという側面もあるようです。
多様な人材を生かす働き方や雇用制度の見直し
白書では、多様な人材の活躍を促進していくために、制度的な見直しが必要だとしています。そうした中、企業が実施している取り組みには、柔軟な働き方の実施、ワークライフバランスの促進、評価制度の見直し、教育訓練制度の強化、管理職に対するマネージメント研修の強化などがあります。特に働く時間や場所に関して柔軟な働き方を導入することは重要です。
女性や高齢者、外国人材、中途採用者、限定正社員など幅広く多様な人材の活用に寄与すると考えられ、ワークライフバランスの改善や人事評価制度の見直しも女性の活躍や限定正社員の活躍を促します。また多様な人材を確保するためには、採用についてもより柔軟にしていくことが求められ、新卒の一括採用を中心にしたやり方を見直す必要があると白書は説明しているのです。
通年採用の導入状況の調査結果によると、「導入済み」「導入を検討中」という企業が半数を超えることから、今後新卒の通年採用がより一般的になっていくことが考えられるとしています。ただし、3割は導入の予定がないとしており、通年採用の普及はまだ途上にあるようです。(提供:JPRIME)
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