輸出数量(前年比)が再びマイナスに

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財務省が9月18日に公表した貿易統計によると、19年8月の貿易収支は▲1,363億円の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲3,463億円、当社予想も▲3,463億円)を上回る結果となった。輸出入ともに前月から減少幅が大きく拡大したが、輸入の減少幅(7月:前年比▲1.2%→8月:同▲12.0%)が輸出の減少幅(7月:前年比▲1.5%→8月:同▲8.2%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ3,118億円の改善となった。既往の原油安に伴う輸入価格の下落によって輸入金額が輸出金額以上に落ち込んだ。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲6.0%(7月:同1.6%)、輸出価格が前年比▲2.4%(7月:同▲3.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲6.2%(7月:同6.7%)、輸入価格が前年比▲6.3%(7月:同▲7.4%)であった。

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季節調整済の貿易収支は▲1,308億円と14ヵ月連続の赤字となり、7月の▲1,040億円から赤字幅が拡大した。輸出が前月比▲2.8%の減少となり、輸入の減少幅(前月比▲2.3%)を上回った。

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8月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=67.5ドル(当研究所による試算値)となり、7月の67.4ドルとほぼ同水準となった。60ドル前後で推移していた原油価格(ドバイ)はサウジアラビアの石油施設への攻撃を受け、60ドル台後半へと急上昇した。通関ベースの原油価格は9月には60ドル台前半まで低下するが、10月には60ドル台後半まで上昇することが見込まれる。輸出の低迷が続く中、原油高による輸入金額の増加が加わることにより、貿易収支(季節調整値)は先行きも赤字が続くことが予想される。

輸出を取り巻く環境は依然厳しいが、下げ止まりの兆しも

19年8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.5%(7月:同10.1%)、EU向けが前年比▲2.3%(7月:同4.6%)、アジア向けが前年比▲8.9%(7月:同▲4.7%)となった。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲2.7%(7月:同0.3%)、EU向けが前月比▲2.6%(7月:同6.1%)、アジア向けが前月比▲3.5%(7月:同0.3%)、全体では前月比▲4.3%(7月:同1.8%)となった。7月とは逆に主要3地域向けの輸出が全て前月比でマイナスとなったが、19年7、8月の輸出数量指数(季節調整値)の平均は4-6月期より1.1%高い。

海外経済は製造業を中心に減速傾向に歯止めがかかっていないこと、グローバルなIT関連財の調整が継続していること、米中貿易摩擦を巡る不透明感が払拭されていないことなど、輸出を取り巻く環境は依然として厳しいが、18年半ば以降の急速な落ち込みには歯止めがかかりつつある。輸出を大きく押し下げてきた半導体電子部品等のIT関連品目の減少幅が縮小傾向にあることも明るい材料といえる。

一方、8月の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前月比▲4.8%(7月:同4.7%)と落ち込んだが、7、8月の平均は4-6月期よりも0.6%高くなっている。9月の輸入は消費増税前の駆け込み需要によって一定程度押し上げられる公算が大きい。このため、現時点では、7-9月期のGDP統計の外需寄与度は小幅なマイナスになると予想している。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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