不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

Motortion Films/Shutterstock
(画像=Motortion Films/Shutterstock)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

他人が所有する通路を使わせてもらえない…

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

北海道在住 梶さん(51歳、男性)からのご相談

株式投資で少し儲かったので、安定的な運用を目指して不動産投資をすることにしました。そこで、既存のマンションに投資することも考えたのですが、業者からの紹介で、古い家が建ったままなのと、周囲を他の人が所有する土地のためか、格安の土地があったので、その土地を買ってアパートを建てることにしました。

 もっとも、土地を買ってからその土地から一般道に通じる通路(いわゆる2項道路の指定がされている通路)の所有者(隣地の住人)に、工事車両が通れるように通路に置いてある鉢植えや物置などをどかしてほしいとお願いに行ったのですが、その所有者に強く拒絶をされてしまいました。どうやら、アパートを建てること自体に反対のようです。

このような場合、アパートを建てること自体をあきらめないといけないのでしょうか。

よくあるトラブル(14)「通行権と囲繞地(いにょうち)」

これで解決!

 周囲が他人の土地で囲まれ、公道に出るために他人の土地を通らないといけない土地、公道に接していない土地のことを囲繞地(いにょうち)または袋地といいます。このような土地の場合、法的に他人の土地を通って公道に出るための通路を確保する権利はあります(囲繞地通行権)(民法210条1項)。一切その土地の利用ができなくなるわけではありません。

 ただ、囲繞地の建物を解体したり新築したりする際に使用する車両や重機関係で問題が生じる可能性はあります。周囲を囲んでいる敷地や通路が他人の土地なので、スムーズに通路を使えるかというと、必ずしも一筋縄ではいかないことがあります。特に、普段は車両が通っていないような通路の場合、車両を通すことができるのか、車両が通る上で障害物がないかなどの問題が発生します。まさにご相談の件は、普段はその通路を車両が通っていないので、通路の所有者が鉢植えや物置を置き、人は通れるけど車両は通れないという状況なのだと思います。

 まず、民法209条1項は「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。」と規定していて、裁判所はこの規定を解釈して、囲繞地の家を壊したり新築したりする際に、その土地につながる通路を、囲繞地の所有者が必要な範囲で使用できるとしています。つまり、解体や建築に車両が必要であれば、車両も通路を通ることができるということです。

 そのため、仮に通路の所有者と協議して工事車両の通行が認められなかったとしても、通行を求めて裁判所に訴える方法もあり、最終的には裁判所が通行を許すことが予想されます。そこで、相談者の方もまずは民法209条1項に基づき協議をして、協議が不調に終われば訴訟をするという段取りをとれば、アパートを建てることもできる可能性があります。

 ただ、訴訟をするのは時間も費用もかかります。投資のために購入した物件なのに、高い経費がかかってしまうこともあるでしょう。その上、隣地を利用した際に道路に損害が生じると認められた場合、償金を支払う必要も出てきます。

そこで、そうならないように、不動産を購入する場合は安いからと飛びつくのではなく、そういった情報もしっかり下調べしておくことや、信頼できる不動産のプロのアドバイスが重要だと思います。