不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

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(画像=Ambient Ideas/Shutterstock)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

終活にあたって、家族が相続でもめないか心配です…

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

埼玉県在住 戸川さん(78歳、男性)からのご相談

まだまだ元気だと自分では思っているので、周りに比べると遅いかもしれませんが、年齢的に「終活」をしないといけないと思っています。中でも、相続の問題が気になります。

家族構成としては、妻と長男、次男がおります。また、財産と言えば、わずかな預金と自宅の土地建物、それと区分所有の投資用マンションを1戸所有しています。私たち夫婦の日々の生活費は、私の年金だけでは足りず、投資用マンションからの賃料収入も合わせてまかなっています。

相続で特に気になるのは、妻と子どもたち、3人の仲が悪いことです。残された家族が相続の問題でもめた場合に妻が不憫ですし、何より妻の生活が立ち行かなくなる可能性もあるので、とても心配しています。

どうにか「もめない」相続をすることができないものでしょうか?

よくあるトラブル(17)「相続問題」

これで解決!

皆さん、「ウチは大丈夫」と思っているかもしれませんが、自分がいなくなった途端に家族がいがみ合い、相続争いになる可能性はどこの家庭でもよくあることです。

そこで、自分が死んだ後に家族がもめないように、生前に遺言を残しておくことが重要です。「ウチは子どもがいないから、全部、妻にいくから大丈夫」という人もいるかもしれませんが、子どもがいない場合でも、たとえば兄弟がいるときは遺言を残しておかないと民法の法定相続分だと、妻が4分の3で、兄弟が4分の1になりますので、妻だけが財産を引き継ぐということにはなりません。もちろん、わざわざ遺言を残さなくてよいケースもありますが、遺言があれば家族がもめなくて済んだ場合が多いことも事実です。

特に、マンション経営をしている方には、そのマンションを誰が引き継ぐかなどで、比較的もめることが多いとも言えるので特に遺言をつくることをお勧めします。

まず遺言の形式は、自分でつくる遺言ではなく、公正証書で遺言をつくることをお勧めします。公正証書とは、公証役場で公証人につくってもらう書類のことです。公正証書なら、方式を間違えたり偽造だと言われたりするリスクはありません。

次に内容ですが、たとえば、ご相談者さんの場合には「遺留分」に気をつける必要があります。遺留分とは、故人の配偶者、子ども、親が持つ権利で、仮に故人が遺言で自分に全く遺産を残さなかった場合でも、最低限の遺産をもらうことができるという制度です。

ご相談者さんの場合で、たとえば、全てを妻に相続させるという遺言を書いたとしても、子ども2人にそれぞれ4分の1の遺留分があるので、それぞれの遺留分をよこせと争いが起こる可能性があります。そこで、「もめない」相続のためには、遺留分を考慮して遺言を作成することをお勧めします。

ご相談者さんの場合だと、妻に500万円の預金と自宅の土地建物(1500万円),投資物件(1000万円)を、子どもにそれぞれ500万円ずつの預金を相続させる内容の遺言を書くのがよいと思います。

もちろん、相続の問題については不動産の評価をどうするか、相続税がいくらかかるのかなど、ご紹介できなかった点でも様々な問題がありますし、故人の遺志を尊重した心のこもった遺言書を作成することが大切ですので、是非一度、専門家にご相談されることをお勧めします。