Jリート市場
(画像=PIXTA)

2018年以降、Jリート市場が上昇し株式市場とのパフォーマンスに格差が生じている。2018年1月から2019年8月まで間、東証REIT 指数(配当込み)が34%上昇したのに対して、TOPIX(配当込み)は▲14%下落し、両者の収益率の差異は48%に拡大した(図表1)。世界景気の減速懸念などを背景に各国中央銀行が緩和姿勢に転じるなか、現在のJリート市場は株式及び債券の代替投資先として資金が流入しやすい環境にある。

Jリート市場
(画像=ニッセイ基礎研究所)

まず、株式市場からの資金流入について考えると、株式市場では企業業績の先行きに不透明感が強まっている。TOPIX ベースの予想1株利益は昨年秋をピークに減少に転じ、足もとでは前年比▲7%に悪化している(図表2)。この先についても米中貿易摩擦の着地点が見通し難いなか、世界景気の減速や円高、消費増税など業績の下押し要因となりうる懸念材料は多い。

Jリート市場
(画像=ニッセイ基礎研究所)

これに対して、J リート市場の業績は堅調だ。市場全体の予想1口分配金は賃料収入の増加や金融コストの減少などにより年率5%程度のペースで増加している。引き続き、オフィスビルや賃貸マンションを中心に賃料収入が拡大し分配金の増加が見込まれており、両者の業績モメンタムの違いがパフォーマンスの格差に表われている。

加えて、J リート市場のボラティリティは年率で1ケタ台後半と低い水準を保っており株式市場と比べて値動きは穏やかである。そのため、Jリートは安定した業績と低いボラティリティが期待できるディフェンシブ資産として、リスク抑制を意図した資金の受け皿となっている。

次に、債券市場からの資金流入について考えたい。FRBは7月末のFOMCで政策金利を0.25%引き下げるとともに、バランスシートの縮小停止時期を従来の9月末から2カ月前倒し8月とすることを決定した。ECBも9月理事会で追加緩和と量的緩和の再開を決定するなど世界は再び金融緩和局面に突入し金利低下の圧力が強まっている。米10年金利は1.5%に、独10年金利は▲0.7%の水準に低下し、日10年金利も日銀の許容レンジ(▲0.2%~0.2%)を超えて低下した(8月末時点)。さらに、日本国債のマイナス利回りは15年超の年限にまで及び金額にして約3/4の国債がマイナス圏に沈む(図表3)。そのため、Jリート市場は償還国債などの再投資先の1つとして、インカム収入の確保を意図した資金の受け皿となっている。

Jリート市場
(画像=ニッセイ基礎研究所)

もっとも、Jリート市場と株式市場のパフォーマンスの乖離がこれまでのピーク水準に接近するなどやや行き過ぎの感もあり、資金フローの反転がいつ生じても不思議ではない(図表4)。実際、2016年後半に企業収益が底打ちし拡大に転じた局面では、それまでの「Jリート優位」の相場が「株式優位」へと変わり、その傾向は長らく続いた。

したがって、現在の資金フローの持続性については、不動産ファンダメンタルズや金利の動向のほか、企業業績の底打ちタイミングにも目を配る必要がありそうだ。

岩佐浩人(いわさ ひろと)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産調査室長

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