米カジュアル衣料大手のフォーエバー21(FOREVER21)が破産を申請した。1984年の創業後、57ヵ国で800店舗以上を展開してファストファッションの代表格の1社に上り詰めた同社が、なぜ窮地に陥ったのか。同じファストファッションだが、事業が好調なユニクロとの違いはどこにあるのか探った。

フォーエバー21、日本では全14店舗を2019年10月末に閉鎖

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(画像=Helen89/Shutterstock.com)

2019年9月29日、フォーエバー21は連邦破産法11条の適用をアメリカにおいて申請したと発表している。不採算店舗を閉鎖し、収益が上がっている店舗に注力することで経営再建を果たす狙いだが、破産による大きなブランド力の低下からは免れない。同社は今回の破産についての発表で、まず178店舗を閉鎖することに関する承認を申請したことを発表している。

この178という数字は世界展開する店舗のうちの約2割相当だ。主力のアメリカ市場やメキシコと中南米からは撤退せずアジアとヨーロッパ、カナダでは大幅に事業を縮小するか撤退する。2019年10月時点で日本のフォーエバー21の店舗は14店舗あるが、これらのすべてを10月末までに閉鎖し、オンラインストア事業からも撤退する。

2009年に日本に単独で進出してから10年。東京の原宿店を皮切りに北海道から沖縄まで中核都市で店舗を展開してきただけに、今回の破産に大きな衝撃を受けた人も少なくないだろう。

ネット通販の台頭で大きなダメージ

なぜ好調だったフォーエバー21は今回の破産申請に至ったのだろうか。その要因の一つが、米Amazon.com(アマゾン)などのEC(電子商取引)大手の台頭だ。ネット通販が消費者に浸透する中、2017年9月に玩具大手の米トイザラスや、2018年10月には百貨店大手の米シアーズ・ホールディングスも倒産した。フォーエバー21もこうした時代の波を乗り越えられず今回の破産に至ったと考えられる。

いわゆる「アマゾン・エフェクト」の猛威にフォーエバー21も耐えきれなかった格好だ。ネット通販が浸透するようになるとショッピングモールで店舗展開する企業は集客力が低下する。フォーエバー21が実店舗での展開に力を入れてきたことを考えれば売上の不調により家賃など固定費などの負担が重くのしかかるようになったことは容易に想像がつく。

最近ではファッションのサブスクリプション(定額制)サービスも誕生。また2015年9月の国連によるSDGsの提唱後、消費者は環境に配慮した、いわゆるサステイナブルな方法で作られた衣服を求める流れにあり、消費者の衣料に対する価値観も変わりつつある。オンライン販売への対応のほか、こうした価値観の変化に柔軟に対応できなかったことも最終的に破産にいたった要因であるといえるだろう。

好調なユニクロとの違いはどこに?

同じファストファッション業界でもフォーエバー21に対してユニクロ(ファーストリテイリング)は最近好調だ。売上や営業利益を堅調に伸ばしつつあり、2019年8月期決算では海外部門の営業利益が国内部門を抜いたことでも話題になった。両社の違いはどこにあるのだろうか。もちろんその違いは複合的なもので一つではない。

挙げるとするなら品質面でユニクロに差をつけられたことや若者層にターゲティングしたフォーエバー21の販売戦略が結果として厳しい状況を招いたと指摘する声も多い。なぜなら実店舗離れはデジタルネイティブの若者層の間で特に顕著だからだ。一方、ユニクロはシンプルなデザインの衣服が多く幅広い年代をターゲットとしている。

サスティナビリティに関する認識が世界的に広がる中、ユニクロが「使い捨て」というファストファッションのイメージからの脱却に取り組んだことでも水をあけられた。ユニクロのコンセプトは「LifeWear(ライフウェア)」。低価格ながらも上質で使い続けられる普段着としてポジションを確立しつつある。

時代の波に乗れるかが分かれ目

日本国内でみれば人口の減少もありアパレル産業の規模は横ばい状況にある。ただファストファッションの大手企業にはまだまだ大きな可能性がある。なぜなら消費者が価格と品質のバランスが取れた商品を好むようになっているからだ。こうした状況下において大量生産で販売価格を抑えることが可能な大手は強い。

ただ前述のファッションレンタルサービスの登場やネット販売の台頭という時代の波に適用できたうえでの話だ。それができなければフォーエバー21と同じ道をたどる可能性は否めない。「消費者の傾向と時代の波をいかに読めるか」が今後のファストファッション業界で成功するカギとなるだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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