多くの会社は若者を顧客ターゲットにビジネスを展開する。しかし、できることなら中年・高齢者をターゲットとしたビジネスをするほうが、メリットがいくつもある。筆者もいくつかビジネスを手掛けているが、いずれも中年以降の年代のお客様が多く、若者はあまり顧客に持っていない。その理由を解説する。

人口ボリュームが多いのは中高年層

アマゾン,リーチできない層,顧客化
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

新しい商品サービス、ビジネスの多くは若者をターゲットとしてローンチされている。だが、統計データを見れば、中高年層にターゲットをするビジネスにもチャンスが有るという事実が見えてくる。

日本の出生数

資料:「平成27年(2015年)国勢調査(抽出速報集計)」(総務省統計局)

総務省発表の資料を見ると、2015年度の日本における人口ボリュームは、ピラミッド型ではなく、40歳前後、65歳がもっとも多いことが分かる。今後、少子高齢化へと突入することで、このグラフは逆ピラミッドの様相を呈することが想像に難くない。

日本の出生数は坂道を転がり落ちるように減っている。出生数100万人割れは3年連続で、完全に少子化が鮮明に浮き彫りとなっている。第1次ベビーブーム(1947~49年)の頃は250万人を超えていたので、半分以下である。

若者はドンドン数を減らしているのだ。

お金を持っていない若者

さらに10代、20代の若者は使えるお金を持っていない。これは決してバカにしているわけではなく、筆者も10代、20代の頃は本当にお金がなかったので、体験レベルとしても言える話だ。

中小企業の経営者が大手企業と差別化をして生き残るには、「高付加価値化」が絶対的に必要だ。コモディティ化、安価、大量生産は大手の得意とする分野なので、まさにその真逆を行くマーケティングが必要なのである。極端なことを言えば、駅前の一杯300円台の牛丼を大手が提供するなら、中小企業は一杯3,000円の高級肉を使った牛丼を郊外に出店して提供するべきなのである。

そんな中小企業が取るべき、高付加価値化、手間暇のかかるビジネスはITサービスなどを除くと、若者に適合するものが多くない。

筆者はフルーツギフトビジネスや、英語教育のeラーニングビジネスを展開しているが、顧客のほとんどが40代以降の中高年ばかりである。20代もいなくはないが、全体の割合からするとかなりの少数派だ。なぜなら、両サービスとも、最初から中高年層をターゲットとしているからである。特にフルーツギフトについていえば、筆者の経営するショップでは、激安フルーツを大量仕入れ・大量発送をしていないので、若者には手が届きづらいと感じるかもしれない。

若者は使える可処分所得が多くない。一方、中高年層は若者より収入にも余裕があるので、中小企業の経営者が得意とするビジネスの顧客に向いているのだ。

中高年層はテクノロジーに疎いからこそ有利

また、生まれついたときから常に最新のガジェットを買い替えてきた若者と違って、中高年層はテクノロジーに置いていかれている人も少なくない。だからこそ、テクノロジーに置いていかれた層に優しいビジネスが有利に働くこともあるのだ。

筆者経営のフルーツギフトをお求めになるお客様の中には、60代、70代の顧客もおり彼らはFAXや電話でしか注文しないという人もいる。スマホはおろか、ネットショッピング自体も得意でないので、あの世界一の巨人・Amazonでもこうしたパイを取ることは出来ないのだ。それ故にテクノロジーという参入障壁によって、守られているともいえる。

世の中を見渡すと、若者向けの商品サービスばかりだ。あえてそこで中高年層に向けたものを提供することで、生き残りの戦略とするのは大いにありだと筆者はビジネスをしていて現在進行系で感じている。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)

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