2013年に出版され、ベストセラーになったアルフレッド・アドラーの「嫌われる勇気」。アドラーは「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」と言い切り、感情と対人関係を良好にするための方法について書いています。アドラー心理学を学ぶことは、対人関係を好転させ、人生をより希望に満ち溢れたものへと変える一助となります。本稿では、アドラー心理学とその考え方について解説します。
アルフレッド・アドラーとは?
アドラーは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオーストリアの精神医学者です。フロイトやユングと並ぶ心理学の3巨頭の1人とも言われています。
アドラー心理学の特徴は、常に「目的」にフォーカスしていることです。たとえば、大事なプレゼンや会議の日に限って、なぜか朝起きられない男性がいたとしましょう。その結果、彼はいつも遅刻してしまいます。
その課題を乗り越えるための一般的なアプローチは、まずは原因を探って「夜遅くまで起きているから、朝起きられない」という問題点を見つけます。次に「早寝をする」というその解決策を導き出すでしょう。しかしアドラーの目的論はまったく逆で、「プレゼンに遅刻をしたいから起きられない」と考えるのです。
彼は遅刻することで、「遅刻したことでプレゼンはダメだった」という理由を自ら作りました。これによって、「真剣にプレゼンをしても誰にも認められなかったらどうしよう」という不安を消すことができます。
このように、アドラーは「行動や感情は、目的のために創り出される」という考え方を提唱したのです。
アドラー心理学について
・人は変われる
アドラー心理学では、人間の行動には常に目的があると考えます。それが理不尽なものであってもです。たとえば、恋愛がなかなかうまくいかず片想いが多い女性がいたとして、彼女は「もう少し目がパッチリしていたら」とか「もっとスタイルが良かったら告白するのに」と思って何もしないでいたとします。
そうした告白しない理由をアドラー心理学ではきっぱりと否定します。告白をしないのは、「失恋をして傷つきたくないから」という目的があり、それを正当化するために、後付けとして目やスタイルを言い訳にしているに過ぎないと考えます。
アドラー心理学では、「過去に原因は存在せず、原因は今、ここにあり、今、ここから人は変われる」といいます。告白するということは勇気がいることですが、告白しなければ前には進めません。結果がどうなるにしろ、今、ここで決断を下し行動しなければ人は変われないのです。
・感情の扱い方
目的論では、人は過去の原因によって突き動かされるのではなく、目的のために行動や感情が生まれているとしています。人の行動や感情には、ネガティブなものが少なくありません。アドラーは、目的を探ることで非建設的な行動や感情を変えていくことができると述べています。
また、アドラーは劣等感を否定しません。アドラーは、いかなる人間であっても劣等感を持っていると言います。どのような立場であっても、社会の一員である限り、人間には劣等感が常につきまといます。それを解決するには、劣等感をネガティブなものではなく、健全なものへと変えていくことなのです。
劣等感を健全なものとして活用するための考え方として、アドラーは以下の3つを提唱しています。
①自分が不完全であることを認める
②他者との比較ではなく、理想の自分との比較を行う
③他者に対して貢献する
・共同体感覚と課題の分離
アドラーは、「あらゆる悩みは対人関係から生じる」と述べています。この悩みを解決するための考え方が、「共同体感覚」です。共同体感覚とは、家族や地域社会、国家、人類全体に所属していることを実感することです。
共同体に貢献することによって自己受容ができ、肯定感が高まることでネガティブな劣等感から脱却することができます。一方で常に自分の利益しか考えていない人は、自己中心的となり他者とトラブルになることも多く、常に対人関係で悩むことになります。
より多くの共同体に対する幸福への貢献を考えるようになれば、仲間意識が芽生えます。協調・共和を重視するようになり、他者との比較や競争は生まれにくくなります。しかしながら、人間が社会で生きていくからには多少の軋轢は生じるもので、人間関係で折り合いをつけなければならない場面もあるでしょう。
アドラーはこの点について、「課題の分離」を挙げています。課題の分離とは、他者の課題に対して立ち入らないということです。他者が抱える問題に必要以上に立ち入らず、お互いが自立した状態で関わり合うようにします。そのうえで、相手に対して自分は何ができるのかを考えてみましょう。過干渉にならない距離で、相手の意志を尊重するようにします。
アドラー心理学とは「今、ここから幸福になる」方法のこと
アドラー心理学は、ときに「劇薬」と呼ばれることもあります。それは、これまでのものの見方を一変させ、世界観を大きく覆す可能性があるからです。しかし、アドラーの考え方は常にポジティブであり、現在自分がどのような状況に置かれているとしても、より多くの人々の幸福を目標にすることで、今この瞬間から自分は幸福になることができると述べています。人間関係で悩みを抱えた際は、アドラー心理学を学んでみるといいかもしれません。(提供:Dear Reicious Online)
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