不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

未払い
(画像=PIXTA)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

契約書に定められているのに更新料を払ってくれない

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

千葉県在住 小林さん(45歳、男性)からのご相談

都内に投資物件を持っています。先日、更新の時期が近付いたので、管理会社から借主に対し更新契約の連絡と更新料の請求をしました。これに対して、借主は管理会社に対し、これからも住み続けたいので更新の契約はしたいが、更新料を支払う経済的な余裕がないし、毎月の賃料とは別になぜ更新料を払わなければならないのか納得できないので、更新料は払いたくないという回答がきました。管理会社から説得をしてもらいましたが、どうにもならないようです。

こういう借主に対しては、更新料を払わせるために何かいい方法はないのでしょうか?

よくあるトラブル⓴「更新料」

これで解決!

法的にいうと、借主に更新料を支払う義務があるか否かは契約書の定めによります。この点、契約書に更新料の定めがない場合、今の裁判所の考え方(判例)では、借主が更新料の支払義務を負うことはありません。つまり、貸主から更新料の支払をお願いしても、借主が更新料を払わなければ、それを裁判に訴えて強制的に払わせることはできないし、更新料を払わなかったからと言って、契約の解除など借主の不利益にはならないということです。(ただし、法的に義務がなくても、貸主からお願いをして、借主が任意に支払うことはなんら問題がありません。)

他方、契約書に更新料の記載がある場合、少なくともその記載が具体的かつ一義的であり、その金額が不当に高くなければ、借主は更新料の支払義務があります。この内、通常、首都圏でよく見かける2年毎の更新で2か月分の更新料というような契約書の場合には、その記載は具体的かつ一義的で、金額も不当に高いとはいえないので、借主に更新料の支払義務があると言えます。

そこで、まずは契約書に更新料の記載があるかを確認してください。相談者さんの場合のように、管理会社が入っている場合は、おそらく更新料の条項は契約書に入っているでしょうし、その金額は相応なものだと思いますので、特に、法的義務があることについて問題はない場合が多いと思います。

では、借主に更新料の支払義務があるにもかかわらず借主が支払をしない場合、貸主としてはどうしたらよいかと悩まれるかもしれません。この点、更新料支払請求の裁判(訴訟)を起こすこともできます。また、更新料を払わないことは契約違反ですので、それまでの経緯と合わせて、貸主と借主との間の信頼関係が破壊されていると評価される場合には、物件からの明渡を求める裁判をすることもできます。もっとも、いきなり裁判ということはせず、正しい法的知識に基づいて、更新料を支払わなければ明渡請求も含めた法的措置をとるという毅然とした態度で、借主と交渉することがよいでしょう。