日本株の上昇基調が続いています。日経平均株価は10月中旬以降、上昇基調に転じ、10/29(火)には一時23,000円台を回復。昨年10月以来約1年ぶりの高値水準を回復しました。世界的な金融緩和基調の中、米中通商摩擦に対する懸念が後退し、米国株等が堅調に推移していることに加え、外為市場で円高が一服したことが背景とみられます。結局、10月の日経平均株価は前月末比5.4%の上昇となりました。
こうした中、米国および日本では、上場企業の決算発表シーズンが佳境を迎えています。日米ともに、企業業績の減速懸念が逆風となっていることは確かですが、すでに市場の期待値が下がっていることもあり、実際の決算発表では事前の市場予想を上回る業績をあげる企業も少なくないようです。そうした流れを受け、決算発表終了後に「悪材料出尽くし」となり、買い直される銘柄も少なくありません。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、10/31(木)までに決算発表を終えた上場企業を早速分析し、傾向と対策を考え、今後好業績が評価されそうな銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。
好業績が評価されそうな銘柄はコチラ!?
2019年7~9月期の決算発表が佳境を迎えています。主力の3月決算企業の場合、通常は2019年4~9月期(上半期)累計の業績と、2020年3月期(通期)の業績見通しを発表することになります。
10/30(水)までに決算発表が終った時価総額1千億円以上の3月決算企業を対象にした集計では、営業利益は5%を超える減益(前年同期比)になっています。通期でも同程度の減益予想(会社予想)になっています。3月決算企業(金融を除く全産業)の4~6月期決算は前年同期比で4.7%の経常減益でしたが、引き続き減益基調が続いていることになります。
ただ、すでに市場の期待値が下がっていることもあり、実際の決算発表では事前の市場予想を上回る業績をあげる企業も少なくないようです。そうした流れを受け、決算発表終了後に「悪材料出尽くし」となり、買い直される銘柄も少なくありません。同上の集計では、上半期の業績予想で市場コンセンサスのある企業の約3分の2は、営業利益が事前予想を上回っています。
今回のスクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)3月決算銘柄であること。
(4)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。
(5)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(6)10/31(木)までに決算発表が終った企業であること。
(7)2019年4~9月期(上半期)累計の営業増益率(前年同期比)が10%以上で、事前の市場予想(Bloombergの市場コンセンサス)を上回っていること。
(8)2019年4~9月期(上半期)累計の営業増益率(前年同期比)が2020年3月期(通期)の会社予想営業増益率を上回っていること。
(9)2019年4~9月期(上半期)累計の経常利益が事前の市場予想を上回っていると、当社WEBサイトでも確認できる銘柄であること。
(10)2020年3月期(通期)の予想営業利益について、会社が下方修正を発表していないこと。
上記のすべての条件を満たした銘柄について、(7)の四半期累計営業増益率が高い順に並べたものが表1となります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄の中から、今後の東京株式市場で好業績が評価される銘柄が出てくると考えています。
表1 好業績が評価されそうな銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(10/31) / 営業増益率(前年比)2019/4~9期 / 営業増益率(前年比)2020/3期予想
<6701> / 日本電気 / 4,300 / 238.9% / 88.1%
<4506> / 大日本住友製薬 / 1,902 / 125.7% / 52.0%
<6754> / アンリツ / 2,081 / 90.5% / 2.3%
<1950> / 日本電設工業 / 2,362 / 80.8% / 4.4%
<1973> / NECネッツエスアイ / 3,430 / 66.0% / 9.6%
<7518> / ネットワンシステムズ / 2,942 / 43.8% / 15.3%
<4739> / 伊藤忠テクノソリューションズ / 2,923 / 38.7% / 8.6%
<6755> / 富士通ゼネラル / 1,966 / 34.5% / 26.8%
<2327> / 日鉄ソリューションズ / 3,705 / 34.1% / 14.9%
<9697> / カプコン / 2,567 / 33.2% / 10.2%
<6436 / アマノ / 3,220 / 30.4% / 8.8%
<1959> / 九電工 / 3,570 / 27.0% / 3.4%
<4921> / ファンケル / 3,075 / 25.6% / 21.1%
<9719> / SCSK / 5,540 / 23.7% / 6.8%
<4307> / 野村総合研究所 / 2,311 / 23.6% / 12.0%
<4528> / 小野薬品工業 / 2,047.0 / 19.1% / 8.0%
<6758> / ソニー / 6,625 / 17.3% / -6.1%
<4684> / オービック / 13,650 / 16.4% / 8.1%
<2229> / カルビー / 3,620 / 12.9% / 0.1%
会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。予想は会社予想。
掲載銘柄の投資ポイントを吟味
世界経済を概観すると、先進国経済の拡大がピークアウトに向かうタイミングで米中通商摩擦が激化したこともあり、景気減速傾向が鮮明になると予想されます。ただ、5GやIoT、AIなど次世代の技術的覇権を狙った投資は世界で拡大が続くと予想されます。一方、国内的には、働き方改革や消費税引き上げに伴う内需の浮き沈みに注意が必要になりそうです。
そうした中、NEC(6701)、富士通(6702)等、もともとシステム構築とネットワーク構築を柱にしていた企業は、働き方改革に伴うシステム構築需要の盛り上がりや、ウィンドウズ7サポート停止の特需、5G投資の拡大等が追い風になり、業績が拡大しやすくなっています。
表1には、退職給付制度変更に伴う一時的変動の影響で富士通は掲載されませんでしたが、内容的には好調で、むしろ決算発表直後の株価は同社の方がNECよりも好調でした。なお、NECは5G投資拡大の追い風を受ける中、基地局ビジネスの進捗が課題視される可能性がありそうです。
なお、システム構築業者としては、日鉄ソリューションズ(2327)、野村総合研究所(4307)、SCSK(9719)等の大手も掲載されています。テクニカル的には、図1のようにSCSKが大きく保ち合い放れの様相を呈している他、野村総合研究所(4307)も保ち合い放れ直前の形に見えます。日鉄ソリューションズも9月高値を上回ってこれれば、保ち合い放れになりそうです。
図1 SCSK(9719)・日足
これに対し、ネットワンシステムズ(7518)や伊藤忠テクノソリューションズ (4739)等ネットワーク事業大手のチャートは、上値抵抗ラインの存在が意識されそうな形状になっています。もともと、5G投資拡大の追い風が意識され、相対的にPER等で高めの評価を得ており、利益確定売りも出やすいといえます。このうち、前者について受注動向は第1四半期よりも良い印象で、SBI証券・企業調査部では投資判断「買い」、目標株価3,900円(ともに10/31現在)としています。
一方、アンリツ(6754)ですが、10/30(水)に決算発表を行い、2020年3月期の会社予想営業利益を従来の100億円から115億円(前期比2.3%増)に上方修正しました。それでも、上半期に営業利益が前年同期比90.5%増であったことと比べると保守的に見えます。こうした中、SBI証券・企業調査部では2020年3月期の営業利益を135億円(前期比20%増)と予想し、目標株価2,700円、投資判断「買い」(10/10に引き上げ、10/30に更新)としています。2021年3月期は営業利益157億円(企業調査部)の予想です。市場コンセンサスでも同期の営業利益は拡大が見込まれています。
アンリツの株価は3/4(月)に付けた2,379円が年初来高値になっていますが、来期大幅増益の見方が浸透し、上記目標株価への接近が本格化すれば、更新する可能性が膨らんできそうです。
図2 アンリツ(6754)・日足
なお、表1のうち、アンリツ、ネットワンシステムズ、NECネッツエスアイ、NEC(6701)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)は、SBI証券のテーマ投資を容易に行えるツールとしてご紹介している「テーマキラー!」で「5G関連銘柄」として紹介されています。この「5G関連銘柄」は、投資家の関心が年を通じて高めで、相対パフォーマンスも良好となっています。
最後にソニー(6758)ですが、上半期の営業利益は5,098億円(前年同期比17.3%増)と好調を持続し、通期の会社予想営業利益は従来の8,100億円から8,400億円(前期比6.1%減)へ上方修正されました。SBI証券・企業調査部では2022年3月期に同社の営業利益は1兆円台に乗せると予想し、目標株価は8,200円、投資判断「買い」(ともに10/30付で更新)としています。
同社の株価は年初来高値を更新してきていますが、2018年9月に6,973円という高値、2007年5月に7,190円という高値があり、今後はそれらを目指す可能性もありそうです。
図3 ソニー(6758)・日足
鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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