大阪は「中小企業の街」として知られており、企業の99.6%が中小企業です。そんな大阪の活力とも呼べる中小企業にとって悩ましいのが「事業承継」問題で、後継者難で廃業する企業も少なくありません。大阪の中小企業と事業承継の現状を見ていきます。
大阪の中小企業は27万874社 製造業が10.9%と全国に比べて多い
中小企業庁が公表しているデータによれば、大阪府の中小企業の数は2016年時点で27万874社に上っています。全国の中小企業の数が357万8,176社ですから、実に約7.5%が大阪に集積していることになります。
大阪府が発表した「2018年度版なにわの経済データ」によれば、大阪では全産業のうち卸売業・小売業が最も多く25.3%となっています。大阪府の産業構造でほかの都道府県と比べて特徴的なのは、製造業の割合が全体の10.9%にも上るという点です(全国平均は8.5%)。
大阪には業界シェアでトップ級を誇る製品を製造している中小企業も多く、例えば工業用アイロンで日本有数の企業である直本工業株式会社や、医療用調剤機器でトップシェアを誇るとされる株式会社湯山製作所も、それぞれ大阪に本社を置いています。
そんな大阪の中小企業ですが、最近はその数が減り続けています。中小企業数は2006年から2014年までの間に全国で25.2%減っていますが、大阪ではそれを上回る29.8%という減少率を記録しました。この数の減少の一因が事業承継における問題となっており、廃業率も全国に比べて高くなっています。
「親族内承継」に強い思い入れ M&Aの早い段階での検討も必要か
大阪府商工労働部がまとめた「大阪府における中小企業の事業承継支援の課題と方向性」という資料(2019年3月)では、大阪を含む関西の中小企業経営者の特徴として、事業承継の選択肢として「親族内承継」に強い思い入れがあることを指摘しています。
事業承継には大きく分けて「親族内承継」「役員・従業員承継」「M&Aなどの社外への引き継ぎ」の3つの類型がありますが、親族内承継の割合は、子どもに継ぐ意思が無かったり、そもそも息子や娘がいなかったりすることが原因で、全国的に減少傾向となっています。
こうした点においても中小企業が存続していくためには、親族外承継やM&Aを視野に入れる必要があり、大阪の中小企業経営者にはよりさまざまな選択肢を検討することが求められているでしょう。
同資料においても「M&Aに対するネガティブイメージを払拭し、事業承継の一手段として早い段階で検討されることで、倒産を減らすことができるのではないか」と指摘されています。
大阪府、2018年から3年間を支援の集中取組み期間に設定
こうした状況下、大阪府は事業承継の円滑化に向けた取り組みを進めています。商工会や商工会議所による「事業承継相談デスク」の設置や企業訪問による事業承継診断の実施などのほか、セミナーなども定期的に開催しながら啓発活動に力を入れています。
2018年には「大阪府事業承継ネットワーク」も組織され、大阪府と事業承継の支援機関などがタッグを組んで、事業承継を見据えた経営課題の解決策や後継者の育成に関するセミナーを開催するなどしています。
大阪府は2018年から3年間を「事業承継支援の集中取組み期間」に設定しており、国による支援施策と連携しながら事業承継のサポートを強化する方針を示しています。
雇用の継続・確保のためにも
中小企業の存続は地域における雇用の継続・確保にもつながるため、大阪府、そして日本にとっても極めて重要なことです。一方で中小企業ごとに抱えている問題は異なるため、自治体側にはきめ細やかな支援が、そして経営者側には早期からの取り組みとより幅広い視点が求められます。(提供:企業オーナーonline)
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