日経平均株価は月足ベースでみると9月に5.1%上昇した後、10月も5.4%上昇し、11月も上昇基調が続いています。世界的に緩和的金融政策が継続される中、米中通商摩擦に対する懸念が後退し、米国株等海外株が堅調に推移していることに加え、外為市場で円高が一服したことが背景とみられます。

こうした中、我が国では、上場企業の決算発表シーズンが佳境を迎えています。11/6(水)にはソフトバンクグループ(9984)、11/7(木)にはトヨタ(7203)等、時価総額上位企業の発表が終わっています。11/8(金)には550社前後の上場企業で決算発表が実施され、ここがピークになるはこびです。すでに市場の期待値が下がっていたこともあり、実際の決算発表では事前の市場予想を上回る業績をあげる企業も少なくないようです。そうした流れを受け、決算発表終了後に「悪材料出尽くし」となり、買い直される銘柄も少なくありません。

「日本株投資戦略」では、決算発表を終えた上場企業を早速分析し、傾向と対策を考え、今後好業績が評価されそうな銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。11/1(金)付の前回は10/31(木)までに発表を終えた企業を対象に分析しました。今回は11/1(金)~11/7(木)に発表の企業を対象にしたいと思います。

トヨタ、テルモなど好業績が評価されそうな銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

決算発表が佳境を迎えています。11/6(水)にはソフトバンクグループ(9984)、11/7(木)にはトヨタ(7203)等、時価総額上位企業の発表が終わっています。11/8(金)には552社の上場企業で決算発表が実施され、ここがピークになるはこびです。

ソフトバンクグループの決算では投資ファンドの損失計上による業績悪化が懸念されました。ただ、同社株は決算日発表の翌日となる11/7(木)、売り一巡後は下げ渋る展開となり、年初来安値を更新することなく取引終了となりました。株式市場はとりあえず、ほっと一息といった状態です。また、11/7(木)の取引時間中に決算発表を行ったトヨタ(7203)は、市場コンセンサスを上回る営業利益を計上したうえ、自社株買いも発表し、こちらは年初来高値を更新して取引を終えました。時価総額トップである同社株の上昇は市場心理に追い風になったと考えられます。

時価総額上位の決算発表を終え、発表社数ベースでピークの11/8(金)も過ぎれば、投資家はいよいよ、銘柄間の業績比較を本格的に行い始め、物色の選別色を強めてくると想定されます。我々も引き続き、スクリーニングによる好業績銘柄の選別を続けていきたいと思います。

11/1(金)付の前回は10/31(木)までに発表を終えた企業を対象に分析しました。今回は11/1(金)~11/7(木)に発表の企業を対象にしたいと思います。

(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額が1千億円以上の銘柄であること。
(3)3月決算銘柄であること。
(4)広義の金融や、投資法人等を除く業種の銘柄であること。
(5)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(6)11/1(金)~11/7(木)に決算発表が終った企業であること。
(7)2019年4~9月期(上半期)累計の営業増益率(前年同期比)が10%以上で、事前の市場予想(Bloombergの市場コンセンサス)を上回っていること。
(8)2019年4~9月期(上半期)累計の営業増益率(前年同期比)が2020年3月期(通期)の会社予想営業増益率を上回っていること。
(9)2019年4~9月期(上半期)累計の経常利益が事前の市場予想を上回っていると、当社WEBサイトでも確認できる銘柄であること。
(10)2020年3月期(通期)の予想営業利益について、会社が下方修正を発表していないこと。

上記のすべての条件を満たした銘柄について、(7)の四半期累計営業増益率が高い順に並べたものが表1となります。「日本株投資戦略」では、これらの銘柄の中から、今後の東京株式市場で好業績が評価される銘柄が出てくると考えています。

トヨタ、テルモなど好業績が評価されそうな銘柄
(画像=SBI証券)

表1 トヨタ、テルモなど好業績が評価されそうな銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(11/7) / 営業増益率(前年比)2019/4~9期 / 営業増益率(前年比)2020/3期予想
<7733> / オリンパス / 1,700.0 / 1606.4% / 218.2%
<8111> / ゴールドウイン / 7,780 / 77.0% / 26.5%
<9783> / ベネッセホールディングス / 3,015 / 68.8% / 23.1%
<8129> / 東邦ホールディングス / 2,809 / 64.9% / 8.3%
<9684> / スクウェア・エニックス・ホールディングス / 5,030 / 62.9% / -2.6%
<4676> / フジ・メディア・ホールディングス / 1,453 / 62.9% / -17.9%
<9987> / スズケン / 5,650 / 61.6% / -9.7%
<3941> / レンゴー / 816 / 39.9% / 38.4%
<8056 / 日本ユニシス / 3,490 / 35.8% / 11.5%
<7550> / ゼンショーホールディングス / 2,420 / 29.5% / 26.6%
<4543> / テルモ / 3,542 / 24.3% / 2.2%
<8919> / カチタス / 4,730 / 24.1% / 13.7%
<3626> / TIS / 6,370 / 22.9% / 10.4%
<2784> / アルフレッサ ホールディングス / 2,429 / 17.8% / 1.4%
<2371> / カカクコム / 2,395 / 16.1% / 6.5%
<6952> / カシオ計算機 / 1,768 / 12.7% / 4.1%
<7203> / トヨタ自動車 / 7,736 / 11.3% / -2.7%
会社公表データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。予想は会社予想。

掲載銘柄の投資ポイントを吟味

ここでは、表1で掲載した銘柄の一部について、投資ポイントをご紹介したいと思います。

オリンパス(7733)の第2四半期累計営業利益は約509億円となり、前年同期比で約17倍と急回復しました。消費税引き上げ前の駆け込みもあったようですが、中国向け内視鏡の好調等を評価する向きも多いようです。今期予想営業利益は会社予想で900億円(前期比218.2%増)ですが、市場では930億円を予想しているようです。なお、新経営計画では2023年3月期に売上高営業利益率を20%に引き上げたいとのことでしたので、仮に売上高が今期予想と同じであれば、営業利益1,600億円前後が指向されている計算です。

株価は中期的成長期待を織り込み、歴史的高値水準にあるようです。このため、割安感は後退しつつありますが、信用売り残が多く、逆日歩も発生し、取り組み妙味が強まっているようです。

図1 オリンパス(7733)・月足

図1 オリンパス(7733)・月足
(画像=チャートツールをもとにSBI証券が作成)

ベネッセホールディングス(9783)の第2四半期累計営業利益は約146億円となり、前年同期比で68.8%増と伸びました。進研ゼミに加え、学校向け教育事業、学習塾事業等、介護・保育等が増益要因になっています。2020年の教育改革では、英語教育の小学3年生スタート、小学5年生必修化、中学校英語授業の「オールイングリッシュ」化といった大きな変革を控えており、同社のビジネスチャンスも拡大しそうです。

短期的には、同社が実施する英語検定試験でのトラブルや、それによる英語民間試験の延期等が与える業績・株価への影響について留意が必要かもしれません。しかし、中期的に、市場では今期以降も、2022年3月期頃までは増益基調が継続すると予想しており、株価も上向き継続が期待されます。決算発表後に急騰し、現在は利益確定売りが優勢になっているようですが、再び年初来高値更新の可能性もありそうです。

東邦ホールディングス(8129)スズケン(9987)等、医薬品卸事業者の業績が好調です。ただ、今後の薬価引き下げの影響や、消費増税に伴う駆け込み需要反動の影響を考慮する必要もありそうです。これらの企業は決算発表後に、株価が下落していますが、今のところ、決算発表を好材料出尽くしと理解した投資家が多いことを示しているかもしれません。

テルモ(4543)の第2四半期累計営業利益は約591億円となり、前年同期比で24.3%増と伸びました。純利益段階で上半期としては過去最高の水準です。心臓や脳内の血管の治療に使うカテーテル(医療用細管)関連製品の販売が米国や日本など世界で好調でした。地域別には、中国が17%増の244億円と伸長。医療の高度化でカテーテル治療の普及が進んでいることが追い風になっているようです。

通期の営業利益は1,090億円(前期比2.2%増)の見通しです。上期の増益分に消費増税に伴う駆け込み分があった可能性があり、会社側ではその反動を警戒しているようです。ただ、新興国経済の発展に伴い成人病は世界的に増える可能性があり、カテーテル需要の追い風になりそうです。株式市場も向こう数年は年数%から10%超前後の営業増益が続くと予想しているようです。株価が本年3月の水準を超えてきたこともあり、成長シナリオが改めて意識される可能性もありそうです。

図2 テルモ(4543)・日足

図2 テルモ(4543)・日足
(画像=チャートツールをもとにSBI証券が作成)

トヨタ(7203)の第2四半期累計営業利益は約1兆4,043億円となり、前年同期比で11.3%増と伸びました。通期では2兆4千億円(前期比2.7%減)の予想です。進捗率が59%に達していることに加え、為替前提を1ドル105円にしていることから、現状の会社予想は保守的なものに映っています。SBI証券・企業調査部アナリストの印象はポジティブなものになっています。

決算発表後の株価は上昇しています。営業利益ベースで市場予想を上回る実績をあげたうえ、自社株買いの発表を行ったことで、市場の評価が高まっています。上方修正含みの業績を背景に、株価に上値余地が生じる可能性があります。テクニカル的にも、1月の高値を超え、年初来高値を更新してきたことが注目されます。

11/7(木)現在、SBI証券・企業調査部アナリストの目標株価は7,100円で、投資判断は「中立」です。会社取材の後、業績予想の見直し等が行われる見込みです。

図3 トヨタ(7203)・週足

図3 トヨタ(7203)・週足
(画像=チャートツールをもとにSBI証券が作成)

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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