「不動産は相続トラブルのもと」とよくいわれますが賃貸物件も同様です。特に「賃料を取得する権利」は独特なルールがあるため複数の相続人がいる共同相続ではトラブルリスクがあります。内容をしっかり把握したうえで相続対策に活かしましょう。

賃貸物件を共有する場合は、それぞれの相続人が家賃を請求できる

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(画像=only_kim/Shutterstock.com)

賃貸物件の貸し主が亡くなったとき、その物件の所有権は相続した人のものです。それと同時に、相続人へ貸し主の地位(=家賃を受け取る権利など)も受け継がれます。このように家賃をもらう権利は理屈で考えると簡単ですが、いざ実務になるとトラブルに発展しやすい傾向です。例えば遺産分割協議で「賃貸物件を共有する」と決まった場合は、その相続分に応じて賃料を取得する権利があることになります。

つまり家賃をもらう権利を持つ貸し主が複数いる場合、その一人ひとりが借り主に対して(相続分に応じた)家賃を請求することが可能です。しかし実際にそんな賃貸物件が存在したら借り主にとってはかなり面倒です。そのため現実的には、共有相続人のうちの一人が代表して家賃を受け取り相続分に合わせて内々で分配するといった対応が賢明です。

遺産分割協議が成立するまでの家賃収入は、共同相続人みんなのもの

相続と家賃というテーマでは「相続開始から遺産分割協議が成立するまでの家賃はどのような扱いになるのか」も重要です。この部分を端的にまとめると次のようになります。

  • 相続開始~遺産分割協議の成立まで:各共同相続人が(相続分に応じて)収益を取得
  • 遺産分割協議後:賃貸物件を相続した人が収益を取得

つまり「相続開始〜遺産分割協議の成立まで」と「遺産分割協議後」では、家賃を受け取る権利のルールが大きく変わるということです。「相続発生~遺産分割協議の成立まで」という一定期間とはいえ所有する戸数・棟数が多ければ収益(家賃収入-経費)は相当な額になるでしょう。この収益をほかの相続人に独り占めされている場合は、請求する権利があると考えられます。

借主が亡くなったときの賃料債務は分割できない

借り主が死亡した場合、家賃の支払いはどうなるのでしょうか。家賃を支払う義務(賃料債務)も相続されるのが基本です。ただし「相続開始前に発生していた家賃」と「相続発生後に発生した家賃」では考え方が大きく変わります。まず相続開始前の家賃は共同相続人の全員が(相続分に応じて)支払う必要があります。

一方、相続発生後の家賃は性格が変わってくるため、共同相続の場合でもそのうちの代表に一括請求することになるでしょう。なぜなら家賃は「不可分債務」と呼ばれる分割することのできない債務だからです。

貸し主が亡くなっても賃貸借契約を新たに結ばなくていい

賃貸物件の貸し主が亡くなったときに混乱しやすいのが相続時に相続人名義で「賃貸借契約書を新たに作成する必要があるか」という点です。これについては、亡くなった貸し主名義の賃貸借契約書でも有効です。ただしかなりの長期にわたって賃貸借関係にあり契約内容であいまいな部分が多い場合は、将来のトラブルを防ぐために改めて契約書を交わした方が無難かもしれません。

賃貸物件を所有しているオーナーはやはり遺言書作成が安全

賃貸物件が共同相続になった場合は、「代表して誰が家賃を請求するか」の調整が必要です。この調整が不調に終わった場合、「一人の入居者に各共同相続人が家賃を請求する」というややこしいことになります。こういったトラブルが起きないよう「どの賃貸物件を相続人のうち誰が引き継ぐか」を明確にした(法的に有効な)遺言を残しておくのが賢明です。(提供:YANUSY

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