米大手情報通信業者であるAT&T(NYSE:T)は、年初来で約31%高となっており、S&P500の24%高をアウトパフォームしている。

マクロ環境の好材料を追い風に同株は値を上げて取引されているものの、ファンダメンタルズ的な懸念材料は依然として払拭されていない。マーケットは、同社の業績と巨額の負債に注目している。

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AT&T 週足(画像=Investing.com)

アクティビストとして知られている米エリオット・マネジメントは同社の経営に圧力を掛けている。

エリオットは、タイム・ワーナーを850億ドルで買収した事に関して、ランドール・スティーブンソンCEOを公然と非難した。その結果、同社は大規模な買収に対して距離を置いている。

エリオットとの協議を受け、同社が発表した3ヵ年計画では、自社株買いの義務や取締役会の定員を2人増やすことが盛り込まれた。また、同社は事業ポートフォリオの再編やタイム・ワーナー買収による負債の削減を約束した。

さらに、スティーブンソンCEOが辞任した際、会長とCEOの権限を明確に分離することで同意した。ウォールストリートジャーナル紙によると、スティーブンソン氏は2007年に同社CEOへ就任し、退任時期について議論していた。

長い道のり

10月、同社の発表した3ヵ年計画は市場から好感された。タイム・ワーナー買収に伴う負債の返済や配当支払い後にフリーキャッシュフローの50%から70%を自社株買いに当てることが盛り込まれた。

しかしながら、AT&Tは業績が軟調であり、事業転換の道のりも依然として長いままである。第3四半期決算では、利益が前年同期比22%減の37億ドル、売上高が前年同期比2.5%減の446億ドルとなった。

また、同社のエンターテイメント部門では、有料テレビ契約数が140万件減となった。

ネットフリックスなどの競合への顧客流出へ対処するため、動画ストリーミング・サービス「HBOマックス」のローンチを2020年に予定している。

群雄割拠の動画ストリーミング市場で、HBOマックスの動向を予想するのは困難である。しかし、ウォルト・ディズニー (NYSE:DIS)やアップル (NASDAQ:AAPL)、アマゾン・ドット・コム (NASDAQ:AMZN)などの競合と渡り合うためには、来年内に5000万人の加入者を確保する必要がある。

総括

年初来の同株上昇の背景には、高配当銘柄への需要の高まりやアクティビストファンドとの休戦などが考えられる。

しかし、我々の見解では、持続的なトレンドの転換と考えるには時期尚早であろう。なぜなら、同社が直面している経営課題は非常に複雑であるからだ。

しかし、高配当な同株は、多くの機関投資家に保有されている。年間配当利回りは5.46%、年間配当額は2.04ドルとなっており、安定的なインカムゲインを望む投資家にとって魅力的な銘柄である。(提供:Investing.comより)

著者: ハリス アンワル