「マンション経営」という不動産投資は、株式やFXなどの金融商品とは異なり事業性があります。これまで日本の多くの企業は、社員の副業を禁止してきました。不動産投資は、それに抵触するのでしょうか。
日本の企業は副業禁止が多い
経済産業省が発表した「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」によると、アンケートに回答のあった1,173社のうち、「貴社規程では、従業員の兼業や副業を認めていますか」という質問に対して、「推進している」と答えた企業は0社、「推進していないが容認している」と答えた企業が173社で全体の14.7%、それ以外の85.3%が「認めていない」と回答しています。
就業規則に副業禁止を盛り込んでいる企業は、「本業に支障が出る」「競合する事業に就かれると困る」「情報やノウハウが漏れるリスクがある」といった理由を挙げています。
では企業は、従業員の副業を禁止できるのでしょうか。日本国憲法は第22条で「職業選択の自由」を国民の権利として認めています。「従業員の労働時間外の行動を縛り付けることはできない」あるいは「できたとしても限定的」というのが、通常の法律的な解釈です。それにも関わらず、副業禁止の規定が多くの企業の就業規則に盛り込まれています。
<参考>
「サラリーマンが副業で不動産投資をする時の注意点」
副業禁止の背景と変化
高度成長時代の日本は経済が右肩上がりに成長し、企業で働く従業員は定期昇給と終身雇用により生活基盤が保障されていました。そのため、従業員は副業で収入を増やす必要がありませんでした。従業員は会社の仕事をしっかりやっていれば、自然と給与は上がったのです。「副業禁止」という規則に疑問も持たなかったでしょう。
しかし、バブル崩壊後は日本経済の成長が鈍化、給料は上がらず終身雇用も当たり前ではなくなりました。将来への不安から、本業以外の時間を使って、資産形成を考える人たちが出てきても不思議はありません。実際、この数年で「副業」や「パラレルキャリア」などの本業以外の仕事を持つ働き方が注目されるようになりました。
また、企業側にも変化が生まれつつあります。「うちでは十分な給料を出せないから、副業で稼いでください」という考えから、禁止から容認へとスタンスを変えた企業もあるでしょう。しかし、最近の傾向は、「副業を認めることが、自社の本業にメリットをもたらす」という考え方も出てきています。
「会社の枠を超えて培ったスキルや人脈が本業にも活かされる」「従業員に会社の仕事以外のチャレンジをさせてくれる」という企業イメージが社会に広がることがメリットと捉えて、中小企業だけでなく大手企業でも副業を認める企業が増えています。
不動産投資は「副業」なのか
しかし、「副業解禁」の企業はまだほんの一握りです。法的な解釈として副業に問題がないとしても、勤め先との関係が悪化して働きにくい環境になってしまう可能性もあります。また、就業規則違反という理由で、裁判沙汰になるかもしれません。仮に裁判になっても、本業に影響がない範囲であれば勝訴する可能性は高いのですが、できることならば避けたいものです。
では、不動産投資の場合、どこからが「副業」になるのでしょうか。
家賃収入を得ている人は、1年に1回、不動産所得の確定申告をしなくてはなりません。所得税の計算では、不動産所得はその不動産の賃貸が「事業的規模」かどうかによって取扱いが異なります。事業的規模とされるラインは「5棟10室」といわれています。戸建物件なら5棟、アパートやマンションなら10室という意味です。会社勤めの場合も、これらの基準が「副業」かどうかを分ける基準と考えてよいかもしれません。
一番重要なことは、勤務先がその「副業」をどう判断するかです。現在勤めている会社から安定的に給与所得を得られるからこそ、心配することなくローンを組んで物件を購入できている部分もあります。不動産投資は事業経営としての印象が強いものの、一般的には株やFXと同じ資産運用の一つと受け止められています。しかし、先述した事業的規模を超えると「副業」とみなされる可能性もあります。いずれにせよ、勤め先から誤解を受けることがないようマンション投資に踏み出す前に、会社の就業規則がどうなっているのかしっかりと確認することをおすすめします。
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